第二十六話

「ナイスぅ!」

蒼月がそう言うと、みんな構えを解く。


「なんか思ってたより苦戦しなかったねー」

「もっと強いと思ってたなー」


「おつかれ」

あまねは構えていた銃を背中に戻す。


「蒼月様!ワタクシの破裂炎球ブラストボール役に立ちましたか!」

モンブランは蒼月の方に駆け寄り、勢いよく話す。


「あぁ、やっぱ俺の破裂炎球ブラストボールとは威力が違うな。正直削れ方が違ったわ!」


「ふふふ、もっと褒めてくださってもいいのですのよ!」

モンブランは自分の放った破裂炎球ブラストボールが役に立ったと言われ、上機嫌だ。


「さて、ここからが本題なんだけど。茨木童子周回しないか?」

蒼月が他のメンバーの方へ視線を移す。


「「僕達はいいよー!」」


「ワタクシも蒼月様に着いていきますわ!」


ミル・メル・モンブランはあっさり勝てると分かって乗り気である。


「何かあるの?」

あまねはあまり乗り気ではなさそうだ。


「おう、これはあくまで聞いただけの話なんだが」

蒼月は狩場で軍人ぽい格好をした男性に聞いた装飾品の話をする。


「「ほんとにそんなのがあるの!?」」


「なるほど、それで蒼月様はお金を払っていらしたのですね」


「どうだ?あまね。喉から手が出るくらい欲しいだろ?」


「欲しい」

言葉に抑揚はないがあまねの目はやる気に満ち溢れていた。


「だろ?あまねならそういうと思ったぜ!」


「売ってもすごそうだねー!」

「お金がっぽがっぽだねー!」


「ははは、そうだな!俺は両手でサイキックリング装備出来るから別に必要ないが、あまねは欲しいんじゃないかと思ってさ」


「なんで?」


「ん?」


「なんでそこまでしてくれるの?」


「なんでってそりゃあ・・・。友達だからだよ」

蒼月は恥ずかしそうに頬を掻く。


「ほら、周回するならササっとやっちまおうぜ!」

蒼月は体を翻し恥ずかしさを隠すように、もう一度茨木童子の入場場所まで移動する。


「お兄ちゃん恥ずかしがってるー」

「ちょっと顔も赤いもんねー」

ミルとメルは蒼月の周りをぐるぐると周り、揶揄う。


「蒼月様と出会ってまだ日が浅いですけど、お人好しですわよね」

モンブランもみんなの後を追う。


「・・・。ほんとお人好し」

あまねは少し口元を緩めて、後を追う。


「よっしゃー!今日は装飾品出るまで回るぞー!」

蒼月が拳を天に掲げながら話す。


「えぇ、そんなにー?」

「せめて、回数決めようよー」


「ワタクシは何回でもついていきますわよ!」


「出るまでやる」


「ははは!んじゃ、いくぞ!」

蒼月達は再度鳥居をくぐる。



茨木童子がポリゴン化して消滅する。

はや20回目の茨木童子の討伐である。

蒼月達のパーティは何度も挑戦しすぎて茨木童子を倒す作業と化していた。


「「余裕だねー」」


蒼月達がドロップ品を確認に向かうと初めて見るアイテムがドロップしていた。


「おぉ、なんか初めてのやつでたな」

ドロップした球体を蒼月が拾い上げて名前を確認すると、あの男性が言っていた装飾品の名前がポップアップに表示されている。


「きた!きた!きた!」

蒼月がみんなの元に駆け寄る。


「お目当ての物が出たのですか?」

モンブランは蒼月の持っているアイテムを覗き込む。


「あぁ!出たぜ!これがサイキックオーブだ!」


「「やったー!やっと解放されるー!!」」

ミルとメルはその場でバタンと地面に倒れこむ


「見せて」

あまねが蒼月の方へ手を出す。


「ほらよ」

あまねの手の上にサイキックオーブを置くとあまねはタッチして情報を確認する。


「確かに装飾品」


「だろ?しかも見た感じ効果もサイキックリングと変わらねぇ。ただ懸念点があるとすれば今後装飾品でどれだけ優秀な物な物が出てくるか。だな」


「今後ですか?」

あまねとミル・メルは蒼月の言葉に頷いているが、モンブランがイマイチ分かっていなさそうなので蒼月が説明を始める。


「それこそ前お嬢に説明したのとほぼ変わらないんだが、今はまだ初期だから装飾品はそこまで強い物が出ていない。ただ、今後めちゃくちゃ強い装飾品が出た時に装飾品枠を圧迫する枷になり得るってことだ」


「なるほど、確かにまだ始まって1ヶ月も経ってませんもんね」


「そういうこと。まぁそれでも現状では装飾品だと上がる数値は知れてるし、ほぼ必須級の装飾品って認識でいいと思うぜ。お嬢もサイキックリングつけとけば良いから必要ないけどな!」


「そうですわね。ワタクシは蒼月様みたいに両手にサイキックリング装備にしようかと思ってますのよ!」


「「僕達も必要ないねー。工房が無いとそもそも使えない能力だしー」」

続けてミルとメルは「工房不要にならないかなぁ」とぼやいている。


「ってことで、これはあまねの物だ」


「いいの?」


「あぁ、みんな別に異論はない感じだ」

あまねはミルとメル、そしてモンブランの顔を見る。


「「使っちゃいなよー」」


「そうですわ。あまねさんの為にやってたところもありますし」


「なら、貰う」

UIを操作し、あまねは装飾品欄にサイキックオーブを装備する。


「おう!それで常時透視クレヤボヤンス発動しながら対物ライフル撃てるから、もう最強だな!」


「「最強いいなー!僕達も強くなりたーい!」」

ミルとメルは羨ましそうにあまねを見る。


「ミルとメルにも役立ちそうな情報あれば仕入れとくから安心しろって!」

蒼月は握り拳を作り、親指を立てる。


「「やったー!」」


「よかったですわね。あまねさん」

モンブランがあまねに近寄り声をかける。


「うん、お嬢。ありがとう」


「おじょ・・・」

あまねの言葉に一瞬モンブランは一瞬固まるが咳払いをして話を続ける。


「コホンッ!ワタクシのキャラクターの名前はモンブランですのよ」


「そうなんだ。でもお嬢の方が呼びやすいし。僕もお嬢って呼ぶよ」


「ガーン!蒼月様のせいで誰もワタクシの名前呼んでくださいませんのー!」

モンブランは蒼月をポカポカと殴る。


「おい、やめろって!どう考えてもお嬢の方がモンブランより合ってるだろ!っていたい!いたい!」

蒼月は頭を手で守りながら、モンブランの攻撃に耐える。


「「僕達もお嬢って呼んだ方がいいー?」」

その様子を見ていたミルとメルは嬉しそうに話す。


「ミルさんとメルさんはお姉ちゃんって呼んでくださってたじゃないですか!」


「「お嬢ー!」」


「キーッ!蒼月様のせいですわよー!」

モンブランは破裂炎球ブラストボールを上限数まで発現させる。


「うわー!お嬢!落ち着け!ミル、メル、お前達はお姉ちゃんって呼んでやってくれー!」

蒼月は全速力で走って逃げ回る。

モンブランはノーコンの破裂炎球ブラストボールを蒼月に向かって放つ。

こういう時に限って破裂炎球ブラストボールは蒼月の方へ一直線で飛んでいく。


「あっぶねぇぇぇぇ!」

蒼月はギリギリのところで破裂炎球ブラストボールを躱す。


その様子を見て、ミルとメルは腹を抱えて笑い。

あまねも自然と笑顔になっていた。


蒼月

Lv30

HP 700/700


【VIT 5】

【STR 5】

【DEX 5】

【AGI 72】

【LUK 5】

【PSY 101】


装備

頭 【追放者の頭巾】

体 【追放者の服】

右手 【サイキックリング】

左手 【サイキックリング】

靴 【追放者の草鞋】

装飾品

【超能力強化のペンダント】

【無し】

【無し】

超能力

模倣Lv3(電撃操作エレクトロキネシス破裂炎球ブラストボール透視クレヤボヤンス空中歩行エアウォーク

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