結婚式に『呼んでくれ』と言う男!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 最初の結婚相手A子は、知人のA男の紹介で出会った。A子は、知人A男の彼女B子の友人だったのだ。初めて会った時は、A男とB子は仲が良さそうだった。見ていて微笑ましいカップルだった。


 ところが、僕達の結婚前、大学卒業を機にB子はA男と別れた。B子の方から別れを切り出したらしい。A男は“別れたくない!”と粘ったが、B子は実家のある北陸に帰ってしまった。それ以来、連絡も取れなくて、A男は悩む日々を送っていたらしい。相当B子に未練があったのだろう。別れた理由は知らない。A男は理由を話さなかったし、A子はB子から理由を聞いていたようだが僕には話さなかったからだ。


 そこで、


「なんでA男とB子は別れたん?」


などと、僕はA子にもB男にも聞かなかった。話さないということは、僕が知らなくてもいいということだ。



 そして、僕達は式・披露宴に来て貰う方々を選ぶことになった。そこで、B子からA子に連絡があった。


「A男が来るなら、式・披露宴には行けない」


 ということだった。2人が付き合う“きっかけ”を作ってくれたA男は呼ぶ予定だったが、A子が、


「B子に来てもらいたいから、A男君に“A男君は呼べない”って言ってほしい」


と頼まれたので、とりあえずA男に電話した。


「……ということで、お前を呼べなくなった、すまん」

「“きっかけ”を作った俺を呼ばないってどういうことや?」

「いや、だから“A男が来たらB子が来ない”って言うから」

「頼むわ、呼んでや、俺、もう1度B子に会いたいねん」

「いや、だからお前が来たらB子は来ないって。どっちにしてもお前はB子には会われへんねん」

「頼むわ、もう1度会って、よりを戻すように説得したいねん」

「だから、お前を呼んだらB子は来ないんや。どっちにしてもB子には会われへんって言うてるやろ。何回言わせるねん?」

「頼むわ、俺にチャンスをくれや……」



 いやいや、A男、ようするにお前は俺達を祝いに来たいわけじゃないのね。自分がB子とよりを戻したい、B子に会いたいだけなのね。祝いたいと言ってほしかった。それは僕の贅沢な要求だったのだろうか? なんか、複雑な気分だった。







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結婚式に『呼んでくれ』と言う男! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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