十一話 初めては獣狩りですか? 其の弐
「久々だね、
思わず剣に話しかけてしまうと少しばかり恥ずかしそうに辺りを見渡した。
ジータとメタリカはそれをしっかりと眺めており、ニマニマとしながら見守っていた。
「こほん、それよりも、ジータ。どうやって僕が30年前に売り払ったこの剣を見つけれたんだい?」
「実はですね、先代ヴォルガがこの剣が市場で売られていた際に買い戻して以来ずっとこの鍛冶場に眠っていたそうなんです」
「ヴォルガ……、あいつ、素直じゃないんだから」
少し悲しそうな表情を浮かべるもその心では今は亡きヴォルガに感謝と敬意を込めた。
少ししんみりとしていた中、メタリカの店のドアが唐突に開いた。
「ジータ様! こんなところにいらしたのですね! 至急、王宮までいらして下さい! 」
声の主は双子の兄弟のラビであり、それを聞いたジータはバサラに向かい口を開いた。
「早速、仕事が来たようですね。御師様、参りましょう! 初めての武勲をあげるチャンスです!」
「え、ええ」
***
ミレニア王国、王都ポリス。
そして、その国を執る王が住まう根城が、ここニーベルング城である。
(ジータの屋敷よりお、大きい)
腰に
そんな彼を疑うような目で見つめる人間ばかりであり、その視線をバサラは理解していたため更に肩身が狭くなっていた。
「ジ、ジータ? そ、そのー、僕ここいていいのかな?」
「もちろんです! あ、着きました! 入りますよ」
ジータはとある部屋の前に止まるとそのドアを開いた。
彼女の姿を見て、先に来ていたユースが声を上げる。
「四護聖ジータ様が到着しました」
その一言で椅子に座っていた騎士達が立ち上がり、お辞儀をする。
「うん、みんな揃っているようだね。早速、本題に入ろう。何があったんだい」
先程までは弟子であったジータが一瞬にして騎士としての顔付きとなり、バサラはそれを少し後ろで見守ると心がじんわりと温かくなっていた。
(ジータ、こんなに立派になってちゃって。昔はよくグランや、ミカに揶揄われて泣いて僕に抱きついて来てたっけ。それが今や、四護聖。王国を守護する英雄の地位にまでなっている。年老いて行くのは悪いことばかりじゃないね)
「なるほど、ならば、お任せください。我が師、カツラギ・バサラが討伐します。ね? 御師様?」
「ひゃい!?」
唐突に自分の名が呼ばれ、想いにふけていた脳がびくりとなる。奇声にも似た返事をしてしまったバサラはまたもや、自分が知らないところで話が進んでいたことを理解した。
「そうそう、皆様に紹介が遅れました。私達、現四護聖の恩師、カツラギ・バサラ様です。四護聖全員が満場一致で剣術指南役として推薦するとしたのですが、御師様は真面目であるため、皆様に認められてから、その地位を勝ち取りたいとしています。それでは、御師様、一言お願いします」
四護聖の師と言う言葉に、その場にいた騎士達の目が一瞬にして変わった。ジータだけが静かに佇んでおり、ユースを含め、数名は今にも噛み殺しそうな空気すらある。
「えっと、カツラギ・バサラです。その、よろしくお願いします」
バサラは無難に挨拶をした。
それ以外のことを言えば、今の彼らにはどんなことでも刺激にしかならない。故に、短く丁寧に。
だが、それすらも許さぬ者がいた。
「武勲を上げれば、我々が納得するとでも」
ユースの目にはつい数時間前に出会った時よりも殺気に満ちている。ジータはそれを止めようと口を開こうとするもバサラは彼女を制止し、彼はユースの目を見て応えた。
「何もなければみんなに納得されないし、僕が納得出来ない。田舎でゆっくりと暮らす予定だったけど、弟子が、何もない僕のために無茶を言ってここまで連れて来てくれたんだ。なら、それに応えるだけの努力はする。それが礼儀だと僕は思う」
バサラの言葉に、ユースは更なる怒りを募らせ、再び声を上げた。
「ならば、今、ここで見せてもらおうか。私、ユース・ダリアは貴様、カツラギ・バサラに決闘を申し込む」
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