5
それから月日は流れて。
「おはよう御座います。クリスティーヌ」
あの忌まわしい女は未だに居座っていた。
「ふん」
「クリスティーヌ、挨拶をしたら返事を返さなくてはいけませんよ?」
「うっさいわねー母親じゃない癖に!」
「いいえ。私は貴女の母親です」
毎度毎度のやり取りにお父様は笑いながら『仲が良いなぁ……』と見当違いな事を言っている。
アタシ達の何処をどう見たらそう言えるのよ…全く。
彼女の方へ視線を向けると、彼女はいつもの鋭い目付きから少しだけ柔らかな顔を此方に向ける。
アンタも変な顔してんじゃないわよ。
呆れながらも朝食のベーコンエッグに銀のフォークを突き刺すと、黄身が弾けてピンクの洋服に飛び散った。
「あーー!お気に入りのお洋服がぁあ!!」
すぐさま近くにいたメイドが駆けつけようとした寸前。
彼女がすかさず駆けつけて、アタシの洋服を布巾で拭いた。
「大丈夫。すぐに洗えば落ちますよ」
優しく笑う彼女につい、口が滑ってしまった。
「あ、ありがと、ママ……」
「え?」
彼女はぱあと目を輝かせて、アタシに抱き着く。
「クリスティーヌ!」
「ハッ!ちがう、ちがーう!!ママなんて言ってないわ!!勘違いしないでよ、ちょ、離れてよぉ!?」
「はいはい。いい子いい子」
「頭を撫でないで頂戴!!」
アタシの頭を優しく撫でる彼女は、何とも嬉しそうな顔をした。
まぁ、なんだかんだ言いつつ。
彼女との生活は悪くなくってよ……?
口が裂けても言わないけどねッッ!!
終
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