九人の賢者は百年魔導戦争を終わらせたい
楪 紬木
この争いに、終止符を 「起」
「約定に
開戦。赤髪の青年が一歩前へ出て杖を振りかざし、魔法を詠唱。たちまち超高温の炎が広がり、波をうつ。二人は炎に飲まれるも。
「行儀が悪いですわね。完全に目視してから、と言ったでしょう。『
「ノロいぜ! 突っ切る! 「『
『やられた……!』
金髪の少年が、既に王冠へ向かい脱兎のごとく駆け出していた。彼の足跡から電流が走り、他の
しかし赤髪の青年も、青髪の女性も構わず大地を蹴り後を追う。
赤髪の青年は、
青髪の女性の名は、
金髪の少年の名は、
この三軍は、百年以上にも渡って戦争を繰り返していた。
それこそが「百年魔導戦争」。
世界の均衡を揺るがすほどの魔力を引き出せる「聖なる大王冠」の
三軍に集う、九人の賢者の思いは一つ。全ては王冠を手にし、望む平和を叶えるため――。
◇◇◇
レッドバロム王国。城壁に囲まれた中世的な城下町に、沢山の民衆が賑わう。王国の中央には石造りの城が居を構えていた。
城のバルコニー。ここは王国の景色を
「平和を感じる国ね……。今、戦争が起こっているなんて信じられない」
ふと、漏れ出る一言。
「絶対に、この争いを止めなくては。その為ならなんだってする」
再び、紅茶の入ったカップに手をかけようとしたが。束の間の、安らかな時間は長く続かない。背後の扉が開く。
「隊長殿! 休憩中、失礼します! 三賢会議の招集がかけられました!」
兵士の伝達。それに眉をひそめた黒髪の少女。
「……すぐ向かうわ」
三賢会議。レッドバロム王国における軍隊「
彼女は立ち上がり、跳躍。風を巻き起こしながら城の上階へと窓を突き破って、会議室へ。兵士は、やれやれと
「そうした行動は
窓ガラスの散乱する、石造りの会議室に重厚な声。円卓の椅子に座す、その青年こそ――。軍の総隊長、
赤髪に、
「魔法でいくらでも直せるわ。それより、一刻も早く作戦を練るべきよ。『王冠』の件でしょ?」
急ぐ黒髪の女性は、
と、ここでタイミング良く会議室の扉がバン、と開かれる。
「応! お、悪い悪い、ちょっと遅れちまったか?」
茶髪の男が軍服のマントを
彼は
「この会議をなんだと思っている? 国王直々の命だぞ……。はぁ、もういい。本題に入らせてもらう」
全員が、席に着いたところで。
「ここから南西部のレボルヴ荒野に『聖なる大王冠』が、
ガルムの一言に、二人は動じない。この事象は、一年前からのものだからだ。
「聖なる大王冠」。この秘宝を手にすることで膨大な魔力を得られる。誰もが、この王冠を求めて
「いつまで在るか分からん。以前と同じく、総隊長の俺と副隊長のお前達二人だけで
そう。王冠が出現する時期と土地は
「でもよ、数で攻められたらきついんじゃねぇの? やっぱ」
「いや、駄目だ。
「そうね。
結論として、肉を切らせて骨を断つ。少数精鋭で他の二軍と勝負するほかないのだ。
「次こそ我々、
竜賢者は力強く拳を握り、心の中で宿る信念を唱えた。
――争いを終わらせられるのは「
◇◇◇
聖域ユートリアム。広大で自然豊かな土地に、世界最大の都市ユートリアムが形成されていた。海が近いため、貿易がさかん。常に魔法による荷物の郵送が飛び交っている。都市の中央に高くそびえるのは結晶の塔。彫刻のごとく整った形をしており、宝石のように
塔の屋上、女王の間。凛と透き通る声が響く。
「ようやくこの時が来ましたわ。王冠が顕現したそうですわね」
玉座で
『はい。エボルヴ荒野に顕現したと魔法局から聞いております、お姉さま』
女王の問いに正面から答えたのは、メイド姿の幼い双子。一言一句、音程すらブレずに発声してみせた。
一方は、冬賢者スノウリイン。雪のように白い髪はふわりとしている。
もう一方は、氷賢者アイスリイン。さながら氷がごとき透明な銀髪。
彼女らこそ都市を守護する武装集団「
「武装集団はお休みで、
『異論なしです、お姉さま』
レイントゥリアは、ふふっと愛おしげに
「今度こそ、絶対に
海賢者は心の中で
――醜い戦争を止めるのは「
◇◇◇
薄暗い、洞窟の中。
ライブハウスの、VIP
「王冠、荒野に出たってよ。そろそろ
金髪の少年がへらへらと笑う。彼は、
「YO! 俺たち王冠いただくYO! たちまち
「
桃色の髪を左右に
彼らが
「ンなもん、俺達三人で突っ切るしかないっしょ。だってアイツ等、まだ戦えないだろーし」
この徒党は地下の生活
「……確かに、そう。なら……二軍の、対策を」
「YAー! 俺達のスピードでぶち抜くしかないKAー!」
「五月蠅い……」
「ハハ。必ず、オレ達が百年魔導戦争にケリをつけような」
雷賢者は閃くように。脳裏によぎる
――戦争を消し去るのは圧倒的な「
三軍、九人の賢者がそれぞれの想いを胸に戦地、レボルヴ荒野へ赴く――!
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