それは「母飯」。はじまりの狼煙
花恋亡
マイクチェックマイクチェック・ワン・ツー
トントントンッ。
あーあー。
はい、それでは早速講義の方を始めたいと思います。宜しくお願い致します。
この講義は少しニッチな分野になりますので退屈に感じられる方も居ると思いますが、どうか最後までお聞き頂けたらと思います。
本項の主題は「母飯」です。「母という名前の生き物」についてご説明しながら、その生態、習性などもお伝え出来たらと思います。
質問等ありましたら随時どうぞ。
少し意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はですね、私には「母」という名前の生き物の知り合いが居るんですね。
もしかしたら「私も知ってるよー」なんて方もいらっしゃるかもしれませんね。
あっそこの貴方は知ってるみたいですね。
そこの貴方は……知らない。
そちらも……知らない。
では概要からご説明しましょうかね。
まず、この生き物は元から「母」という名前ではないんですね。元々は「人間のメス=女」として生まれてきます。ここが少し難しく感じるかもしれませんね。
そうしてこの生き物は一人っ子ですね。
するとですよ、甘々の甘口で育つ事になりますよね。これは仕方のない事ですね。
かの有名なドンキなホーテのドフラのミンゴさんもこう言っています。
はい?
あっ違います違います。
ドンドンドンしてるドォンキィのドンキーなホーテのペンギンではないですね。あの方の名前は
そんなドフラのミンゴさんは「平和を知らねーガキ共と戦争を知らねーガキ共との価値観は違う」と言われてます。
そうなのです。置かれた状況に則した一定の行動や価値観が存在するのですね。
これを俗に「なるようになった進化論」などと言ったりします。私が。
その「なるようになった」宜しく育てられたこの生き物はそこそこの学歴で銀行なんかに勤めますね。
ここら辺は個体差があるかもしれませんよ。
そうして社会のオスなどを吟味していくんですね。これは行動認知学で勉強するかもしれません。
その中でこれだと決めたオスとつがいになる儀式なんかをしますよね。ただこれは昨今色々な形がありますから儀式の形式も多様化しています。
そうして儀式を終えたこの女はですね、なんやかんやありまして股から子供をひり出します。
はい、ここで「女」から「母」へジョブチェンジとネームチェンジをするんですよねぇ。これは最近解明されましたね。次のイグノーベル賞候補かもしれませんね。
この子供の誕生、それと同時に母という名前の生き物も誕生することになります。
で、まずこの時にひり出された子供は「姉さま」という生き物です。とても凶暴ですよ。近付く事はお勧めしませんね。正直言って危ないです。
DANGERがWARNINGですよ。
さらにそれから十年の時を経てまた子供がひり出されます。これが私ですね。すぽーんと出たと後に母という名前の生き物は語っておりました。
そしてですね。私の誕生から三年と少ししてこの母という名前の生き物は私を拉致し逃亡を企てますが、見事に失敗に終わります。
この時に発した有名な言葉がありますが分かりますか?
知らないですか。
そこの貴方は?
「分からない」そうですか。
答えは「お前はお母さん要らないのか!」ですね。
そして答えられない私の代わりに父という名前の生き物が発した言葉は「こんな母親なら必要ない」です。ここは「父という名前の生き物」の方の講義でも出てくるかもしれませんね。
あっちなみに姉さまという名前の生き物は母方ですね。私とは姓が違います。
拉致現場にも居合わせてなんですね。ここが少し混同しやすい箇所かもしれませんね。
そうして晴れて父という名前の生き物に育てられることになった私ですが、小学校へ上がるまでの期間に幾度となく母という名前の生き物に誘拐されかけます。
この時のやり取りがトラウマで、いつも家中の鍵がちゃんと掛かってるか確認して回るようになりましたね。計らずとも防犯意識向上になりましたね。良い事ですね。
しかし小学校へ上がるとすっかり会うこともなくなりまして、次に会った時となりますと私が高校生の時でしょうか。
お洒落をしたい年頃ですがお金がありませんよね。
それで姉さまという名前の生き物に服のお古を貰う約束をしまして、勝手に持って行けと鍵を預かりました。
この時に居ないと聞いていた筈の母という名前の生き物と鉢合わせてしまったんですよ。
その時に母という名前の生き物は何と言ったでしょう。
はいっそこの貴方。
はーんはいはい、なるほど。
「……久しぶり……」ですか。
確かにそれっぽいですね。
ではあちらの方は。ほうほう。
「……どうしたの?」ですか。
悪くないですが、どちらも違いますね。
正解は「どちら様でしょうか?」ですね。
これは今でも学会で議論されてる箇所なのですが「全く気が付かず本心の言葉」なのか「久しぶり過ぎて掛ける言葉が見つからなかった」のか未だに判明されてません。
しかしながら前者が圧倒的に支持されていますね。
この邂逅からまたしばらくの間は会う事はありません。
そうして私が社会人になって数年した頃に大きな地震がありました。
この時にですね「タンスに下敷きになってるかもしれないな」と思い訪問した事がきっかけで形だけの和解を果たします。
ここまでなのですが、他の講義と重複してる部分がほとんどなので忘れて頂いて結構です。
他の講義を受講した時に「ああそういえばそんな事言ってたな」と思って頂ければと思います。
ここからがこの講義の主題ですね。
んーと、ではここで一旦休憩を挟みましょうか。そうですね、あの時計で四十五分になったら再開します。トイレは教室を出て右奥の方です。喫煙をされる方は建物を出て頂いて、左の壁際に歩いて行きますと自動販売機の裏側が喫煙スペースになってますのでそちらでお願いします。
はい、では前半お疲れ様でした。
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