入院患者のお姉さん!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 高校3年生の冬、僕の元同級生が肝炎で入院した。中学の時の同級生だ。僕は見舞いに行った。元同級生は見舞いに行くとすごく喜んでくれた。喜んでもらえたことが嬉しかった。


 休憩所で談笑していると、20代後半から30歳くらいの美人が休憩所に入って来た。美人はスエット姿なのに、“年上のお姉さん”といった感じで色気があって魅力的だった。名前は紅葉(もみじ)というらしい。


 紅葉は元同級生と親しげに話し始めた。元同級生が美人と談笑? 羨ましかった。やがて、僕も会話に入れるようになった。寂しい童貞の18歳の僕が、美人と話せて嬉しくないわけがない。僕は盛り上がった。もっと、紅葉と親しくなりたい!


 というわけで、毎日のように元同級生の見舞いに行った。勿論、元同級生のことは心配だし、知人と話すのは楽しい。だが、紅葉と会うことも見舞いに行く理由の1つだった。


「おい、紅葉さんって恋人はおるんか?」

「今はおらんって言うてたで」

「ほな、僕を推してくれや」

「推してもええけど、この年齢差で付き合うのは無理ちゃうか? 俺達まだ高校生やで、相手は大人の女性やからな」

「いや、付き合えたら最高やけど、僕もそれは無理やと思う。でも、僕の初体験の相手になってほしいねん」

「童貞を奪ってくれって? そんなこと、俺から言えるわけないやんけ」

「まあ、そうやな」

「自力で頑張れや、応援はするから」


“僕の筆おろしの相手になってください”


 これはストレート過ぎるな。


“僕の童貞を奪ってください”


 これも、アカンやろうなぁ。


“僕の初体験……”


 いや、まずはデートやろ?


「退院したら、デートしてくれませんか?」

「えー! 崔君、まだ高校生やろ? 私みたいなオバチャン、相手にしたらアカンで。もっと若い子と付き合いなさい」

「僕、紅葉さんがいいんです」

「しゃあないなぁ、わかった、ええよ」

「ほな、連絡先を教えてください」

「私が退院する前日に教えるわ」

「マジ? やった-!」



 数日後。


「あれ、今日、紅葉さんは?」

「退院したで」



 まあ、そんなもんだろう。







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入院患者のお姉さん! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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