第20話 中山君は変な人

 ※11/10日に前話を700文字くらい加筆したので9日、10日の夕方くらいまでに読まれていた方は読んでもらえると助かります。



 次の日。

 妙に寝つきが悪かった私は瞼をこすりながら学校に登校しました。


『あっ、おはよう。田中さん、昨日は楽しんでくれたかな?』


 教室に入ってすぐ、たまたま扉の近くにいた春野さんに声を掛けられました。


『春野さん……。おはようございます。はい、おかげさまで新しく友達が一人増えました』


 春野さんの顔と顔を合わせたことで昨日の出来事を思い出し罪悪感を覚えましたが、私は長年培った作り笑いでそれを覆い隠しました。

 

『そっか!なら、良かったよ。田中さんは勉強が教えるのが上手いって同じグループだった子達が言ってたから、出来ればまた参加してくれると嬉しいな』

『機会があれば是非』


 幸いなことに上手く隠すことに成功。

 私は春野さんと穏やかなまま別れ自分の席に向かいました。


『おはよう、田中さん』


 椅子を引っ張たところで、中山君が私の存在に気が付き声を掛けてくれました。


『おは、おはようございます、中山君』


 いつも通りのことなのに、何故かこの時は妙に緊張してしまって思わず声が吃ってしまったのです。

 そんな私を中山君が不思議そうに見つめてきて、頬に熱が帯びるのを感じた私は顔を背けました。

 そして、鞄に入れていた教科書達を机の中にしまうと突っ伏しました。


『田中さん眠いなら寝て良いぞ。SHR始まったら起こすから』


 しばらくして、中山君が突然そんなことを口にしました。

 どうやら、私の変調が寝不足だと思われたようです。

 一応メイクで隈はちゃんと隠したはずなんですけど、なんで分かったのでしょうか?

 

(うぅ〜、恥ずかしいです)


 クラスの全員を誤魔化し切れると思っていただけに、中山君にバレたのはショックが大きく私は枕代わりにしていた鞄を思わず抱きしめました。

 でも、不思議なことに口元は緩んでいて。


『……お願いします』


 気が付けば、私はモニョモニョとした声で中山君に目覚ましをお願いしていたのでした。



『田中。これ運んでもらっていいか?』

『あっ、はい。分かりました』


 中山君のお陰で無事朝のSHRが終わり、次の授業の準備をしようとしていたところで、私は手を止めました。

 担任の本田先生から課題のノートを持って行くよう頼まれたからです。

 私はノートを運ぶべく席を立ち上がり、教壇に目を向けると大量のノートの山を発見。


(そういえば今日は二種類のノートが集められる日でした)


私がどうしたものかと遠い目をしていると、少し離れたところから『中山くーん。手伝って』と教室の端から彼に助けを求める声が上がりました。

 視線をそちらに向けると春野さんが重そうな物を抱えているのが見えます。

 中山君も私の後に続くように視線をチラッと向けた後、『……──よりやがって』と何かを呟き溜息を一つ吐きました。

 

『悪い。先約があるから無理だ』


 そして、たった一言そう言うと中山君はスタスタと教壇の前に移動し、私が運ぶ予定だったノートの山を半分抱えました。


『そんなぁ〜!?』


 中山君はガビーンと落ち込む春野さんのことを無視して、私の元までやって来ると『たしか、職員室で良いんだよな?』と話しかけてきました。


『えっ?』


 当然、中山君に手伝いなど頼んでいない私は大困惑。

 事態が飲み込まないでいると、『そうか。じゃあ、先に運んでくるな』と、中山君は勝手に話を進めて廊下の方に出ようとして、私は慌てて残りのノートを抱えて彼の後を追いかけました。


『あの、中山君、春野さんが困ってたのに助けなくていいんですか?』


 追いついてすぐ、私は中山君に春野さんについて問いかけると、目を丸くし次いでカラカラと笑い始めました。


『あぁ、大丈夫大丈夫。問題ねぇよ』

『えぇ〜?春野さんとはお友達じゃないんですか?』


 流石に友人を見捨てるのはどうかと私が遠回しに注意すると、中山君は『友達だからこそだな』と言って全く反省の素振りを見せませんでした。

 私は中山君の言っていることが理解出来ず、疑問符を浮かべることしか出来ないでいると彼は『それに』と言葉を区切ってこちらに振り向きこう言いました。

 

『田中さんの方が困ってそうだったし。流石にこっちが優先だろ』

『ッ!?』


 中山君の言葉を聞いた瞬間、私の鼓動が一気に跳ね上がりました。

 心臓がバクバクと音を鳴らし、周りの音が段々と聞こえなくなって身体の色んなところが汗が滲む。

 顔が徐々に赤くなっているのが分かります。

 でも、それはジワジワと遅く嫌な感じは全くせず、朝の時と同じように口元が緩んでいて。

 

『ふふっ、変な人ですね。中山君は』


 気が付けば私は思ったことを口にしており、それを聞いた中山君は『ひでぇ。そんなことないだろ』と抗議の声を上げました。

 それから職員室にノートを運ぶまでの間はとても和やかで私にとってはとても長く感じられました。





 あとがき

 アオハルや。

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