幽霊と学校七不思議を巡る。(更新一時停止中)

ますぱにーず/ユース

幽霊と七不思議を巡ることに

「…いい加減この図書室にも飽きてきたよね~」

「お前がそれ言うか?」

「いやぁ…まあ、ほら、私ここにずっといるわけだしさ。まあ楽しくないわけじゃないし…ほとんど実家みたいなものだし…なんていうのかな、飽きたって言うのは違うかも…、見慣れ過ぎた?面白みが無くなった?」

 …いや、俺にはその感覚が分からんから聞かれても答えられねぇけど。

「まあ、だからさ。私別にここの地縛霊って訳でも無くなったんだし、いい加減図書室から出てみようかなぁって」

「出てどうすんのさ?」

「…さぁ、どうしようか」

 …何も考えてなさすぎだろ。いつもの事だけどさ。

「いやぁ…それにしても…まさか帰ってこれるとは…未練の力っていうのはとんでもないね…」

「はは…」

 こいつはシズク。"元"図書室の幽霊。あーだこーだあって成仏?的なのをしたと思ったら数週間後に帰ってきた奴。俺の涙を返せ、マジで。

「…ん~…。あっ」

 シズクが何かを思いついた顔をする。

 絶対碌な事思いついてねぇと何となく察した俺は静かに外へ出ようとする。

「あっ、ちょっと待ってよ響谷くん」

「嫌だ待たない、お前の碌でもない考えに巻き込まれたくない」

「酷くない?私まだ何も言ってないんだけど?」

 図書室から出さえすれば…。

「あっ、図書室から出れば私が干渉できないとでも思った~?もう私はここの地縛霊じゃなくなったんだから別にどこに行こうが追いかけられるんだよ?」

 そういやそうだった…。


 俺は大人しく諦めて、図書室の読書スペースの椅子に座り直す。

「…で、何思いついたんだよ」

「この学校ってさ、七不思議あるよね」

「…まあ」

「一緒に巡ってみないかい?」

「………拒否権は?」

「無いよ」

 それは提案と言う名の宣告なんだよなぁ…。

「そういう訳だから、今日の0時に学校来てね」

「…わーったよもう」



 家に帰ったところで、両親も居なければ葵も居ない、退屈で苦痛な時間がいやに長く過ぎ、時刻は深夜0時。シズクの言われた通り、俺は学校の門の前に来ていた。

「…やっぱり響谷くんってさ、優しいよね」

「そうか?」

「うん、だって…ちゃんと来てくれたし」

「そりゃ、大切な人との約束だからな」

「っ…」

「あ、どした?」

「…大切な人って…私こんなでも幽霊なんだよ?傍から見ればきっと…君はおかしな人に見えるはずだよ、虚空に話しかけて…」

「両親が蒸発して精神崩壊してるだけだって思われて終わりだよ。んな事よりさっさと行くぞ」

「………もう、本当に君って人は…。………ちょっとドキッとしたじゃないか…」

「なんか言った?」

「何もないっ」

 …なんか機嫌悪くなってね?気のせい?

 深夜の学校に侵入するのは、俺一人だと難しい。もっと抽象的に言うのなら、難しい。

 …つまりだ、任意で壁抜けできるシズクが門を通り抜け、内側から鍵を開ければ簡単に中に入ることができる。

「やっぱりさ、学校って警備がガバガバすぎると思うんだよね」

「そりゃ幽霊を対策した警備なんて普通はしないからな」

「まあそれもそっか。…ふふっ、今の状況を先生に見られたら…退学処分かな?」

「…俺は別にそれでも良いけど」

「…むぅ…」

「どうした?」

「確かにさ、私は君がいなくなっても、この学校にいる生徒達で暇潰しはいくらでもできるけどさ…響谷くんが居なきゃ、私は楽しくない。一人でも良いけど、独りは嫌だよ」

「…そう」

 そんな事を会話しながら、俺達は深夜の学校の中へと入っていく。



「…あ?」

 校舎に入った瞬間、扉が閉まり鍵が閉じるような音がした。後ろを振り返って扉を開けてみようとするが、開かない。

「あぁ、これなら大丈夫、外から開ければ問題ないよ。よくある演出っていうのかな?」

「…そうっすか」

 ずっとシズクと触れてきたせいで全く怖くないわ。慣れって恐ろしいな…。

「ま、最悪消火器で壊せば開くし。響谷くんを閉じ込めようとしたらその時は…そうだね、ここにいるのを皆殺しにして、ここで二人だけのユートピアを作ろうか」

「七不思議よりお前のが怖いわ」

「心外だなぁ」

「…ま、いいや。そんで、最初はどこに行くつもりで?」

「そうだねぇ、ベタに花子さんでどうだろう」

「…まあそれでいいんじゃない?」

 誰もが一度くらいは、名前程度は聞いた事があるであろう、花子さん。

 トイレの中にいるとか…なんとか。

「…ん、てことは俺今から女子トイレの中に入るって事?」

「あー…そうなっちゃうね。でも別に誰も気にしないでしょ」

 気にするよ、俺が。

「あんまり細かい事気にしてたら祟っちゃうよ?」

「祟って殺してくれるならその方が楽でいい」

「…響谷くんって、本当に生への執着がないよね…」

「まあ自殺願望があるわけでもないけどな」

「…響谷くんには指一本触れさせないからね。絶対安心して」

「おう、そんじゃあ頼りにするわ」

「うん」



「…で、俺はマジで女子トイレの中に入るのね」

「ここは学校に似た何かだし、足跡も本物の学校にはつかないから大丈夫」

「…まあ、なら良い…のか?」

「いいじゃんいいじゃん、ほら入っちゃえ入っちゃえ~」

「あっちょ押すなって」

「うりうり~」


――――――――

作者's つぶやき:…はい、新作です。…結構短めになりそう…ですね、なんせ七個しか不思議が無いもので。

っていうか、そういえばシズクさんって結局何者なの?っていう事なんですけど、本当にただの幽霊です。

…ただちょーっと、他よりもハイスぺックな所があるかも…ってだけの幽霊です。響谷くんに霊感とかはないですが、シズクさんはまぁ…ほら…はい、響谷くんの事を気に入ってるのでね。ご都合設定って訳です。

え、なんでラブコメにしてるかって?…そりゃぁ…ねぇ?シズクさんと響谷くんがイチャつくからに決まってるじゃないですか。

あと、響谷くんとシズクさんの関係性を知りたい方はこちらのURLよりお飛びください。この作品の少し前のお話を描いております。

『放課後、図書室、夕焼け時【1話完結】』

https://kakuyomu.jp/works/16818093083346245688

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