【短編】#好きなだけ怒っていいから、最後はどうか許してください

STORY TELLER 月巳(〜202

#好きなだけ怒っていいから、最後はどうか許してください

#好きなだけ怒っていいから、最後はどうか許してください


storyteller  by  Tukimi©︎


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大した事じゃないと、思ってた。


壊れてて。古びてて。

ホコリもかぶってボロンボロンなそれを、

年末の大掃除で部屋の隅、家具の裏から、見つけて。

捨てた。


佳代が、知らない?と年を越した中、合間合間に探し、見つからないからと尋ねたそれが、話の途中で僕が捨てた物だと分かってしまったけれど。


必死に探す中で、もう既に見つからない場所に行った事を言うと佳代がどれだけ怒るか、うっかりが多い僕は、叱られたくなくて。

さりとて、あるかもと探す彼女の、無駄な努力を止めたくもあり。


「諦めたら?」


何度か。

お正月だから、今日は止めたらとか。

出て来ないみたいだし、諦めたらと伝えたけれど。


止めたらと言う僕の言葉が重なるごとに、彼女は耳も貸さなくなり、返事も返してくれなくなりそして。


怒った顔をして。

一人で探すから放って置いてと、言った後は重い沈黙と、時計の針の音と、彼女が物を右から左へ動かす音。


TVの、お正月特番の、芸人達が、大声で笑う音の方が大きく鳴っているはずなのに。

佳代の一動作ごとの音が耳について。


明るい正月飾りすら、寒々しく。


僕がTV番組を見るふりしながらいる視界の端にいる、彼女はじきに部屋全て探し続けて。

でも、全てを見たと思えばまた、最初に探した場所から再度中身を出し、探して。

諦めない姿を見て。


ふと、その探し物には大事な理由が、あるのだと言うことに気がついて。

その理由が知りたくなり、尋ねた。


「思い出の品なの?それ」


「最後の、プレゼントだったの」

手を止めて、振り返った顔は。

泣き笑いながら、おばあちゃんから、貰ったのと言った。


取り返しがつかないことをした、自分が、嘘までついて、簡単に諦めたらなんて軽く言って、その上、もし、もう既に捨ててしまったなんて言ったら。


僕は何回何重に、彼女を傷つけ、また傷を重ねるのか。

それは、どれだけ佳代を怒らせ悲しませるか、より。

もう、完全に自分からさようならを告げられてしまうか。



まだ僕は、僕が傷つく事が怖く自分の所為で自業自得でも、彼女を失う程自分に絶望される事が怖く。


全く、自分のことしか頭に入ってない、気持ちにしかならず。

たまたま切れたからと、タバコを買う口実で家を出る事にした。

何がいる?て言ったけど、また、彼女は探すのに集中していて。

それどころじゃないから、と怒ってしまった。




地元に帰ってきた友人と会うからと、連絡を佳代に入れ、喫茶店で、悪友に事情を話す。

「おまえ、アホだなあ」

笑う悪友、松江に、笑いごとじゃ無いと怒れば。

彼は一変、顔を変え。

「笑い事じゃ無いなら、何でしたんだお前は佳代に」と、ドスをきかせて言う。


「また。逃げんのか?お前は」



佳代と共通の友人の、一言。


「助けて取りなして、謝らずに済む方法を教えてなんて、情けない事言いに来た、訳じゃ無いだろうな?」


甘い僕の心が見透かされていたが。

やはり、だからとて。

謝るだけじゃ済まない。だから、情けない頭を下げて、そして手ぶらでは謝れないからこそ、松江に、お願いを、した。


探したいんだ。

ネズミのソフビを、だから。




彼女が、二日探して。

探し疲れた中でぼんやりとTVを見るようで見てない背中に、声をかけた。


「これ」


ネットで探して、買った中古の、ネズミのソフビ。


「これ、どうやって?」


一瞬。

佳代が受け取り、探し物かどうか見ている、姿に。

また嘘をつく、もしくは、言わない事も考えたけど。悪友松江の、顔や。

情けなく逃げ回る自分を思い。


「ごめん、佳代の大事なネズミ、間違えて捨てちゃった」

「はあっ?!また、勝手に捨ててたんだやっぱり」


探すの手伝ってもくれないし、様子おかしいって思っていたけどやっぱりね、と佳代は言って。


最低ね、と。

カバン一つ持って、出て行ってしまった。


追いかけ立つ僕に、もう一言、来んなと言葉を投げ捨てて。





ああ、どうしよう。

出て行ってから、しょっちゅう時計を見てはあんまり立たない時間に。

何か気を紛らそうとTVリモコンをいじってみたり。

普段ならのめり込む、TVゲームを始めてみたり、するけど残念。


もう、帰らないかもしれない、と。

捨てられるんじゃないか今度こそと、自分のしたこれまでの、やらかしが、思い起こされて。

だんだん座ってすら居られずに。

うろうろ、うろうろ。


夕食の時間。

電話。

「仕方ないから三日間反省したら許してあげる」


松江が、佳代に連絡を入れてネズミ探ししたことを知って、全て知ってしまったらしかった。

実家で過ごすから、と切れた電話。



どうやら。

捨てられ、てはないらしい。

もし、嘘吐き続けたら捨てたけどと言う声は親父の雷より、怖くて。

急に、膀胱が締まり、トイレに行きたい気分になったけど。


とりあえず。湯を沸かし。

年越し用に買ったあまりの、インスタントのカップ蕎麦。


3分待ちながら願う。

もちろん、怖いのも、痛い平手も、無視も、嫌だけど。

それでも。


どんなに詰って、非難しても、言い受け止めたい。だから、お願い。

都合の良い話だけどさ、佳代さん。


——好きなだけ怒っていいから、最後はどうか、僕を許してください。


お願いだから。


-お仕舞い-


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【後書き☆今宵は少し話を】


小さい頃。

嘘を付き重ねてバレて、かなり怒られた記憶がありますが。


幾つまで、とは言えないが。少なくとも。

実年齢、ではなく。内面が。

大人だと、名乗れる人がしちゃいけないいくつかのうち、の一つが。


嘘をつき、保身する事じゃ無いかなと思います。

誰もがしないわけにはいかない、なんかしかの失敗、それは仕方ない面があるから。


許してもらい、再チャンスを貰いながら、大人になってきた、私は、出来るだけ、貰ったように、私も人に差し出したい再チャンス。


だけど。

許せるものが許せなくなるのは、

嘘と、逃げ、誤魔化し、繰り返しなど。

また、優しく頂いたチャンスを自ら捨てたり、繰り返す事で変わらないを選ぶ人。


いつか、いつか良くなるが、ただの夢、いつまでも許して貰うると貴方が思うなら。

私は逆に、助けの声ひとつかけない。


考え直す姿、過ちを判り戒める心が育たないと、そう諦めたら。


いっそ、しっかり我が身に痛みや傷を感じ反省して頂くために、突き放すでしょう。

さて。話の主人公は、許して貰ったようですが。


貴方は今、主人公側?周囲の人側?

どちらに立つ今見ていらっしゃるのか。

何かしら、その心に、感じるものがあれば幸いです。

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