第六話

翌日。

蒼月は学校に行くより早い7時半に目が覚める。

超能力を使えたという胸の高鳴りが収まらず、眠りが浅かった。


目が覚めたのなら仕方がない。

蒼月は伸びをしてベッドから起き上がる。


「んー、でもなんか眠いよなぁ」

のっそのっそと目をこすりながら冷蔵庫の方へ移動する。

冷蔵庫の中にはぎっしりとエナジードリンクが入っており、一番手前から一本だけ取り出し、ググッと一気に飲み干す。


「よし!目覚めた!やるか!」

VRゴーグルを着けて、再度ベッドに横になり『Abyss Gate Online 』ログインする。


「Welcome to Abyss Gate Online 」

無機質な女性オペレータの声が脳に響く。


「起動かなり早いんだよなぁ」

蒼月はUIを触り、アイテム欄を確認する。

前日頑張って狩ったあやかしのETCアイテムがアイテム欄に入っている。

アイテムを拾って分かったのだがあいつは餓鬼というらしい。


『餓鬼の灰』

あぁ、まただ。

なぜ全て灰と化す。

だれかこの飢えと渇きを満たしてはくれぬか。


次にステータスを確認する。

オウサカに移動するまでの間に餓鬼を倒していたのでレベルは3になっていた。


蒼月

Lv3

HP 110/110


【VIT 5】

【STR 5】

【DEX 5】

【AGI 16】

【LUK 5】

【PSY 19】


装備

頭 【追放者の頭巾】

体 【追放者の服】

右手 【サイキックリング】

左手 【サイキックリング】

靴 【追放者の草鞋】

装飾品

【無し】

【無し】

【無し】


超能力

模倣Lv1(電撃操作エレクトロキネシス


折角、模倣コピーを選んだのに周りが超能力を使って戦っていないので、全然活かせていない。


戦闘面で言えば電撃で餓鬼を倒す時始めは20回位必要だったが、PSYをあげているからか19回くらい電撃をお見舞いすれば倒せるようになった。

それでもかなりキツイが・・・。


「まぁ装備変えたらもう少し楽になるだろう!そうだなぁ。まずはこの辺売ったり出来るか確認してそれから探索するか!」

雑貨屋、武器屋、あとはプレイヤーとコミュニケーションが取れれば最高だ。


街の趣をみている感じ、和風ファンタジーで時代はおそらく明治後半から大正時代前半あたりだろうか。


女性NPCらしき人物は振袖、袴、ブーツといった和と洋を合わせたコーディネートだ。

らしきと言うのは話している言葉、表情などがリアルと差がなくてNPCなのか人間なのかがはっきりとわからないからだ。


NPCが普通に可愛い。

てか俺の性癖に刺さる。

ほんとにNPCが可愛い。


ただそれだけのこと。


まずは雑貨屋。

餓鬼から回収したETCアイテムを売りにだす。


「まぁ、最弱の敵じゃあETCアイテムも大した金額にならねぇよな・・・」

ついでに何を売っているのか確認する為に、雑貨屋を除く。

HPの回復に使用する丸薬があったので、とりあえずそれを50個ほど購入する。


「アイテム欄確認したけど、初期だと何も渡されてないんだよな。これいきなり森にほっぽり出されて、選んだ超能力によっては普通に詰むやついるだろ。銃も一丁も渡されてないしよ。運営に文句入れとこうかな。いや辞めとこう。何か対策はされてるんだろう」


他にも売っているアイテムの説明を見ていると、制作用アイテムなどもあった。

どうやら生産系も一応出来るみたいだな。


錬金術とか錬鉄術とか創造みたいな超能力も一覧にあったし、そういうのが生産向きって感じかな。


「さて次は武器屋いくかぁ!」

蒼月は雑貨屋を後にしてマップを開き、武器屋にピンを立てる。


AGIの高さは街の中でも活かされるらしい。

割と遠かったように思ったがすぐについた。

武器屋の中に入って物色を始める。


基本は銃ばかりだ。

ハンドガン・アサルトライフル・スナイパーライフル、後は変わり種で言うなら軍刀とかも売っていた。


「軍刀はロマンあるなぁ。普通にかっこいい!あっ、サイキックリングはっと・・・」

蒼月は銃以外を置いている棚の方へ移動する。


「今装備しているものより強いものはないかぁ。ならこれは強化とかできる感じか?強化できるならしたいな」

なんたって電撃だと19回ダメージを与えないと倒せない。

まぁそのあたりはいつか情報でてくるだろう。


「銃だと何発で餓鬼を倒せるんだろうか・・・?」

試しに買って倒してみるかと銃の棚へ移動し、値段を見る。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、十万・・・。25万円・・・?」

アサルトライフルやスナイパーライフルなどの両手で装備するものは結構なお値段だった。

蒼月は持ち金を確認するが、さっき薬を買ったので武器を買うお金がない。


「は、ハンドガンならどうだ!」

蒼月は横の棚にズレて値段を見るが、がっくりと肩を下ろす。


「くぅ・・・。諦めて超能力だけで金策するかぁ・・・」

後はプレイヤーとコミュニケーションを取りたいが、すでにグループでまとまっていたり、話しかけてくんなオーラを出している人がいたりで全く取れそうにない。


「はぁ・・・。交流も諦めるか・・・」

蒼月は諦めて、レベリングと金策の為に森に向かう。

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