前話3 面接を受けたらあっさりと…⁉︎
「どうぞ、入ってください」
「失礼致します」
面接が始まった。会議室内にいるのは3人。真ん中の人は見覚えがある。社長だったはずだ。
3人が座っている目の前にある椅子の隣まで進む。
「本日はお忙しい中このような場を設けていただきありがとうございます。岬と申します。よろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。株式会社ホロスクールV人事部部長の、朝霧です。...では、こちらにお掛けください」
「失礼します」
ここで隣の席に着席する。今の所マナー違反は何もないはずだ。
「それでは、面接を始めさせていただきます。」
◇
「それでは面接は以上となります。本日はお疲れ様でした」
「本日はありがとうございました。失礼致します」
入室から30分程後。面接を終えた僕は会議室を後にする。緊張で今にもへたり込みそうだった。
ほとんどの質問に対して澱みなく答えられた。VTuberになったとしてやりたいことを聞かれた際に言葉をまとめるために少し詰まってしまったが、ゲームの楽しさを視聴してくれる方々に伝えることだとしっかりと伝えられたと思うので、大丈夫だろう。
エレベーターを降りて先ほどのカフェがあるロビーに戻ると、そこにはまだまだ面接希望者であろう人たちがたくさんいた。
僕はもう精神的に結構疲れたのでさっさと家に帰ることにした。
:
:
「ただいま」
返事はない。一人暮らしだから。
うちの両親は心配性だから大学に通い始めた時あたりは同居すると騒いでいたが、なんとか一人暮らしを続けている。いまだに
部屋着に着替えて適当にご飯を作った後、パソコンを起動してあるVTuberのチャンネルを開く。もうすぐ配信が始まる時間だ。
◇──────────────────◇
「リスナーのみんな、こんみや。香奈のゲーム部屋、始まるよ」
僕が見たかったのは、FPS系ゲームを中心として実況配信している氷室香奈の配信である。
:こんみやー
:こんみや ¥600
:待ってました
:今日は何するん?
「今日は雑談しながらC◯Dmobileやるよ」
普段は普通にゲームしているのに雑談とは珍しかった。
:よっしゃ
:何話すの
「今日あった5期生面接の話」
香奈の口から飛び出た今日の面接の話を聞いて固まる。
:おおー
:話していいん?
「私達ライバーは面接については一切知らないから大丈夫。あと面接そのものについてじゃなくて本社のビルであった話」
:まじか
:ひむろんのオフの話か
:なんかあったん?
「今日久しぶりに幼馴染と会った。本社ビルで」
心臓が跳ねる。心当たりしかない。まさか、そんなはずは...?
:っ!?
:まじか!
:ガタッ!
「久しぶりに会えて嬉しかった。なんか面接受けにきたらしいけど」
......あの出会いは僕らだけじゃない。そうに違いない。そう納得して可能性を頭から追い出す。
:ここで初配信の好きな人がいる宣言の伏線回収が!?
:そんなバカなああああぁぁあぁあ!?
:ウソだろ...ウソだと言ってくれ
:僕が先に好きだったのに...
: ガチ恋勢阿鼻叫喚で草w
:初配信で一刀両断されたのにw
:まだ生きてたのかよw
◇──────────────────◇
それ以上見る勇気がなくなった気がしてきたので、そこで配信を閉じる。
その日はこのことが気になりすぎてよく寝られなかった。
◇
面接から2日後。1通のメールが僕の元に届いた。そのメールの内容はこうだった。
“VTuber採用面接について”
開けてみると、採用されたと書いてあった。
なんだかガチガチに緊張していたのがバカらしくなるほどあっさりとした面接結果通知だった。
そして、次の日曜日に
こうして僕は無事VTuber採用面接に合格したのだった。
────────────────────
前話はVTuber採用までの道のりについてなのでここまでです。次は今回の配信の全容を載せた閑話です。
面接の入退室時のマナーってこれで合ってますかね...
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