第14話 私はメインヒロインじゃなくてモブ
突然で申し訳ないですが、皆さんには子供の頃どんな夢を持っていましたか?
プロサッカー選手になって世界で活躍することでしょうか?
はたまた、アイドルになってテレビに出ることでしょうか?
それとも、ノーベル賞を取るような立派な学者になることでしょうか?
人それぞれ色んな夢があったと思います。
何故ならあの頃の私達は何にでも成れると何の疑いもなく信じていたから。
勿論、私もその一人でした。
『すーちゃん可愛い!』
『純香は本当に可愛いなぁ』
『うん、よく似合ってるわ。流石私の娘ね純香』
『でへへっ。ありがとう皆んな。あのねあのね、私大きくなったら
家族のお世辞を間に受けてしまった私は、自分のことが本当に可愛いのだと思い込み、分不相応な夢を抱いてしまったのです。
私がそのことに何となく気が付いたのはお恥ずかしいことに思春期真っ只中の小学四学年生の時でした。
『田中、ちょっとこの後いいか?』
『う、うん、大丈夫だけど。どうしたの?』
『ここじゃあれだからあっちで話させてくれ』
周りから誰が好き。
誰と付き合った。
そんな会話がチラホラ聞こえるようになってきた秋の半ばに、クラスで一番人気のある松風君に声を掛けられたのです。
人気の少ない体育館に連れてこられた私は、内心で大喜びしました。
当然でしょう。
松風君はイケメンで同年代の女の子達が憧れる王子様のような存在でした。
そんな松風君と付き合えるかもしれない。
だから、私が憧れていた
ですが、それはすぐに私の独り善がりな都合の良い妄想だったのだと思い知らされます。
『は、話って何かな?』
『あのさ、
『へ?お姉ちゃんの好きな人?』
そう。
松風君が好きだったのは私ではなくお姉ちゃんの方だったのです。
でも、それは何もおかしいことではありませんでした。
何故なら二つ上のお姉ちゃんは美人で運動も勉強も出来て、他人の為に身体を張れるようなかっこよくて優しい人でしたから。
校内での人気は凄まじく多くの男子から好意を寄せられているのは分かっていましたし、私はそんなお姉ちゃんを持っていることが自慢でした。
『私が聞いた限りだといないよ』
『本当か!?じゃあさ、じゃあさどんな物が欲しいとか、どんな男がタイプだとかは!?』
『えっとね──』
ですから、この時は落ち込みこそしましたが、松風君に好かれているお姉ちゃんはやっぱり凄いという納得感の方が大きくてあまり気にはなりませんでした。
けれど、これを皮切りに私の元にお姉ちゃんのことを聞きに来る男の子が増えました。
しかも、思春期が故に人前で好きな人の話をするのが恥ずかしいのか毎回人目の少ない場所に呼び出されて。
『純香ちゃんありがとな』
『はい。頑張ってくださいね先輩……。これで合計十回目。……ハハッ、私ってそんなに魅力無いのかな?』
そんなことを何回も何回も繰り返されれば、鈍い私でも流石に思い知らされました。
私は皆んなに好かれるお姫様ではなかったのだと。
お姫様だったのは私ではなくお姉ちゃんの方だったのだと。
『ううん、大丈夫。だって、私はお姉ちゃんの妹だもん。可愛いお姉ちゃんが私のことを可愛いっていつも言ってくれてる。だから、そう。大丈夫。私はお姫様になれる。お姉ちゃんが卒業したら。……きっと』
けれど、どうしてもそう簡単に夢を諦めることが出来なかった私は醜くも僅かな可能性に縋ってしまったのです。
お姫様の妹がお姫様になれない通りはないと。
ですが、現実は非常でした。
お姉ちゃんが卒業すると、私に良くしてくれていた男の子達は段々と疎遠になっていき、気が付けば困っていても助けてくれるのは女の子の友達だけになりました。
また、呼び出されることもなくなり、お姉ちゃんのいない小学校生活は何事もなく幕を閉じたのです。
中学校に上がると、私に声を掛ける人が増えました。
当然、私がお姉ちゃんの妹だったからです。
小学校の頃と同じようにお姉ちゃんの妹がどんな子なのか興味がある人や、お姉ちゃんの家族しか知らない情報を求めてくる人。お姉ちゃんとの仲を取り持って欲しいという人が沢山訪れました。
分かりきっていたどうしようもない現実。
心が折れそうになりました。
でも、お姉ちゃんが居なくなればきっと私を見てくれる王子様は現れると、私は自分に言い聞かせ何とか一年を乗り切ったのです。
けれど、私を待ち受けていたのはさらに酷いものでした。
『ねぇねぇ、田中さん。友達の冬空さんのことを紹介してよ』
『田中さんって冬空さんの友達だよね?好きなものって知ってる?』
そう。
小学校の頃はお姉ちゃんの代わりになる存在は居ませんでしたが、何と中学校には居たのです。
その子の名前は
中学一年から同じクラスで、当時私の悩みを知っていた数少ない友人の一人でした。
姉に変わって友人が学園のお姫様の座に着いたのを目の当たりにした私は、ポックリと心が折れてしまいました。
そして、理解したのです。
『純香!?ごめんなさい!私のせいで貴方のことを傷つけて』
『ううん、大丈夫です。冷乃ちゃん謝らないで。でもね、ごめんなさい。もう、私疲れちゃいました』
私は
お
だから、弱い私は
あとがき
拙者、自己評価最底辺の女の子が主人公のお陰で、徐々に自信を取り戻して最高のメインヒロインになる展開が大好き侍(多分みんな知ってる)。
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