#5.旦那とデート_2

第6話

電車の時間に

間に合うように2人で家を出る



駅のホームに着くと

うちの裏に住んでいる

高校の後輩が視界に入ってきて焦る



私は高校生時代

男子バスケ部のマネージャーをしていて

彼はその部員だった



卒業した後はまったく

連絡もとっていなくて

引っ越しの挨拶で近所を回っていた時

偶然知っている顔にお互いとても

驚いたことを今でも覚えている



それからは家族ぐるみで

バーベキューをしたり

おでかけをしたりする仲だ



“え...!?“

“なんで居るの...!?最悪......“



存在を消したくて下を向く私



“お願い...気づかないで......“

“早く通り過ぎて...“



私のお願いは虚しく

もちろん後輩に見つかってしまう



「あれぇ?先輩?」

「えぇっ?デートっすか???」

「らぶらぶっすね!!」



「うるさいっ!!!」

「ほっといてよ、もおー」



「たまには2人で飲みにと思って」



ニヤニヤしながら

話しかけてくる後輩に

嫌気がさしつつも



仕方なく笑顔で答える私と

まじめに答える旦那...



もう

これだけで疲れる...



別にデートじゃないし...



「俺、邪魔しないっすからぁ」

「あっち行きまぁぁーす」



「はいはい」



関係ないくせに

なぜか楽しそうに

先頭車両の方に

向かって歩く後輩が

見ているだけでムカつく...笑



「うざいわ」

「ほんと...」



「会社の飲み会あるのかな?」



私は思わず心の声が漏れるが

旦那はあっけらかんなことを言う



ほんとに疲れるっ!!!

なにこの板挟み...



“早く行って早く帰りたい...“

“哉斗なにしてるのかな“



お店に着くまでの道のりは

久々2人で歩くだけあって

お互い距離感がわからず



旦那が先を歩き

2歩下がって私が歩く



“昭和の夫婦かよ...“



その距離感でも

たまに旦那が

後ろを振り向きながら

話しかけてくるが

どれも会話は続かない



気まずさと

ぎこちなさで

早くお店に着いてほしかった...



到着するとすぐに席に通される



仕切りがあり

半個室のような空間



メニューを決めて

いよいよ飲み始める



旦那は相変わらず

ハイペースで

お酒をどんどん注文する



旦那に合わせていると

絶対に酔うと思った私は

なるべくゆっくり飲む



しかし

旦那が次から次へと

私の分のお酒も

注文してしまうので

簡単に酔いが回る



私は酔いながらも

タイミングをみては

彼にLINEを返していた



“電話したい...

声...聞きたいよ...“



トイレに行くついでに

電話を話かけてみるが

彼はでなかった



席に戻り

旦那の長い話に付き合う



「たまにはこういうのもいいよな」

「子供が大きくなったら

月に1回は2人でご飯行こうよ?」



「まだ先のことじゃない?」



私は嫌な顔をしていないか

不安になりながら

あやふやな返事をする



お世辞でも「そうだね」とは

言いたくなかった...



“その時私たちまだ結婚しているのかな?“



私は一方的に

子供が大きくなったら

離婚したいと思っていた



たくさん食べて

たくさんお酒を飲んで

会計の時間



完全に酔った私は

旦那が握ってきた手を

振り払うことすらできず

素直に手を繋ぐ



“だめだ

何も考えられない“



無心で駅まで歩いた



“うっ...具合悪い......“



ホームで電車を

待つ間も手を繋ぐ



“こんな距離いつぶりだろう“



少し前まで

望んでいた展開に

今は少しも嬉しくなかった



電車が到着して乗り込む



実はこのあとの記憶がない......



酔いすぎた私は

電車のトイレで

吐いていたようだ



電車から降りた私は

どんな足取りで

家まで着いたのかも

まったく覚えていない



次に覚えている記憶は

自宅のトイレで

このまま死ぬのかと

思いながら

とにかく吐いたこと...



私はそのままトイレの床で

倒れるように寝ていた



小窓から外の明かりが入ってきて

朝方だと気づく...



なんとか動けるまで

復活した私はその足取りのまま

お風呂に向かう



いつもよりお湯の温度をあげて

熱いシャワーを浴びた



“ふぅーーーーー“



少しだけ楽にはなったけれど

アルコールが完全に抜けきれていない私は

思うように体が動かず



動きすぎるとまた具合悪さが

戻ってきそうだった



パジャマに着替える余裕すらなく

体を拭いたバスタオルで体を巻き

そのままベッドに倒れ込む



倒れた瞬間眠りについた



どれくらい寝ていたのかもわからないが

気がつくと旦那にバスタオルの上から

乳首を触られていた



嫌な気持ちしかない



やっぱりこの人は

こんな状況でも襲ってくる



すごく自分勝手



私が今この状況で

やりたいと思う?



信じられなかった...



酔いすぎて動けない私は

何も気持ち良くないし



演技する余裕もないし



結果何も反応できず

一瞬開いた目をまた閉じた



その行為の中

急に哉斗のことを思い出す



ずっとLINEを返していない...



心配してるよね、ごめんね

考えながら泣きそうになる



そんな事を考えていると

旦那の手の動きが止まった



やっと解放されたと思い

私はまた眠りについた



だけど

それで終わるわけもなく

今度はバスタオルをはがされ

私は裸になった...



“寒い...“

“本当にやめてほしい...“



旦那の手は私の体を

下から上に向かって触りはじめる



“哉斗、ごめん“



なんの謝罪?

わからないけれど謝りたかった



寝たふりを続けていれば

いつか終わる



そう信じるしかなかった



旦那の指が

私の中に入ってくる...



酔っている人間に

こんなことをするなんて

夫婦でも絶対に嫌だ



旦那の物が私の中に入ってくる



「やっぱ、いいや」



何も反応できない私に

萎えてたのか

旦那は入れていた物を静かに抜いた



“やっぱ、いいやって何?“



ひどすぎる......



酔ってる時に

そんなことをしてくる旦那にも



彼への罪悪感も



思うことがたくさんあって

だけど具合も悪いし

もうこれ以上何も考えたくない



なにもかも嫌になりそうだった



哉斗はこのとき私の状況を知っていたら

なにかしてくれた?

たぶん何もしてくれないよね



私たちは所詮疑似恋愛

面倒なことは避けたいよね

でもこの時の私は哉斗に少し期待していたよ



こんな時ぐらい私を優先してよ

電話出れなくても折り返してよ



私、哉斗に依存していたのかな......










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