異世界の女神を助けて世界を救うために、俺は異世界をVRMMOに偽装しました。
ノアミオ
第1話 異世界の女神様
どこにでもいる普通の男子高校生だ。
しかし、今日はそんな秋人の部屋に、とんでもない客人が現れた。
それは、異世界からやって来た女神、リアだった。
秋人はぴくぴくと動くまぶたを押さえつつ、突如自分の部屋に現れたこの異世界の女神をじっと見つめた。
彼女の背中には光り輝く翼が広がっていて、秋人は「ああ、この人、ただ者じゃないな」と思わされた。
「それで、さっきの話、もう一回言ってくれる?」
秋人は少し頭を抱えながら、目の前の女神様を見つめた。
彼女は、秋人の部屋に入ってきた時から、ずっと土下座しているままだ。
そして、こんな立派な女神様が、どうして秋人に土下座しているのかというと…。
「お願いです!秋人様!どうか私の世界を救ってください!」
異世界の女神は、秋人に会うなり叫んだ言葉を、再び繰り返した。
女神の真剣なお願いに、秋人は額を揉みながら、困ったように答えた。
「いや、リア様。あなたは自由に世界を行き来できる女神でしょ?俺はどこにでもいる普通の男子高校生なんですけど…俺にそんな力あるわけないじゃないですか?」
秋人は、自分が戦いに全く向いていないことを自覚していた。
普段からクラスの女子にすら勝てないのに、世界を破壊するような化け物相手に戦うなんて、とても無理な話だ。
だから、どうして自分みたいな平凡な人間が選ばれたのか、秋人には全く理解できなかった。
「私の力は人間に宿らないと発揮できないんです。それに、どれだけの力を引き出せるかは、その人間の適応次第です」
異世界の女神リアは、ようやく顔を上げて秋人を見つめながら言った。
「私の世界の人間には、私の力が適応しなかったんです。でも、この世界の人間には適応するんです!特に秋人様!あなたは私の力を100%引き出せるんです!」
女神は目を輝かせ、秋人の手をがっしりと握りしめた。
「それで、わざわざ異世界からこんな遠くまで来たんですね?」
秋人は彼女の頼みに、少し感謝の気持ちを抱いた。
女神の加護を受けて、異世界で勇者になるのも、悪くない選択かもしれない。
ただ、ひとつだけ問題があって…。
「すみません、リア様。実は俺、戦いは得意じゃないし、正直あまり好きじゃないんです」
秋人は率直に、自分が戦うのが苦手だと伝えた。
みんながみんな、剣を持って突撃する勇者になりたいわけじゃない。
秋人はむしろ、後方で農夫や鍛冶屋のような支援職に就きたいと考えていたのだ。
「そんな…」
リアは、秋人が後方支援を望んでいることを知り、すっかり表情を曇らせた。
だが、秋人はすぐに対策を思いついた。
「まぁ、落ち着いてください。俺は戦いが苦手ですが、この世界には戦いが得意で、それを楽しむ人がたくさんいますよ」
秋人は落ち込むリアにすぐに自分の考えを提案した。
「この世界の人が、あなたの力に適応できるって言ってましたよね?」
「なら、この世界で他の勇者を募集すればいいんじゃないですか?」
「でも…」
リアは少しの間、ためらったが、心配そうに言った。
「私たちの世界での戦いは非常に過酷です。私の加護で勇者様たちは死んでも蘇ることができますが、痛みや疲労はなくならないんです」
「そんな過酷な条件で、今の平和な生活を捨ててまで、勇者になってくれる人が本当にいるでしょうか?」
まるでブラック企業が人を騙して、過酷な労働に駆り出すような話じゃないか?
「大丈夫です。勇者たちは、その終わりなき戦いにのめり込み、むしろ楽しむようになりますよ」秋人はそう言った。
「え、それってどういうことですか?」
戦いを楽しむ人がいるという現実に、異世界の女神は理解が追いつかないようだった。
「簡単です!異世界、つまりあなたの世界をVRMMOに見せかけるんです!そして、遊びに来たVRMMOプレイヤーたちに勇者の役を任せましょう!」
秋人はまるでブラック企業の社長のような口調で、陰湿に計画を語り始めた。
「このVRMMOが面白ければ、プレイヤーたちは間違いなく24時間ぶっ続けで、あなたの世界を救うために戦い続けますよ」
「もしかしたら、魔王軍だって、この貪欲なプレイヤーたちに滅ぼされるかもしれませんね」
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