君と還らない季節

小さな貝がら

第1話

あれは 僕が社会人になって間なしの頃だった


今日は珍しく残業がなく 夕方ラッシュアワーにあった

僕は 窓際に立つのがやっとだった


電車が動き 一つ 二つ 駅を過ぎて行く


少しずつ乗客は減って来て もう窮屈な思いしなくて済んだ頃 僕の降りる駅の一つ手前で 降りようとする女の子がいた


その子は降りしな足元がふらついて 思わず僕は手を差し伸べた


あー 降りる駅じゃないのに…

無惨にも電車は発車した


(女性)「ごめんなさい 私のせいで」その子は小さく頭を下げた


(男性)「あっ 大丈夫ですよ 今日は定時だったから 電車一本待ちますよ それより大丈夫ですか?」


(女性)「あっ すいません 本当にありがとうございました」


そう言ってその子は一歩、二歩 足を運ばせた


帰るのかと思っていたのに その子はしばらくして 又 僕のところに戻って来て


(女性)「これ どうぞ」と缶コーヒーを差し出した


(女性)「電車が来るまで 一緒に飲みましょう」とその子は言った


しかし 電車を待つ間話せないまま ただ缶コーヒーを飲んだら電車が来た


(男性)「これありがとう」と空き缶を上げて電車に乗り込んだ

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