消えた船
いよいよ作戦を始める時が来た。
夕方、私、遥は浜地澄都とともに集合場所の浜に来ていた。
そこにはたくさんの人々が出発を待っていた。
怪しまれることを恐れて、にい様も浜地(兄)も来ていない。
「じゃあ浜地(澄都)いくよ!」
「わかりました。
それでは船に乗れぇ!」
その合図でみんなが船に乗り出す。
全員が乗り込んだところで遥の乗る船から順番に動き出す。
「無事出発できてよかったですね!」
澄都が嬉しそうに言う。
「でも油断はだめだよ」
そう言いながら遥もかなり油断していた。
そして終始見ていた2つの目に気づかなかった。
一方その頃、
「じゃあ遥が峰山についたら木浪殿から連絡が来るんだね」
「そうです」
「じゃあそれまで将棋でも指そう」
「良いですね」
すると侍女が将棋盤と駒を持ってくる。
「よしじゃあ始めよう」
対局が中盤に差し掛かったとき、さっきの侍女がお茶と菓子を持ってきた。
「ありがとう。気が利くね」
「滅相もございません。頭をお使いになると甘いものが食べたくなると聞いたことが
あります故。」
「名をなんという」
「冬にございます。」
冬が場から退出したあと、
「結構役に立ちそうな侍女だな」
「ええ。よければ洛様の御付きにいたしましょうか」
「そうか。ありがとう」
「投了いたします。洛様も強くなられましたな。この宮津を治める日が来るのが待ち
遠しいです。」
「父上や兄上の治世を良いとは思わんが私はうまく治められるだろうか」
「洛様や遥様には民を思う心がございます。これがあれば良い統治ができますよ。
必ず。」
「わかった。そのためにもまずは私が統治者にならなくてはいけないな。」
「私も少しでもお力なになれるよう精一杯努めます」
「頼むぞ」
「はい!」
「洛様、大変です!」
浜地が血相を変えて駆け込んできた。
「なんだなんだ。騒がしい。何かあったのか?」
「木浪殿からの知らせではまだ遥様と合流できていないとのこと。そして、未だに船
すら見えないらしいです。」
「何!?本当ならそろそろ峰山につく時間ではないか。」
「はい。日が昇り木浪殿の部下が捜索をしても何も見つけられていないそうです。」
「おかしい。昨日は昼夜ともに晴れていて海は穏やかだったはず。
座礁でもしたのだろうか。」
「それでもどこにもないそうです。」
その時、
「連絡です!」
「誰からだ?」
「澄都様からです。鳥が運んできました。」
「何っ!」
「どれどれ。
聖蓮兄上、橋立の真ん中くらいまで来たところに武装集団がいるのを発見しまし
た。幸いこちらにはまだ気づいてないようなので着岸できる伊根まで船を進めま
す。誠に申し訳ありません。」
「なんと。その集団は一体誰だろう。」
「分からん。とにかく木浪殿にこの事を知らせて伊根まで迎えに行って貰おう」
「わかりました。直ぐに知らせを送ります。」
弱小領主の次男は妹とほのぼの生活が送りたい! @sagano
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