第七話

森についた蒼月はふと設定項目に痛覚設定の項目があったことを思い出す。


「よし、せっかくだ!この最弱のあやかしでどんなもんか試してみようと思う!」

デフォルトは0。

全く痛みを感じない状態である。


まずは20に設定。

蒼月はキョロキョロとあたりを見渡し、餓鬼を見つけ電撃で誘き出す。


「よっしゃあかかってこいや!!」

餓鬼の攻撃をわざと受ける。


HPを確認するとHPが5減っている。

痛みはそんなにない。


「なーんだ、この程度か。ビビって損したぜ!折角ならもうちょっと強くしてみるか・・・?」

蒼月は好奇心で試しに100に設定してみる。


「ははは、もっぱつかかってこい!」

餓鬼の攻撃をもう一度わざと受ける。


餓鬼のパンチが蒼月の顔を直撃。


「ぶっほぉぉぉぉぉぉ」

蒼月は痛みで悶え、地面をゴロゴロと転がる。


HPバーを見ると先程85だったものが75に減っていた。


「たった10でこれ!?こんなのダメダメぇ!」

ヒリヒリと痛む顔をおさえながら、電撃で餓鬼を仕留める。


「100でやってスリルを求めるってのはなしだ」

痛覚設定を10に変更する。


「多少はないとダメージを喰らっているかわからないから、これくらいでいいだろう」


痛覚の実験終了後。

近くでバンバンと何かが爆発する音が聞こえる。


「おっ、もしかして」

蒼月は模倣コピーできるのではないかと期待し、音の方へ動き出す。


「この辺だと思うんだけどなぁ」

付近を確認する前に女性の声が聞こえる。


「きゃー!こっちこないでくださいましぃぃぃぃ!」

金髪縦ロールの女性が必死に叫びながら、餓鬼に向かって超能力を連発していた。


破裂炎球ブラストボール模倣コピーしました。


「やった!模倣コピー発動した!」

蒼月はガッツポーズを取る。


そのまま金髪縦ロールの戦う様子を見ていたが、銃で戦う気配がない。


「もしかして始めたてか?」

金髪縦ロールの動きを観察しているが破裂炎球ブラストボールはあらぬ方向へ飛んでいき、餓鬼に一度も当たっていない。


「おーい!なんか手伝おうかー?」

蒼月が見かねて金髪縦ロールに声をかける。


「は、はい!ご助力いただけますか!?」

金髪縦ロールは逃げ回りながら返事を返す。


「あいよ!」

蒼月は先程模倣コピーした破裂炎球ブラストボールを発現する。


蒼月の手のひらから野球ボールくらいの球が現れて、餓鬼に向かって放つ。

破裂炎球ブラストボールは餓鬼に命中し、バンと弾ける。

攻撃を喰らった餓鬼は少し後ろにのけぞる。


「へぇ!いい能力じゃん!」

蒼月は餓鬼に隙を与えぬように連続で破裂炎球ブラストボールを放つ。


餓鬼は10発でポリゴン化して消える。

「10発か。お嬢様が何回か攻撃当ててたのかな」

蒼月は金髪縦ロールの方へ近づいていく。


「終わったよ、お嬢様。大丈夫?立てそ?」

蒼月が金髪縦ロールに手を差し出す。


金髪縦ロールのお嬢様はヘタリと地面に座っていた。


「はっ!?大丈夫ってなんですの!?本当はワタクシ一人でも余裕でしたわ!」

お嬢様は蒼月の手を取って立ち上がり、スカートについた泥を払う。


蒼月は初期装備でドレスなんてあるんだなぁなんて感心する。

そういえば華族って立場があったなぁと思い出す。


「ふーん。そうか、なら俺はもういくわ!それじゃ」


「ちょぉぉぉぉぉぉと、お待ちになって!!!!」

金髪縦ロールは蒼月の手を引っ張る。


「ちょっ、うわっ」

蒼月は体勢を崩して地面に転がる。


「し、失礼しました!」

お嬢様は申し訳なさそうに蒼月の手を取る。


「急に引っ張るなよな。んで何?」


「あなたを私の護衛に任命します!光栄に思い「あっ、結構です」」

蒼月は金髪縦ロールの言葉を遮り、そそくさとその場を後にしようとする。


「ちょぉぉぉぉぉぉと!!!!」

またもやお嬢様に手を引っ張られ体勢を崩し、蒼月は地面に伏せる。


「もー!なんなんだよ!!」


「わかりました!対価が欲しいのですね!今は難しいですが、対価をお支払いいたします!だから街まで連れて行ってくださいまし」


「あぁ、もう分かったよ!街まで連れて行けばいいんだな!」

折角街から出てきたが蒼月は金髪縦ロールを連れて街に逆戻り。


道中餓鬼と何体か遭遇したが、金髪縦ロールから模倣コピーした破裂炎球ブラストボールが強いのでそれほど苦戦しなかった。

雷撃だと19発だが破裂炎球ブラストボールだと半分の10発だ。

素晴らしい!


「私と同じ超能力を選ぶだなんて、あなたセンスがありますわね!」

金髪縦ロールは上機嫌だ。


「んー?まぁな。ほんと使いやすい能力だよな破裂炎球ブラストボール


「そうですのよ!しかも花火みたいで派手ですの!私にうってつけですわね!」


「あぁ、そうだな・・・。ははは」

人とのコミュニケーションは求めていたが、俺が求めたのはもっと情報の交換とか有意義な物だったんだ。


会話のペースは終始金髪縦ロールのお嬢様にペースを持って行かれて疲労困憊だ。

そしてようやく街についた。


「街ついたぞ、ここがオウサカだとさ」


「まぁ!なんて大きな街かしら!お買い物が楽しそうですわね!」

金髪縦ロールは目をキラキラと輝かせる。


「次、街から出るなら雑貨屋とかで丸薬買ってからいけよなー。んじゃ」

蒼月はひらりと体を翻して森へと戻ろうとする。

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