第十六話

「おーい、ETCはこれだけあればいいかー?」

蒼月が泥田坊からドロップするETCアイテムをかなりの量集めて戻ってきた。


「おぉー!すごいー」

「お兄ちゃんの狩り見てたら爽快だねー」


「ん?そうか?これでも俺の超能力模倣コピーだからかなり弱いんだぜ」

笑いながら蒼月は話す。


「えぇ!蒼月様ワタクシと同じ破裂炎球ブラストボールではなかったのですか!?」


破裂炎球ブラストボールはお嬢のやつ模倣コピーさせてもらったんだよ。ごめんな。騙す気は無かったんだけど、知らない人に超能力を開示するのは違うって思ってたんだ」

蒼月は申し訳なさそうに話す。


「「それが普通だよねー」」


「そうだったんですか!?ワタクシ何の躊躇もなく蒼月様に話してしまいました・・・」


「話すも何もあれだけ派手に暴れてたら多分他にも見た人いるだろうし。気にしないでいいと思うぜ。まぁだからこれから街にいる時とかに注意したらいいと思う」


「わかりました!ワタクシ、誓って街では超能力のお話しません!」


「いや・・・。そこまで重く考えなくてもいいんだぜ・・・?」


「「ぷふーっ!あははははは!お姉ちゃんおもしろいー!」」

ミルとメルは吹き出し、同時に笑いだす。


「おーい!笑ってねぇで次の狩場行くぞー!垢嘗と餓鬼だ!」


「「はーい!なら僕達が垢嘗の場所まで案内するねー!」」


「おう!よろしくな!」

蒼月とモンブランはミルとメルの後ろについていく。


道中に何度かあやかしとすれ違ったが、ミルとメルが抜群のコンビネーションで銃を使って倒していく。


「2人とも生産系なのにめちゃくちゃ戦闘上手いな」


「「そうかなー?」」


「生産系の超能力選んで無かったらめちゃくちゃ強い戦闘員だったかもなー」


「「超能力って強いのー?」」


「んー、俺が選んだ模倣コピーはそんなに強くないけど、お嬢が選んだ破裂炎球ブラストボールは半端なく強いと思うぜ。それ以外は使ったことないから知らないけど、まだ見ぬ超能力も絶対あるだろ!そういうの使って俺も戦いてぇなぁ!」

蒼月はなるべく平常心を保って話しているつもりだが、全くワクワクを押し殺せていなかった。


「「うわぁ・・・」」

「お兄ちゃんそっちタイプかー」

「何となくそんな気はしてたけど」

ミルとメルは蒼月を見て少し引いている。


「でも攻略掲示板だと銃が強いって書いてたよ。超能力は使う必要ないとかまで書かれてたし」

「だから僕達生産系選んだんだよね。銃だけで戦えるなら生産できた方がいいしね」


「へぇ、攻略掲示板ではそういう感じになってるのか。知らなかったな」

攻略掲示板を一度も見ていないので、現状の世論がどうなっているのか把握していなかった。


「でもちょっと怪しいとも思い始めてるよー」

「泥田坊みたいなあやかしがいたからねー」


「そうだな、俺は超能力でしか戦ってないから、銃での戦闘はイマイチわかってないが、餓鬼より泥田坊の方が超能力なら早く倒せるんだよな。確実に泥田坊の方が餓鬼より格上なのにも関わらずだ」


「そうだったんですか。まぁワタクシは攻撃を当てられないのであまり関係ないですが・・・」

モンブランは会話に参加するが、やはりまだテンションが低い。


「おいおい、何言ってんだよ。俺、狩りしてる間にお嬢がどうやって戦えばいいかかんがえてたんだぜ」


「いいんです。ワタクシ諦めがつきましたから」


「そういうなって!街に戻ったら教えるからよ!」


「ですが・・・。」


「いいから!いいから!俺を信じろって!」

蒼月はモンブランの背中をバンと叩く。


「「お兄ちゃん達ほんとに付き合ってないんだよね?」」

ミルとメルが再び確認する。


そんなこんなで垢嘗がいるエリアに到着した。

長い黒髪に顔は隠れているが、チラリと見える目は大きく丸い、それに真っ赤な皮膚と長い舌。

四つん這いで地面を這うように移動しているのが特徴のあのあやかしが垢嘗のようだ。


蒼月は念の為に透視クレヤボヤンスを使うが、何も隠れていたりはしない。


「ならちょっと戦い方考えたいからみんなは安全地帯見つけて待機しててくれ、俺はちょっくらやってくるわ」

蒼月は電撃を右手に纏い、破裂炎球ブラストボールを左手で発現させる。


「「あの戦い方かっこいいなー。僕も模倣コピーにしたらよかったかなー」」

ミルとメルはこんな長文でも同じタイミングで話出し、同じテンポ感で話し、同じタイミングで終わる。


蒼月は垢嘗の方へ駆け出し、まずは雷撃を当てる。

電撃を当てられて、蒼月の存在に気付いた垢嘗は長い舌をムチのように振り回し蒼月を攻撃する。


「おぉっと!あぶね!結構な距離あったから油断してたけど、この距離でも当たるのか」

紙一重で躱して、破裂炎球ブラストボールをカウンターで放つ。

破裂炎球ブラストボールが命中した垢嘗は舌での攻撃が中断され、ノックバックする。


「こいつもノックバックするじゃん!ならもう作業だな!」

蒼月は適当に破裂炎球ブラストボールをばら撒き、周辺の垢嘗からターゲットを取る。


「はははははははっ!」

蒼月は高笑いしながら垢嘗に突っ込んでいき、舌での攻撃を華麗に回避しながら破裂炎球ブラストボールを当てて、垢嘗をポリゴン化していく。


「ちょっとあれやばくない・・・?」

「高笑いしながら戦ってるのはちょっと引くわね・・・」

たまたま通りかかり遠目から蒼月を見ていた女子2人は明らかに蒼月の言動に引いている。


「あぁ、見られちゃったねー」

「ほんとだねー。あれは攻略掲示板に書かれるだろうねー」


「蒼月様ぁ!!もっとやっちゃってくださいましー!」


「お姉さんも楽しそうだねー」

「楽しそうだねー」


30分くらいが経っただろうか。

蒼月が垢嘗を倒し続けていると、垢嘗とほぼ同じ姿だが明らか色の違う個体がいることに気付く。


「青色!?何だあいつ!」

蒼月は電撃を当ててタゲを取ろうとするが、青色の個体は蒼月とは逆の方向へ逃げていく。


「あっ、逃げた!」

蒼月は青色のあやかしの逃げ道を塞ぐように破裂炎球ブラストボールを放つと、青色のあやかしの足元が爆発し、転ぶ


「はっはっはっ、どこに行こうと言うのかね!」

蒼月はゆっくりと青色のあやかしに近づいていく。



青色のあやかしが蒼月の方へ視線を移すと蒼月は口を半月のように伸ばした笑顔で青色のあやかしを見ていた。


「しゃあああ!なんかよく分からんけど垢嘗とは違うあやかしのETCゲットしたぞぉぉぉぉ!」


『天井嘗の舌』

蜘蛛の巣が有っても構わず嘗めちゃうんだ。


「へぇ、垢嘗の亜種かと思ったけど天井嘗っていう別のあやかしなんだ」

蒼月はアイテム欄にそそくさとしまう。


「さて、そろそろ垢嘗のETCは充分か」

蒼月は安全地帯で待っていた三人の元に向かう。


「「お兄ちゃんおかえりー、ほんと強いねー」」

ミルとメルは戻ってきた蒼月に気付き、立ち上がる。


「垢嘗のETCはもう充分だから最後餓鬼に行こうと思うんだが、ETCまだ必要か?」


「「大丈夫ー!」」

ミルとメルは元気よく返事をする。


「ワタクシもいつでも行けます!」

モンブランも立ち上がり、ドレスに付いた泥を払う。


「おけー、じゃあ餓鬼狩り行くか!」

餓鬼を狩るときも蒼月はハイテンションで一帯の餓鬼を蹴散らしていく。

餓鬼のETCはあっという間に集まり、街に戻ることにする。



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