(3)

 すっかり暗くなっていた。

 しかし、金縛りの魔法をかけられているので、動く事もしゃべる事も出来ない。

 まぁ、まばたきぐらいは出来るけど……。

 そして……。

 気のせいだよね?

 え……えっと……。

 灯りが消えた食堂の中に……何かが居る気がする。

 生臭い息を吹き掛けられたような気が……えっと……。

 幻だ。

 幻だ。

「ああああ……」

 幻聴だ。きっと幻聴だ。絶対に幻聴だ。

 闇の中なのに……黒一色の「何か」が居るのが……

 そいつは……金縛りをかけられて立たされてる僕達を品定め……。

「おい、そろそろ、終りだ。金縛りの魔法を解け」

 LED懐中電灯の光と共に上級生の声。

 ドン……。

 ドン……。

 ドン……。

 金縛りを解かれた僕達は……次々と床に尻餅を付いた。

 何時間も強制的に立たされ、本当は体力さえ無くなってるのに倒れる事さえ出来ず……。

 筋肉も固くなって……。

 じょぼじょぼじょぼじょぼ〜。

「今年もかよ……」

 誰かが小便を漏らしたらしい。

「お……おい、ちょっと待て……冗談が過ぎるぞ……これ、誰の使い魔だ?」

 別の上級生の声……その声の方向に懐中電灯の光が向き……。

 上級生の1人が……何本もの闇そのもので出来たような腕で、体のあちこちを掴まれていた。

「お……おい……すぐに使い魔を引っ込め……」

「し……しまった……こいつ……使

「ど……どう云うこ……」

 その瞬間……赤い蛇の姿の「使い魔」が出現。

 何本もの闇の手に拘束されている上級生の方に向い……。

 赤い光と黒い闇が……。

 赤い光の蛇は、闇の腕を次々と断ち切るが……。

 闇の腕が1つ断ち切られる度に、2本か3本の新しい腕が闇の中から出現する。

 闇の腕に掴まれていた上級生は……何とか逃げ出せたが……今度は赤い光の蛇が闇の腕に掴まれ……。

「うわあああああっ‼」

 赤い光の蛇は……闇の腕に力づくで引き千切られ……いくつもの断片になった蛇は……。

 くちゃ……くちゃ……くちゃ……くちゃ……。

 何かを食べるような音。

 その音と共に……赤い光の断片は、1つ、また1つと闇に飲まれていき……。

「あ……あ……あ……」

「ひ……ひひひ……」

 上級生達は、いつの間にか逃げ出し始めていた。

 そして……。

 消えた……。

 それまで、そこに有った……あの闇の腕か……その本体の気配が……。

 多分だけど……そいつにとっての「食事」が終ったんだろう……。

 残されたのは……僕達1年生だけ。

 上級生の中でも、マトモだった人は……死体に変っていた。

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