第12話 18歳・男性・学生・恣意的なトラックによる轢死

「助けてフィオラ!」

「後生だから今すぐきてくれ!」


「ちょっ……ナロウ様とゲンファン様!?ワァァーーーーーッ!」


 出社直後、自分の席につこうとしたフィオラは二柱の上級神によって拉致された。


「ハァ……まったく、ユニティの奴がしくじるからあんなことに……」


「四柱で囲んで踏んでもまだ気が晴れないねえ……」


「あ、やっぱりユニティ様を病院送りにしたの皆様だったんですね」


 席に着く前、黒髪ロングからユニティの入院については聞いており理由も大体わかっていた。その黒髪ロングは拉致される際に物凄い形相でこちらを心配していた。


「当たり前じゃない。あいつのせいで妹様が暴れ出したんだから」


「それは……しくじった私に責があるとしか……」


「あのバカが最高の魂を選定して妹様と同等の能力を付与させようとしたのが間違いだったんだよ。フィオラ、君の責任じゃない。そもそも特別転生者はアメンボ確定の駄目人間ヒキニートですら最強クラスになれるのに欲張るから……」


 それだけ、神自らが手を下すというのは莫大な力を付与出来るということでもある。あの時、ユニティに余力が残っていればフィオラも気を失う事は無かったのだが、後の祭りだ。


「というわけで今回は余力を残す。ユニティクソボケのおかげでフィオラの限界も分かったからね。今度は私とゲンファンの2枚体制でカバーするわ」


「あの……そのことについてなんですが……私は一体何なんですか?妹様は祖神様がどうこう言っていたんですが……」


「……それについては私達も目下調査中さ。少なくとも言える事は、キミが能力付与に関する才能を生まれ持っているということだけだ」


「自分で言うのも何ですが……私、ヤニカスでパチンカスでアル中ですよ?」


 まっこと悲惨な自己分析だが、事実だ。魂の穢れハッピーセットの権化みたいなフィオラが能力付与をするなど、本来は即消滅してもおかしくないのだから。


「そりゃエターナルだって同じでしょ。祖神様の無茶振りでああなっちゃったんだけど……とにかく、今の惨状をご覧なさい。これが妹様に入られた世界の末路よ」


 ナロウが小世界をフィオラに見せる。何やら全体的に紫色の趣味が悪い城の中で不審鳥が元気に魔王らしき者へフランケンシュタイナーを決めているところであった。


『ピィーッ!これが光ン力だーーーッ!!!』


『わ、私を倒しても第二、第三の私がウゲェェェーーーッ!』


 フィオラはすぐに小世界から目を逸らした。


「何スかあれ」


「魔王に転生して善政を敷いていた転生者をボコボコにしている姿よ?」


「私が聞きてえのはそういうことじゃないんスけど……」


「こっちは私の世界だよ」


「ワーッ!観たくない!」


 が、抵抗虚しくゲンファンに小世界を見せられる。何やら全身ボロボロになった少年へ手を差し伸べている不審鳥が見えてしまった。


『ピヨピヨ、少年。私と共に百合に挟まったりしないかい?』


『ヤダーーーーーッ!』


 フィオラは吐気を催した。


「だから何スかこれ!?」


「何って……手塩にかけて能力を付与した少年へいらんちょっかいを出している妹様だよ」


「いい?妹様に目をつけられた転生者はああなる運命なのよ……」


「そりゃなんかちいさくてかわいいやつみたいな口調にもなりますよ……」


 以前ユニティが言っていた異世界転生者殺しの意味が魂で理解できた。あらゆる物語を台無しにする。それが妹様の恐ろしいところだ。

 これが素顔であったならまた違った展開になったのだろうが、アレを被ってあの口調であのシチュエーションをやっているのだから、間違いなくわざとやっているのだろう。


「……とまあ、被害の程を分かってくれたところで作戦開始よ。まず、ゲンファンが提携しているトラック会社に依頼して特別転生者を作り出す。それから私とフィオラで滞りなく能力付与を行う。いい?」


「ナロウ様のお力があればなんとか……それより、転生トラックって天界ウチと提携しているんですね……」


「異世界転生事由ブッチギリ第一位のトラック轢殺だけど、最近はわざと異世界転生するために勧んでトラックに飛び込む輩が増えていてねえ。むしろトラックの運転手が病んでこっち来るケースが増えたから、ちゃんと転生出来るトラック会社を選んだんだよ。当然、わざとそんなことやる奴はアメンボだけどね」


 あまりにもトラックによる転生が増えたせいで、ただでさえ人手不足だった下界の運送業はより斜陽となっていた。最近ではトラック運転手が過失で轢殺した場合の保護法案が通ろうとしているぐらいだ。

 なお、天界と提携している会社のトラックに限り、神託で事故を有耶無耶にしている。そうでもしないと組んでなんかくれない。普段は真っ当に荷物の配送を行っている健全な会社だ。


「あー、もしもし。毎度お世話になっております、天界です。……はい、12歳ぐらいの男の子を一人……」


「待ちなさい少年趣味ショタコン。高校生か大学生ぐらいにしときなさい。子供を轢くのはコンプラ的にも神力消費的にもアウトよ」


「チッ……ああ、すみません。やっぱり高校生ぐらいで……はい……何卒よろしくお願いいたします。では、失礼します」


 電話を切った瞬間、ゲンファンが膝をつく。ユニティほどではないが、かなり消耗したようだ。


「危ない危ない……趣味に走っていたら消滅していたよ……あと5分ぐらいで来るってさ」


「その会社、ヒットマンか何かを雇ってます?」


 健全な運送会社である。


「しかし……殺人教唆とはいえ、特別転生者の作成はかなり持っていかれるわね……」


「ドライバー及び窓口担当の倫理観削除、目撃情報の隠蔽もやっているから結構疲れるんだよ……フィオラもそのうちやることになるだろうから覚悟しておいてくれよ」


「い、嫌だが……?」


 などと話している間に制服を着た男子がフィオラ達の前に現れる。ユニティが呼び出した特別転生者とは違い、その魂はすぐに覚醒して周囲を見渡す。


「うーん……確か俺はトラックに轢かれて……うわあ!?綺麗なお姉さん達!?ここ天国!?」


「飲み込みが早くて助かります。突然ですが、貴方は死にましたので異世界に転生します」


「イヤッホウ!異世界転生!?マジですか!?やったーーー!」


 男子の魂は飛び跳ねて喜びを全身で体現している。こういうのは異世界転生課ここで働いていれば珍しくはない反応だ。


(何で異世界転生を喜ぶ人が多いんですかね)

(そういう作品が流通しまくったからね。それに下界はストレスだらけだから死んでやり直したいって人が多いらしいわ)


 フィオラとナロウは念話で会話した。目の前に特別なお客様がいる以上、神々しい女神を装わざるを得ないからだ。


「ただ、異世界にその身のまま行くのは自殺行為だ。よってあちらで苦なく生活出来るよう好きなスキルを与えよう。何でも言ってくれたまえ」


(自分は能力付与に参加しないからって気軽に言ってくれますね)

(実際妹様を相手取るのだから、私達の発想にないトンデモスキルぐらいは与えておかないとね。それに、本人の希望と合致していた方が習熟は早いし)


「でしたら……うーーーーん……いきなり決めろと言われると悩ましい……」


 どんなスキルを得て転生するか、それは作品の方向性を決める重大な決断である。

 戦闘に長けたスキルで俺TUEEEするも良し、稼げるスキルで財を成しても良し、のんびりスローライフをするとか言って農耕スキルを生やすも良し、わざとクズスキルを取って応用性を以て尖った活躍をするも良しだ。

 神は基本的に能力付与への干渉はしない方針だ。活躍しやすいスキルは既に統計が取られていて画一的になりやすい。ゲンファンが言う通り、本人に決めさせた方が良いのだ。


「ちなみに、スキルは何個取得しても良い。君は不運な死に方をしてしまったからね。その詫びだ」


 自分で殺しておいて、なんと身勝手な。と思うフィオラであった。


「まずは……そういうことなら……『銃』を生成出来るように……」


「ゴッファ!!!」


 ナロウが急に吐血した。


「な、ナロウ様ーーーッ!」


「え?俺、なんかやっちゃいました!?」


「い、いえ……お気になさらず……」


「いや、かなり気になるんですが……ところでヒロインとか選べます?」


「なかなか欲望に忠実だねえ君ィ。伴侶の事まで考えるとはなかなか先を見据えている。なるべく希望に沿える出会いを提供しようじゃないか」


 誰をヒロインとするかも重要な要素だ。相手の出自は、保有するスキルは、いっそのこと一人だけじゃなくてハーレムを形成するのも一般的と言える。

 ちなみにナロウの管轄する世界は決まって美男美女ばかりなので、後は好みに沿って調整を施すだけでいい。


「えっと……でしたら……せっかく異世界へ行くのだから猫耳の獣人とかいらっしゃいます?」


「チョッキップリィィィ!!!」


 またナロウが吐血した。


「え!?ダメでした!?っていうか凄い声出して吐血してません!?」


「な、ナロウ様……本当にどうしたんですか!?お気を確かに!」


「ハァハァ……大丈夫……むしろ候補はいっぱい居るわ……」


「な、なるべく可愛くて低身長で巨乳で俺の事最初から大好きで俺にだけ性に奔放な感じでお願いします……」


「本当に欲望に忠実だね君は……しかし、武器の知識とヒロインだけというのは心許ない。何かこう、スキル的なものはないかな?」


 ここでもまた男は悩んだ。通常はスキル一つ与えられて終わりなことが多いが、彼は特別転生者である。ナロウは吐血を繰り返しているが、まだまだ付与の余地はある。

 あと異能を複数付与したがるのはゲンファンの趣味である。彼女が本気を出したら5〜6個では済まない。


「そうだなあ……自分で戦うのは怖いので、モンスターテイムとかどうですか?【世界的有名携帯獣ゲーム】とか【国民的RPGのスピンオフ】とか好きだったんで」


「ユニティが聞いたら喜びそうな答えだが、確かにそれもアリだ。せっかくだから最初から連れ歩けるモンスターもプレゼントしよう。何がいい?」


「えっと……スライムとかゴブリンだと序盤で仲間に出来ちゃいそうだし……ドラゴンかフェンリルですね」


「ドゥブッハァ!」


「ナロウ様ーーーーーッ!!!」


 ナロウ、三度の吐血。そして崩れ落ちてしまった。


「あ、あの!だから俺、何やっちゃったんですか!?」


「銃使いで猫耳少女がヒロインで仲間がドラゴンかフェンリルってところが、かな……」


「何がいけないんですか!?小説とか大体そんな感じでしたよ!」


「……フィオラ、行けるわね?私が暴れ出さないうちに早く……!」


「暴れる!?なんかよくわかんないけどえーーーーい!」


 フィオラはまた、先日のように身体ごと特別転生者の魂に持っていかれるような感覚を感じ……なかった。それどころか割とすんなり能力付与が出来た。


「あれ?私、生きてる……」


「お、おお……すごい!銃の構造が一気に頭の中に入ってくる……!あと女神様方のテイム確率が見えます!軒並み0%だけど!」


「神もテイム対象なのか……怖いねえ……」


「さて、能力を付与した後で何ですが……貴方にはあの異世界へ渡っていただき、こちらの方を殺害して欲しいのです」


 フィオラが渡したのは、仲睦まじい男女に挟まってダブルピースをしている不審鳥の写真だ。どうやら関係性さえあれば男同士だろうと百合だとは本人の言であるが、フィオラには理解が及んでいない。


「何ですかこいつ……テイム対象?」


「どっちかっていうと残念なモンスター娘に近いかと……」


「フィオラも言うようになったねえ」


 ゲンファンは何故か前屈して脚の間から顔を出していた。

 が、その目線の先に神力を爆発させそうなナロウが映っていたので、すぐにふざけるのをやめた。


「早く……行きなさい……私は冷静さを欠こうとしている……」


「は、はいいいぃぃぃ!!!」


 逃げ出すようにして男は世界へ飛び込んでいく。すると、ナロウの怒気が徐々に収まっていった。


「ふう……後は結果を見守るだけだが……らしくないじゃないかナロウ。あそこまで取り乱すとは」


「そうですよナロウ様。一体何がいけなかったんですか?」


「ごめん、ちょっと落ち着きたいから煙草吸わせて……そこで訳を話すわ……」


 ナロウがフラフラとした足取りで部屋を出ようとしたので、フィオラとゲンファンで肩を貸して歩くことにした。






 死後役所を出てすぐの公園。その喫煙所に三柱の神は集まっていた。本来であれば勤務時間中なので役所内の喫煙所へ行くべきだが、ゲンファンが非喫煙者であるため気を遣ってここにした。

 最も、この話を他の神に聞かれたくないがためでもあるのだが。


「フゥーーーッ……落ち着いた……」


「おかげ様でこちらも……で、どうしてあんなに血を吐いたんですか?」


「いいことフィオラ。あいつが選んだスキルは、転生者の定型そのものなのよ……」


 それからナロウは訥々と語り始めた。まずは銃が遠距離から自らの手を汚さず攻撃出来る武器として人気であること。近接戦闘の経験に乏しい一般下界人の選択としては間違っていない。

 だが、転生者の多くは銃の威力を過信している傾向にある。例えば熊一頭殺すのに散弾なら30mが、ライフルなら200mが有効射程とされている。それも急所の心臓を狙ったとしてだ。

 余程銃の扱いに慣れていなければ反動で肩を壊すし、狙いをつけることすらままならない。狙撃銃など以ての外だ。


「まあ、転生者は筋力や動体視力ブーストしたり、魔力を弾に変換することでそのデメリットをチャラにしているんだけど……私個人としては剣と魔法が喜ばしいのよね。そっちの方が火力高いし」


「私はナロウの意見とは真逆だね。こっちの専門が現代異能という点もあるのだが、銃使いって少年心をくすぐるからね」


 次に獣人少女。異世界といえば亜人ということでエルフに並んで引っ張り出される傾向にある種族だが、これにはちゃんと訳がある。

 基となる生物があまりにも愛されているからだ。特に猫と犬は下界に於いて双璧を成すほどの人気生物である。その特徴を付与した獣人が人気でない訳はない。なんだったらより獣度が高いものを愛好する者もいる。

 だが、獣人をパートナーにした作品は殆どの場合途中で子作りに励む傾向にある。獣ということで発情期を利用しているのかは分からないが、その理由は不明である。


「途中でセックスを挟むと物語が終わっちゃった気分になるのよね……これは個人的な偏見ではあるんだけど……」


「そういうのが主体って場合もあるけどね。ハーレムを形成しがちではあるんだけど、読者層を考えたらやむなしではあるんだよねえ……」


「何目線で言ってるんですか」


 そして最後。異世界に必ずと言って良いほど出てくるのがドラゴンとフェンリルである。ドラゴンに関しては言わずもがな異世界屈指の強者であり、転生者の強さを測るバロメータである。

 フェンリルに関しては先程獣人で説明した通り、犬が非常に人気なのが大きい。犬というか狼なのだが、下界では狼が絶滅してしまった以上その差異を区別するのは難しい。

 なるべく強い犬種として採用されがちなのがフェンリルなのだ。それ以上に強い神話級の生物が思いつかないからなのだろうが、採用率が高いのが現状である。


「ナロウの世界で言えば、鑑定スキルなんかも人気だよね。知らないことがあったら検索エンジンで調べがちな現代人特有の価値観なんだろうけど、何も分からない異世界では有用だね」


「たまに鑑定スキルそのものに自我があったりしますよね。あれも一種の仲間……なのでしょうか」


「やめて……鑑定スキルなんか提示されていたら私の胃に穴が空いていたわ……」


「本来だったら真っ先に付与させるべきなんだが、妹様の能力なんか見たら裸足で逃げちゃうからね……テイム確率で察してしまいそうなものだが、件の彼はどうなってるかな」


「……その妹様を相手取るのに銃はいけなかったのよ。ほら、見なさい」


 ナロウがモニターを出すと、先程の特別転生者が不審鳥と対峙している場面が映っていた。それはもはや銃と呼ぶにはおこがましい禍々しい形状の武器を持ち、猫耳少女だけではなくあらゆる亜人種の女性を付き従え、フェンリルを筆頭にものすごい量のモンスターを使役していた。


「あら、割と真面目に能力を鍛えたじゃないか。どちらかと言うと魔王だけどねこれ」


「銃やモンスターはともかく、ヒロインも戦わせるんですか」


「獣人ヒロイン最大の利点ね。戦闘能力が担保されているからハーレム物では主人公の代わりに矢面に立つことも多いわ。よくもまああの能力群をほぼ最終ビルドまで仕上げた物だわ」


「あっ、始まりますよ」


 モンスター達とヒロイン達は一斉に不審鳥へと襲いかかる。対する不審鳥は……


『ピィーッ、迂闊な動きは死に繋がる』


 どこから取り出したのか、全身からガトリングガンとミサイルを生やし、一斉発射した。


「エーーーーッ!?何それ!?」


「……妹様、本気じゃない。何故かあの方、ドリルとかチェーンソーとか射出してくるのよね」


「あーあー、使役型の転生者の利点、潰されまくりだよ」


 容赦ない弾幕攻撃でモンスターとヒロインがなす術もなく散っていく。生き残りも攻勢をかけるが、毒煙や火炎放射を浴びせられ、そこから容赦ない自動ボウガンの連射で各個撃破されていく。

 後に残ったのは怯えながら銃を構える特別転生者だけであった。


『うわあああああ!来るな!来るなあああああ!!!』


 特別転生者の銃弾が不審鳥を貫いたと同時にその着弾点の周囲100mほどが爆縮する。炎と氷の魔法を詰めて対消滅を起こせるまでになったその魔弾は彼の最大の攻撃であった。


『ピィーッ?』


 だが、無傷。転生者の方はそれでも生きている事に絶望し、その場にへたり込む。


「何で生きてんのあれで!?」


「……妹様、都市1つ賄える電力を放射されてなお生きていたからね」


「確か月まで吹き飛ぶ一撃を受けても生きてたね……なんだっけ、所謂ギャグ補正ってやつさ」


「ふ、ふざけている……!」


「そうね、あのお方は全力でふざけているから……」


『なっちゃいねえ!射撃はこうだ!』


『グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!アバーッ!』


 不審鳥が時折無駄な体制による射撃を織り交ぜながらも、弾丸は特別転生者の身体を無駄なく削っていく。ヒロインやモンスターに戦闘を任せていた貧弱な身体はその1セットだけで崩れ落ちた。


「そして、妹様の射撃は必中。どうやらあの世界の理を持ち出したようだけど……流石は妹様の最も得意とする武器ね……」


「本当の本気なら槍を持ち出すけど、最大のチャンスにして最大のピンチだからなあそんな事案は」


「あ、あの……これ、勝てませんよね!?」


「無理だね。例のインチキ必殺技を一つも使っていない所を見るに、これでも正面撃破には全然足りていない」


「はあ……あ、こっち見たわ。私達も終わりかしら……」


 モニターから不審鳥の姿が消え、いつの間にかナロウとゲンファンの間に挟まってダブルピースをしていた。


「ヘイ、君達。なんだいあのザコは。あんなんで私を倒そうなんてちゃんちゃらおかしくてヘソで鶏ガラスープが湧いちゃうぜ?」


「い、妹様……」


「こ、この度は大変申し訳なく……処罰は何なりと……」


「ピィーッ、現在進行形で百合に挟まれてるから許しちゃる。強いやつとも戦いたいし。ただ、次に半端なヤツを寄越したら……怒るからね?」


 祖神に次ぐ実力者の圧は、上級神すら震え上がらせる。しかし、フィオラは不思議とその圧を感じなかった。不審な鳥の被り物に威圧されても怖くないというわけではない。

 何故か、期待されている。そうフィオラは感じ取った。その様子を見た不審鳥は頷き、去って行った。


「い、生きてた……!」


「すまないフィオラ……私達はもうダメだ……なるほど、ユニティはよくこの圧に耐えたものだ……」


「……分かりました。そうなるとルイン様か、最悪エターナル様を頼ります。今回の件で、倒すのは不可能だと分かりましたので」


「あ、あれ?貴女……そんなに頼もしかったかしら……?」


「ただ、ヤケクソになっているだけですよ。こうなったら封印か世界ごと消滅させるしかありませんから」


 その割には吹っ切れた顔をしているな、とナロウとゲンファンは思い、崩れ落ちた。


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