風
花園眠莉
風
昼休み、私は一人憂鬱を抱えながらグラウンドのベンチに腰を掛けていた。十月半ばに相応しい肌寒さだった。
風がざあっと右から吹いた。少し時期には早い落ち葉が遠くのほうで大きく円を描いて、くるりと踊った。
しかしすぐに風は止んでしまった。まるで私の心みたいだ……なんて考えていたら、また風が吹いた。右から吹いたと思えば左から吹く。目の前で落ち葉がくるりと踊る。
特別面白い訳では無いけれどむしろそれが丁度良かった。ぼうっと風と木の葉のざわざわと擦れる音を聞いて、からからとグラウンドを滑る枯れ葉を見る。
相変わらず気分は憂鬱のままだけれど誰にも気を遣わなくていいのは楽だ。
ざあっ
からから
くるり
ざわざわ
ついでにとんびもくるり。
キーンコーンカーンコーン。もうそんな時間か。
立ち上がると一際大きく風が吹いた。
まるでさよならを告げているようだった。
私も心の中でバイバイと返した。
風 花園眠莉 @0726
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