第二話

そして迎えた『Abyss Gate Online 』の発売日。

どうしても課題の提出をしないと行けなかったので蒼月は大学の校内にいた。


「なんで今日に限って、データ提出じゃなく実技課題なんだよ!」

蒼月の専攻は電子工学。

VRの技術を学びたいから入ったのだが、自分の手で色々と作るのが楽しくなり夏休み前日の今日は本当に大忙しだった。


どうしても『Abyss Gate Online 』を発売日にやるというモチベが無ければ、先生に頼み込んで夏休みにまで課題提出を遅らせていたかもしれない。


物理制作物の提出も終わり、晴れて蒼月は夏休みに突入する。


「しゃあ!提出物全部提出した!これで夏休み『Abyss Gate Online 』に熱中できるぞぉ!」

蒼月は早足で大学校内を移動し、最寄りのゲームショップに向かう。

だがゲームショップの入り口に『Abyss Gate Online 』売り切れましたと、看板が置かれていた。


「おい!マジかよ!」

次に近いゲーム屋は二つ隣の駅前にある。


蒼月は店を出て小走りで駅に向かう。


時刻は12時40分。


電車の待ち時間さえも惜しいが待つしかない。


蒼月は慌てた気持ちを抑えつつ頭の中で最適ルートを描く。

ゲームショップに行けるのは13時頃そこから帰れば14時には『Abyss Gate Online 』を始められるだろう。


そこで電車が到着する。

扉の前に立ち、誰も出てこないので蒼月は電車に乗り込む。


いつもなら座席に座るが、今日は一秒でも早くゲームショップに行きたいので、席には座らず扉付近で待機する。


その後、ゲームショップに思っていた時間通りに着いたがこの店でも売り切れていた。


「マジかよ・・・」

徒労に終わったが、仕方がないので都会まで出ることにする。

だが、蒼月はすぐさま店を出て駅に向かっていた。

「流石に駅前の大型家電量販店ならあるだろう」


大型家電量販店の中に入るといつもの音楽が流れている。

そんな中で、店員がアナウンスをしていた。


「本日発売の『Abyss Gate Online 』ですが、店舗販売分は売り切れとなっております。ご了承ください」


「はぁ?マジかよ!ここでも無理ならダウンロード版買うしかねぇか」

パッケージ版が欲しかったが、ここまで売り切れが出ると思わなかった。

予約していなかった自分が悪いと、諦めがついた。


「しゃあねぇ!帰るか!」

大学を終えたのが昼頃だったのにも関わらず、何軒も回ったのですっかり空は橙に染まっていた。


「んー、今日は帰ったらゲーム漬けしたいし、晩飯はコンビニで買って帰るか」


家の最寄りにあるコンビニでエナジードリンクとパンを買い帰宅する。


「やっと家についた。久々に都会出たもんな」

蒼月はコンビニの袋からエナジードリンクを取り出し一気に飲み干す。

そして、VR機器の電源を付けてゴーグルを頭につける。


Welcome!と文字が現れる。

蒼月はUIを操作して『Abyss Gate Online 』ダウンロード版を購入。

ダウンロードボタンをタッチすると完了まで残り10分と目安が表示される。


「ダウンロード長いなぁ。ネット掲示板みて情報収集するか・・・?」

ブラウザの検索バーに文字を入力して検索をタッチしようとするが、蒼月は指を止める。


「情報集めは辞めとこう。折角の大作なんだから攻略見ずにやるしかねぇな!」

ダウンロード中だが電子取扱説明書が有ったのでこれを熟読する。


「なるほど。サイキックリングってのをつけないと超能力は使えない仕組みか。

えっ?まじ?このサイキックリングって片手武器扱い?

ならデカめの銃ブッパしながら超能力で戦うってのができないのか」

蒼月は指でページを捲る動作をする。


「武器の種類はハンドガン・サブマシンガン・アサルトライフル・重火器・近接武器に加えてサイキックリングって感じか。思ってたのと違うけどまぁ実際やってみないとわからんよな!」


そうこうしている内に、UIの右下にダウンロード完了のポップアップが表示される。


「待ってました!さて起動しますか」!

蒼月はベッドに横になり、ゲームを起動する。


注意事項やら会社のロゴやらが表示される。

「こういうの無くいきなりゲームのロゴが出てきたら、カッコいいのになぁ」


「Abyss Gate Online へようこそ」

無機質な女性の声でアナウンスが流れる。


その後直ぐにキャラクタークリエイトが始まる。


「自身の顔をスキャンしインポートできますが実行しますか?」

無機質な女性の声で確認が入る。

どうやらこの無機質な女性の声がシステムオペレータの役割を担っているようだ。


「まぁ、一から作るよりはそっちの方が時短できるか。すでに最速組とは18時間位差があるわけだし」

主人公はYesの文字をタッチする。


「スキャンを開始します。」

「スキャンが完了しました。」

目の前に蒼月の顔が表示される。


「おぉ、すごいな。本当にそっくりだ」

蒼月はグルグルとゲーム内アバターの周りを回る。

ここからさらに変更できるようだ。

蒼月はいろんな項目を適当に触ってみる。


「へぇ、AIってのはここまでなんでもできるのか。とんでもないな。んで他パーツをいじることも可能と。項目多すぎるな」

蒼月は少しめんどくさくなってきたので、初期化ボタンを押す。

アバターはスキャンしたての顔に戻る。


「まぁ、よくある顔だし。リアルバレはしないだろ!」

楽観的に顔の設定を完了する。


アバター設定完了後にステータス画面のポップアップが現れる。


「まずは立場を選んでください」

無機質な女性オペレーターに促される。


「立場ねぇ」

蒼月は立場の一覧を眺める。


・突撃兵 HPとVITが少し高め

・実験兵 PSYとDEX

・狙撃兵 STRとDEX

・追放者 PSYとAGI

・伝道者 HPとLUK

・強奪者 DEXとAGI

・華族 全体的に高め

・商人 HPとLUK

選べそうな立場はこんな感じだ。


「んー、どうしようかなぁ。まぁ、超能力使いたいし追放者ってのにするか」

主人公は追放者をタッチする。


「ステータスにボーナスポイントを割り振ってください」


蒼月はステータスへ目を向ける。

「なるほどね。他ゲームでよく見る INTの代わりにPSYってのがある感じか」


ボーナスポイント5

【HP 5】

【VIT 5】

【STR 5】

【DEX 5】

【AGI 10】

【LUK 5】

【PSY 10】


「初期値が5で立場でPSYとAGIに10割り振られてる感じか。超能力使いたいしAGIってのは12で残りはPSYに振るしかないだろ!」


【HP 5】

【VIT 5】

【STR 5】

【DEX 5】

【AGI 12】

【LUK 5】

【PSY 13】


「ステータスはこちらでよろしいですか?」

オペレータからの確認が入る。


「問題ない!」

蒼月は決定ボタンをタッチする。


「それでは次に名前を決めてください」


「はいよっと」

名前をタッチして蒼月あいると入力する。


「名前は蒼月あいるでよろしいですか?」

YesとNoのポップアップが現れる。


「Yes!」


「それでは最後に自身の超能力を選択してください」

※途中で変更ができません。慎重に選んでください


超能力一覧が現れる。


・念力

・念話

・透視

・千里眼

・未来視


等のポピュラーな物から


・水流操作

・錬金術

・身体変化


蒼月はリストを指で動かして確認する。

だがいくら指を動かしても終わりが見えない。


「一つだけなんてえらべないよぉぉぉぉぉぉぉ!」

蒼月はスクロールを途中でやめて叫ぶ。


だが、超能力リストの止めていた場所にすごくいい能力を発見する。

「これだっ!」


主人公が選んだ超能力は模倣コピー


|模倣(コピー)

戦闘中の超能力を見ることで発動。

その超能力が使用可能になる。

※模倣した超能力はオリジナルの物に比べ、大幅に弱体化されます。


「大幅弱体化ってのがどんなものかはわからないけど、色々な超能力が使えた方が楽しいに決まってる!」


「最終確認です。こちらのステータスで始めますがよろしいですか?」


蒼月

Lv1

HP 50/50


【HP 5】

【VIT 5】

【STR 5】

【DEX 5】

【AGI 12】

【LUK 5】

【PSY 13】


装備

頭 【追放者の頭巾】

体 【追放者の服】

右手 【サイキックリング】

左手 【サイキックリング】

靴 【追放者の草鞋】

装飾品

【無し】

【無し】

【無し】


超能力

模倣Lv1


蒼月は上から下まで視線を動かす。

「問題なさそうだな!よし!それじゃあ始めるぜ!」


主人公はゲーム開始をタッチする

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