Abyss Gate Online

ニートうさ@らびっといあー小説部

第一話

フルダイブ型VRゲーム。

それはモニターを介してプレイするゲームとは全く違うゲームである。


森にいれば木々のざわめきが聞こえ、吹く風を肌で感じているかのように錯覚する。

川にいれば川のせせらぎが聞こえ、水の冷たさも感じることができる。


このとんでもない技術を発表したのは、株式会社アビス。

そこに所属する天才プログラマーの一人が設計・開発を行ったと言われているが噂の域を超えない。


技術を発表した後に株式会社アビスは、フルダイブ型VR機器を売り出した。

だがこれに対応したゲームやコンテンツが無かった為、ほとんど売れることは無かった。


それを予測していたのだろう。

株式会社アビスは技術発展の為と世界中にオープンソースとして公表していたのである。


各企業はこぞってフルダイブ型VRゲームを開発し、続々とフルダイブ型VRゲームを世に送り出した。

ただ、開発にはとんでもない作り込みをする必要があり、コストが掛かりすぎるというデメリットがあった。


もちろん話題になりとんでもない売り上げを出したゲームもあったが、実際はほとんど企業が一本ゲーム製作するだけで限界。

コストに見合う売り上げを出すことが出来ず撤退。

ほとんどの企業が開発を辞めてしまったのだが、株式会社アビスはそこでついに自社で開発したゲームを発表する。


『Abyss Gate Online 』

コンセプトの発表などは全く無く、名前だけの発表だった。

ネット掲示板ではどんなゲームなのかの推測や、憶測が飛び交った。

ゲームのロゴから読み取れることはないか、画像の背景に何か隠されていることは無いか等あらゆる手を駆使したが憶測でしかないので、皆公式の発表を待った。


そしてようやく第一弾PVが発表された

戦っている場所はただの森。

そこで何かよくわからないがモンスターと戦っている。

ほとんどの人は銃を使い、そのモンスター達に応戦している。


そこに装いの違う者が一人だけ現れる。

その人間は手から雷を放ち、そのモンスターを一撃で仕留める。


これだけのPVだった。


ゲーマーは困惑する。

誰もが予想していなかったのだ。

ほとんどの企業が開発していたゲームは中世をモチーフにした剣と魔法で戦うファンタジーだった。


どうやら株式会社アビスが開発していたのは、剣と魔法のファンタジーでは無くどちらかといえばSF寄りの作品だ。


ネット掲示板などでは、中世風のファンタジーが良かったという人の方が多くあまり好評ではなさそうだった。

だが、それも株式会社アビスが第二弾PVの発表と同時に変わった。


〜これは世界を救う物語〜

そんなキャッチコピーと共にPVが流れ始める。

世界観は近未来というより現代と表現する方が正しいだろう。

そこに突然現れた怪物。

あやかし」によって人々は生活圏の縮小を余儀なくされていた。


あやかしに一方的な被害を受けていたが、人々は対あやかし兵器を開発。

なんとか対抗できるようになったが、だが攻め入ることは出来ない。

世界はあやかしの被害に諦めかけていたところに、救世主達が現れる。

それが、プレイヤーである。


プレイヤーは突如として目覚めた超能力と対あやかし兵器を用いてあやかし達を倒し、世界を救う

これが株式会社アビスが開発するゲームの世界観のようだ。


あやかしのコンセプトはどうやら妖怪のようだが、そこまでおどろおどろしい感じはなくホラーゲーム路線では無い。


多くの者が安堵しただろう。

ホラーゲームは割と人を選ぶ。

株式会社アビスが開発した大本命のゲームをプレイできない。

なんて事態にはならなさそうだからである。


俺、柳川やながわ蒼月あいるもホラゲーが苦手な一人だ。

PVを見た感じ中世ファンタジーでは無いが、レベルやら装備やらを紹介している項目がしっかりと有ったので、和風な感じのMMOを作りたかったのだろう。

果たしてこれが吉と出るか凶と出るか楽しみだ。


そして、メイン機能であろう超能力の説明もあった。

超能力での攻撃はめちゃくちゃ派手でかなり楽しそうだったが、不安もある。

超能力等というものは当たり前だが、現実には存在しない。

それをどうやって機能として実現しているのかだ。


フルダイブ型VRゲームの機器を作った株式会社アビスのことだから上手くやっているとは思うがなかなかに不安である。


俺はモバイル端末からネット掲示板を確認する。

中世風ファンタジーが良かった等という人はいつの間にか消えていた。

自分はこういうプレイがしたい。

超能力を使えるならこんな能力あればなぁ等と議論がされていた。


ネット掲示板ではかなり期待されていることがわかった。


「そうだよな。俺だってあんなPV見せられたら考えちまうよ!」


超能力

それは誰しもが一度は考えるだろう。


火を自在に操ることができれば。

遠くの物を動かすことができれば。

目的地まで一瞬で移動できれば。

時間を自在に操ることできれば。


それを仮想世界の中だとしても使えるなら楽しいに決まっているだろ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る