「人喰いキノコって……そういう事かよ」
鬱蒼としたジャングルの中を歩く俺の隣には【ゴウエン】が居る。
本戦は海上に作られたこの島でのサバイバルで、各自に与えられたミッションをクリアすると星が貰える。で、その星の数が多い順に上位16人が決勝トーナメントに出られる。
そしてミッションは一人でこなす事は出来ないので合計コスト6、合計
俺が呼んだのはとりあえず【ゴウエン】だけだ、やっぱり一番信頼出来るのはコイツだからな!
「えーっと……【人喰いキノコの謎を解け】と【キノコの大量発生を止めろ】……どっちもキノコネタだからここに来てみたけど、ぜんっぜん分かんねぇ」
キョロキョロと見渡しても視界に映るのは緑、緑、緑、赤、緑……ん?
緑がたくさんの中に明らかにおかしな赤が混ざっていて、ジーッとそれを見ていればひょっこりと赤いソレが立ち上がり、走り出した。
「え、ちょ、待て!!」
逃げ出すソレ──二足歩行する1mくらいの大きさのキノコを追い掛ける。
追いつきそうで追いつけない、そんな速度で続けられる追いかけっこをしばらくしていれば息が切れ始める。
「ま、待ちやがれ……ぜぇぜぇ」
手を伸ばしても届かなくて、足を止めて息を整えていれば真っ赤なキノコが振り返ってきた。
点みたいな目と口が軸の所に有るんだけど、ソレの口が三日月みたいに薄く裂けて弧を描いた。
それと同時に頭上から聞こえる太い何かが折れるみたいなバキバキという音……真っ黒な翼の生えた鼻の長いモンスターが今しがたへし折ったであろう太い木の枝を投げつけてきた。
「っ!!?」
いきなりの事だから、避けようとしても長い距離を走った直後の足がもつれて上手く動けない。
このままだと枝がぶつかってくる……俺一人だったら防ぐ事は出来なかった。
『──!!!』
深紅の剣閃が枝を切り払う。
俺に枝がぶつかるであろうと思って笑っていた鼻の長いモンスターの動きが止まった。
【ゴウエン】は枝を切った勢いそのままに、木の間を跳んで斬り掛かる。
あと少しで直撃はさせられなかったけども、鼻の先を切られたみたいで切られた所を抑えたままモンスターが森の奥へと飛んでいく。
「【ゴウエン】助かった!」
俺の言葉に親指を立てる【ゴウエン】
そして、俺を担いでモンスターを追いかけ始めた。
森の奥へと進み初めれば段々と辺りの景色から緑が減って、代わりに赤や黄色などの大きなキノコが増えてきた。
それらはよく見たら人間の手足が飛び出ていて、まるで人がキノコに食べられているようにも見える。
「人喰いキノコって……そういう事かよ」
チャリンと軽快な音が"ギアスディスク"から響いて、見てみれば金ピカの星マークがディスクの端に浮かんでいた。
ミッションを一つクリアしたみたいだけど、今はあのモンスター懲らしめてやりたい!
奥へ奥へと誘われてるようにも思うけども、尻込みなんてしてられっか!
キノコの山を飛び越えて、少し拓けた広場に追い詰める。
そこには倒れている人たちに真っ赤なボールを投げている鬼の仮面を付けたでっかい奴がいた。ボールが倒れている人にくっつくと、ムクムクと成長していってキノコの形になっていく……
そして広場の隅にキノコが付いた人を移動させていってから……こっちに気づいてきた。
「……また、一人…来たか」
「アンタ何してんだ!!キノコ人間作ってんのはアンタの仕業だな!?」
「……そうだ」
鬼の仮面の奴がこっちに向かって指を指すと"ギアスディスク"から通知音が響く。
チラリと目を落とせばそこには緑色の文字でエクストラミッションと書かれていた。
「エクストラミッション【菌類庭園の鬼を倒せ】……?取り敢えず、アンタを倒したら良いんだな!!」
頷く鬼の仮面の奴……もう鬼でいいか。
鬼が"ギアスディスク"を構えると、さっき俺に枝をぶつけようとしてきた鼻の長いモンスターがその背後に立つ。
「……始める、ぞ」
「「"ギアスファイト"レディセット」!!」
炎柳 百火【継承する火炎】
VS
菌類庭園の鬼【繁殖する悪意】
俺の"ギアスモンスター"は【クリカラ】でいつも通りだ。
鬼の"ギアスモンスター"はあの鼻の長いモンスターみたいだな……枝の礼をしてやらるぜ!
「俺のターン、ドロー!」
百火 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:1
残りデッキ枚数:45
「よし【烈火ネズミ】をサモンしてターン終了だぜ」
初動はいつも通りに【烈火ネズミ】を出して様子見だ。
クルクルと縦に回転しながら出てきた、背中が燃えている赤いネズミはやる気満々といった感じで一鳴きしている。
「赤か……俺のターン、ドローせずにカウンターブースト」
菌類庭園の鬼 第一ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:2
「……アーティファクト【衰退の
発動と同時にむしむしとした湿気が強くなり、地面から小さなキノコがどんどん生えてくる。
【烈火ネズミ】はヌメヌメしているキノコが嫌なのか、俺の足を駆け上がって肩の所にちょこんと避難してきた。背中の火の勢いを弱めてきて一応は遠慮しているらしいけども……結構熱い。
「……【衰退の
黒い傘の部分に沢山のつぶつぶが付いた二足歩行するキノコが生えてくる……やっぱり目と口が点みたいになっていて、なんかのゆるキャラみたいにも見えてくる。
「……手札から、アーティファクト…【
【
緑・黒 コスト:2 アーティファクト・天狗
相手がカードを破棄する度にこのアーティファクトに毒素カウンターを破棄した枚数だけ乗せる。
一ターンに一度、このカードに乗せられた毒素カウンターを全て取り除く事で相手のデッキの上から順に取り除いた毒素カウンターの数までカードを破棄する。
今度は大きく傘の開いた白っぽいキノコだ……どんどんと増えていくキノコ型アーティファクト。
どう攻めてくるのかと身構えた俺の耳に飛び込んできたのはターン終了という言葉だった。
「って、モンスター出さねぇのかよ!?手札事故……なわけないよな」
「…………」
ずっこけそうになる俺と対照的に動く気配のない相手に違和感を感じながらも、俺はターンを進めた。
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