#9.北海道旅行_3
第10話
私はいつも
寝る前にケータイを
サイレントにする
寝ている時に
着信音で起きるのが嫌だから
でもその日は
彼とLINEで言い合いをしながら
寝落ちしてしまったこともあり
サイレントにするのを忘れていた...
朝の5時に
彼からのLINEでケータイが鳴る
1秒程しか
鳴らないその音は
枕元で大きく鳴り響き
私は一瞬にして目を覚ました
「うるさっ」
あまりのうるささに
思わず声が漏れる
まだ薄暗い部屋の中で
画面をタップすると
眩しくて目が細くなる
「仕事頑張ってね」
「寝れないよ」
「あかり」
寂しそうな
文面が心配になり
寝落ちするまで
ケンカしていたことなんて
忘れてすぐに返信をした
「ごめん」
「寝てた」
「どうしたの?」
「大丈夫?」
しばらく彼とLINEをした
「かけていい?」
いつものセリフを言われる
私は旦那にバレないように
こっそりベッドから抜け出し
トイレに向かい
すぐに電話をかけた
「もしもし?」
「どうしたの?」
「あかり、、」
「お酒飲みすぎて頭痛い...」
「大丈夫?」
「お酒飲めないくせに」
「他の人はキャバクラに行った」
「俺は行かなかったよ」
何アピール?
別に行ってもよかったのに...
なんて可愛くない事を思った
「そうなんだ」
「あかり、好きだよ」
「うん、私も」
「外が明るいね」
「俺たち同じ空みてるのかな?」
同じ空...
この空を哉斗もみてる?
トイレの窓から
だんだんと明るくなっていく
空を見ながら思った
会えないのにね
彼と1時間ほど電話をした
電話を切った後
私は思った
“やっぱり彼に会いたい“
“会いたくて仕方ない“
今言わないと
今会わないと
もう2度と
彼に会えない気がした...
だけど
この気持ちを彼に伝えるべきなのか
急に迷ってしまう
その事を考えていた時
昔見たドラマを
なぜか思い出した
《次なんてない》
《次なんてないんだってば!!》
そのドラマが
なんていう名前なのか
どんなシーンだったかも
覚えていない
ただ女の人が
泣きながら叫んでいた気がする
私もそんな立場かもしれない
だからかな
なぜかそのセリフが
私の背中を押してくれた
私は急いで
もう1度彼に電話をかける
「やっぱり死ぬ前じゃなくて今日会いたい」
彼との電話で
なぜか死ぬ前には
必ず会いに行く
なんて言われていたから
その続きで
その言葉を彼に伝えた
「ばか」
「あかり」
「泣きそう」
「嬉しいよ」
「ありがとう」
初めて電話した日も
この時電話したことも
私たちはいつも
タイミングがすごくて
これが偶然なのか
運命なのかわらないけれど
私は傷つきながらも
どんどん彼に惹かれていく......
「時間の作り方教えて?」
彼にそう言われて
私は彼と2人で会う口実を考えた
私は旦那に
彼は友達に
嘘をついて夜会う予定になった
私のテンションは
めちゃくちゃ上がる
もうこの先2度と
会うことはないかもしれないけれど
それでもいい
そう思える恋だった
その日は朝から仕事もはかどり
体が浮きそうなくらい軽かった
コピー機から外を眺める
この景色を
彼と一緒にみれるかもしれない
そう思っていたけれど...
実際はそんなうまくいくわけなかった...
昼を過ぎた頃
彼は札幌から離れた
「あかりごめん」
「今日は札幌に泊まらないみたい」
「え、そっか」
「そうだよね」
「ずっと札幌にはいないよね」
夕方には
電車で会える距離にすら
いなかった
会えると思っていたのになぁ...
なぜか会える
予感しかしていなかった
だって
朝1番はじめに聴いた曲は
ランダムにしていたのに
歌詞のはじまりが
偶然にも《会いたい》だった
仕事の書類を区分する単語が
偶然にも《BM》だった
※彼はBMWに乗っている
朝から
その2つの偶然に
私は会えることを
確信していた
だから余計に
この結末を
受け入れることが
できず
気持ちは沈む一方だった
仕事中
電車の時間を調べていた
終電ならこの時間まで
彼と一緒にいれる
結局会えなかったけれど
なぜかずっと
時間が気になった
会えてたら
まだ一緒にいたはず
あーもうそろそろ帰る時間
私たち泣いてたかな
行かないでって言ってたかな
私は辛くなることを
わざと考えながら
叶わなかった夢に
トイレでひとり
泣き疲れるまで
声をだして泣いた...
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