メインヒロインより可愛いモブの田中さん
3pu (旧名 睡眠が足りない人)
ss置場
ss 料理する田中さん(六話の裏話)
「ただいま〜」
夕日がかろうじて顔を出している夕方の六時過ぎ。
部活を終えた私は家に帰宅しました。
すると、いつものように「おかえりー」と居間の方からお母さんの声と、美味しい匂いが私を出迎えてくれました。
すんすんっ、この匂いは私の大好物の唐揚げですね。
こうしてはいられません。
揚げたてを食べさせてもらうために私も手伝わなければ。
ローファーを下駄箱にしまい、私は急いで自室に入り服を着替えます。
そして、制服がシワにならないようハンガーに掛け終えたところで、一回へとんぼ返り。
「お母さん手伝うよ」
居間にいる私はお母さんに手伝いを申し出ました。
「ふふっ、お手伝いじゃ無くて唐揚げが食べたいだけでしょ。本当食いしん坊なんだから。手伝うのは良いけど、先ず手洗いうがいしてきなさいなこのお転婆娘さん」
「あっ」
しかし、お母さんにはそんな私の思惑などすっかりお見通しのようで笑われてしまいました。
さらに、ちょんと頭を突かれた私は顔が熱くなっているのを感じながら洗面所で手洗いうがいをしました。
完全に熱が冷めたところで台所に入ると、にんじんとこんにゃく、水に浸したごぼうが調理台の上に置いてあるのを発見。
これはおそらくきんぴらごぼうを作ろうとしているのだと思われます。
「きんぴらごぼう?」
「別に炊き込みご飯でもいいけど?」
「おっ、それも良いね」
「何言ってるのよ。もうご飯炊いてるんだから無理でしょ馬鹿。私揚げ物するからそっちは任せたわよ」
「はい」
お母さんに確認を取ってみると間違っていなかったようです。
私はまたほんのりと頬に熱が集まっていくのを感じながらわきんぴらごぼうを作り始めました。
ピーラーでにんじんの皮を剥き、短冊切りにこんにゃくも細くカット。
時間にして約三分。
タイムとしては少し遅いですね。
お母さんやお姉ちゃんならもっと早いのでまだまだ精進が必要そうです。
今度は自己ベストを更新出来るように頑張ろうと心に刻みながら、切った食材を油を敷いたフライパンに入れ火を点火。
にんじんとごぼうがしんなりとするまで、炒めお酒やみりんなど各種調味料を投入。
この時、我が家は甘めが好きなので少し砂糖は多めに入れています。
(中山君はどんな味が好きなんでしょう?)
よその家はどんな味付けをしているのか気になっていると、ずっと気になっている男の子のことが頭を過りました。
二年生になって初めて同じクラスになった男の子。
周りの男の子と違って少し大人びていて何処か引いたような立ち位置にいる彼は、一見クールで冷たそうですけど、凄く親切でクラスメイトが困っていたらさりげなく助けてくれる優しい人。
それは私も例外では無く、中山君には良くお世話になっています。
こんな私なんか助けても良いことなんてないのに奇特な方です。
彼の優しさなら四季姫でも骨抜きに出来るのに。
春野さんや冬空さんが困っている何も関わらず、私のことを助けてくれたのは本当に驚きました。
だからでしょう。
私がついつい中山君の事を意識しているのは。
あんな事をしてくるから私に気があるのかなと変に勘違いしそうにしそうになってしまうのです。
(どうせいつも通りそんな事はありえないのに馬鹿ですね)
「どうしたの?急に落ち込んで?」
「えっ?あっ、いや何でもないよ」
おっと、いけません。
思考が少し駄目な方に流れてお母さんに心配をかけてしまいました。
中山君のことを考えるのは止めましょう。
私はすぐに気持ちを切り替え、きんぴらごぼうを仕上げます。
これによりお母さんからご褒美を賜ることに成功したのですが、頂いた唐揚げはいつも通りなのに何故かあまり美味しく感じませんでした。
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