何も合成出来ない合成師、追放されてから本当の能力を知る
山親爺大将
第1話 合成出来ない合成師
「んーんんーんー」
猿ぐつわをされ、グルグル巻きされた僕はガタゴトと荷馬車なような物で運ばれていた。
「この辺で良いか?」
小柄で気の弱そうな兵士がそういう。
「大丈夫じゃないか?」
大柄の小太りな兵士がそれに応える。
その声と共に夜中の森の中に僕は運び出された。
月明かりがやけに綺麗に思えた。
「すまないな、お前の存在を無かった事にしたいらしいんだ」
大柄がそう言う。
言いたいことは分かる。
この世界に召喚されて二年、俺は何一つ能力を発揮せずにいた。
僕は『合成師』という職業で異世界召喚された。
待遇も悪くないし元の世界に未練もない僕はその環境をすぐ受け入れた。
今までに無かった職業らしく、研究にも積極的に参加した。
レベル上げにダンジョンにもついて行った。
そうして切磋琢磨した結果。
一般人と何も変わらず、職業として何も効果を発揮しないという結論に至った。
国をあげたプロジェクトは、ただの一般人を一人この世に生み出しただけとなった。
「なぁ、流石にこれは可哀想じゃないか?」
小柄がそう言う。
「しょうがないだろう、こいつは居なかった事にして新しい奴召喚するっていうんだから。
バレないように捨ててこいって命令なんだし」
大柄がそれに応える。
「でもよう、コイツだって頑張ってたぜ。
このままじゃ絶対死んじまうって」
小柄がそう言いながらそっと僕の手に何かを握らせた。
感触的にナイフだと思う。
「俺は何も見てないし、どうなっても知らんからな」
大柄がそう言いながら荷馬車に乗り込んだ。
「あばよ、こんな事しか出来ねぇが、これ以上は無理だ。
あとはお前の運と努力……いや、すまねぇ、これは俺のただの自己満足なだけだわ」
それだけ言い残すと荷馬車は去っていった。
「んっ、ぐふ、ぐっ」
なんとかナイフを使って手を拘束してる縄を切る。
そして、順番に縄を切っていき自由になった。
「ふー助かった」
自己満足でもなんでも良い、このナイフを渡してくれた名も知らない小柄な兵士に僕は感謝をした。
「しかし、参ったなぁ」
幸いダンジョンにも連れて行って貰っていたのでそこそこレベルはある。
二年も生きてきた世界だから、近隣の地理も多少は分かる。
漠然としてだが生きていけそうな気はしてる。
国にバレないように遠く離れた街でひっそり生きるくらいは出来るだろう。
そう自分に言い聞かせて、気持ちを落ち着かせる。
「あーピクシーモスが出てくる時間かぁ」
真夜中になると現れるこの世界最弱のモンスターと言われているピクシーモス。
見た目は妖精のようだが、フワフワとゆっくりしか動けずサイズも手のひらサイズ程度で小さい。
モンスターじゃなくて虫だと言う人も居る。
近づくとピリピリと痺れる鱗粉を撒き散らすのであまり好かれていない。
それでも月明かりの中で見る彼女達は幻想的に見えた。
「ん?あの二匹は何をしてるんだ?」
見たまんまので言えば、体当たりをお互い繰り返してる。
喧嘩か?
お互いがぶつかり合い、やがて二匹ともヒラヒラと地面に落ちた。
なんか間抜けだなと見ている時に、急に脳内でメッセージを感じる。
『無抵抗のモンスター二体を捕捉しました。 合成しますか?』
え? あ、はい……。
『合成に成功しました。 カード化しますか?』
は、はい。
僕の手元に一枚のツルツルした手触りのカードが現れた。
それは
ピクシーモス UC
特技 痺れ鱗粉(弱)
と書かれたピクシーモスのモンスターカードだった。
モンスターを合成して強化し、それをカード化して保有する。
合成師の能力が判明した瞬間だった。
【後書き】
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品はカクヨムコン参加作品です。
カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。
長編も書いているので良ければ見てください!
https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。
よろしくお願いします。
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