「なんだコイツ」


「【豊穣の子狸ハーベスティア・リトルラクーン】をサモンするっぺ」



豊穣の子狸ハーベスティア・リトルラクーン

緑 コスト:1 野獣・繁栄

A:1 B:1


このモンスターがサモンされたターンの終了時に発動出来る。

このモンスターを手札に戻して、デッキの上から五枚を見る。その中から豊穣ハーベスティアと名の付くカードを一枚手札に加える。



糸目の少女が出したのはサーチ付きの小型モンスター。

神牙ジンガのデッキは対処法は簡単だ。奴の準備が整う前にライフを削り倒す。【シロテングタケ】の効果でライフを稼がれ始めると削り倒すのは不可能になるが、それ単品ではデッキを削るのは不可能であるし、より大量に破棄できる【ベニテングタケ】の方はそのデメリット効果で奴は基本的にモンスターを場に出せない……まあ、アイツのデッキには"ギアスモンスター"以外のモンスターはいないがな。



「このままターンを終了して【子狸リトルラクーン】の効果発動するっぺ!この子を破棄して、デッキの上から五枚見て……【豊穣の巫女ハーベスティア・メイデン】を手札に加えるっぺな」


「……俺のターン、ドロー」



鬼丸 第二ターン

ライフ:10

手札:4 ターンカウンター:2



手札を少し見て、悩む神牙ジンガ

チラリと糸目の少女の表情を伺うと、一枚のカードを切った。



「……アーティファクト【衰退の菌類楽園ファンガスガーデン】を発動する」



【衰退の菌類楽園ファンガスガーデン

緑・黒 コスト:2 アーティファクト・衰退・天狗


一ターンに一度、発動出来る。

自分の場の菌類ファンガスと名の付くアーティファクトと同じ名前のアーティファクトをデッキから一枚発動する。

このアーティファクトが破棄された時、自分の場の菌類ファンガスアーティファクト全てを破棄する。



押し切るつもりだな。

効果でデッキから二枚目の【ベニテングタケ】が発動される……糸目の少女のデッキは緑だからターンカウンターを増やす機会が多い。【シロテングタケ】を増やして守りの方を固めるかと思ったが……確実に削る方向にしたようだ。



「ターン…終了だ……」


「モンスター来ないっぺ……わたすのターン、ドローせずにカウンターブーストだっぺな」



翠子 第二ターン

ライフ:10

手札:5 ターンカウンター:4

残りデッキ枚数:41



「【ベニテングタケ】の効果が……二回発動して、合計四枚……破棄だ」


「ぴゃあああ!?【地鎮祭】破棄されちゃったっぺ……でも、まだ頑張るっぺ!【豊穣の巫女ハーベスティア・メイデン】をサモンしてデッキから【豊穣の社ハーベスティア・サンクチュアリ】を手札に加えて発動だっぺ!さらに【豊穣の呪い師ハーベスティア・ソーサレス】をサモンだっぺ」



豊穣の呪い師ハーベスティア・ソーサレス

緑 コスト:2 人・繁栄

A:1 B:1


このカードがサモンされた時、自分の場のカード一枚に豊穣カウンターを1乗せることが出来る。



ふむ、【サンクチュアリ】の効果で自分のモンスターを強化してダメージを稼ぐつもりか……だが、一枚だけにしか乗せられないから【シロテングタケ】でその攻撃を封じられるがどうする?



「【豊穣の社ハーベスティア・サンクチュアリ】にこれでカウンターが三つ乗ったっぺな。バトル行くっぺ!【豊穣の巫女ハーベスティア・メイデン】と【豊穣の呪い師ハーベスティア・ソーサレス】で攻撃だっぺ!」


「……【呪い師ソーサレス】の攻撃に、【シロテングタケ】の効果を……使う。攻撃を無効に……そして、デッキそちらのデッキの上のカードを一枚破棄する」


「破棄されたのは【豊穣の慰霊祭】だっぺ……」


「……では、そのコスト分……互いのライフを三点回復する。そして……【タマゴテングタケ】の効果で一枚、デッキの上のカードを破棄する……」



神牙 ライフ:10→9→12


翠子 ライフ:10→13



これで残りデッキは三十四枚……ダメージレースは微妙だな。緑の大型モンスターが【シロテングタケ】の効果に当たればそれだけで追いつけなくなるが今の所墓地には大型モンスターは見えていない。手札に既に抱えているなら次のターンが仕掛け所だろうが……神牙ジンガもそれは分かっているだろう。



「……俺のターン、ドローはせずにカウンターブースト」



鬼丸 第三ターン

ライフ:12

手札:3 ターンカウンター:4



ターンカウンターは4、という事はアイツのデッキの唯一のモンスターがお出ましだ。



「……誓約コントラクトサモン、化かし騙せ漆黒の毒翼【衰退の起源菌類オリファンガスオニテング】」



【衰退の起源菌類オリファンガスオニテング】

緑・黒 コスト:4 衰退・天狗

A:0 B:4


このモンスターが場にいる限り、自分の場の菌類ファンガスアーティファクトは破棄されない。

このモンスターは相手のカードの効果では選べない。

一ターンに一度、自分の場の菌類ファンガスアーティファクトの枚数分だけ相手のデッキの一番上のカードを破棄する。



「……【オニテング】が出たことで【ベニテングタケ】は破棄されるが、【オニテング】の効果で……破棄はされなくなる、からこのまま置かれる。そして……アーティファクト【猛毒菌類ポイファンガスイボテングタケ】を発動……【菌類楽園ファンガスガーデン】の効果で、デッキから【イボテングタケ】をもう一枚出す」



猛毒菌類ポイファンガスイボテングタケ】

緑・黒 コスト:1 アーティファクト・天狗


このアーティファクトが存在する限り、菌類ファンガスと名の付くカードの効果で破棄される枚数は+1される。

このアーティファクトは自分の場にモンスターが出た時に破棄される。



これは……【イボテングタケ】は二枚だから破棄枚数は実質+2で、二枚の【ベニテングタケ】の効果と合わせるとターンカウンターを最小限の数増やしても六枚破棄か……しかも"ギアスモンスター"である【オニテング】がいるから直接ライフを削る事も今は出来ない……緑デッキの対象を選ばない除去手段は一枚だけあるが、それを握っているかは分からないな。



「……【オニテング】の効果で、俺の場の菌類ファンガスアーティファクトの合計……六枚と【イボテングタケ】の効果を合わせて八枚、破棄だ」


「で、デッキが薄っぺらくなってきたっぺ……」


「………………」



これで糸目の少女のデッキ枚数は二十六枚……およそ、スタート時の半分くらいか。

私のデッキだと、この大量破棄は寧ろ追い風になるから相性がいいが……普通のビートダウン系ならば戦略を虫食いにされているような物だ。

普通ならこの辺りで神牙ジンガを睨んだり諦めの表情を浮かべるが……糸目を精一杯開いて、瞳をキラキラさせているな。なんだコイツ。



「すごいっぺ……!こういう戦略もあるんだっペな!」


「……ああ、俺はあまり……争う事が好きではない、から……これなら、攻撃しなくても勝てる……」


「そういう思想か、ええやん。一本、筋通しとって、モンスターも殴り勝つ系ちゃうし徹底してんなぁ」



女性二人に褒められて照れているのか俯いている神牙ジンガ……耳が赤いのが見えているな。

外を見れば小さな、それこそ小バエのような大きさの機械が窓の近くを飛んでいる事に気づき、ほんの少しだけ窓を開けた。

携帯端末で惹琴マネゴトと連絡を取り、コイツらの動向を探る為の超小型ドローンを飛ばしてもらった。これで、私たちとコイツらが別れてもその動きは筒抜けになる上に赤の英雄を持った子供がどこにいるのかも分かるだろう。



「た、ターン終了……だ」


「行くっぺ!わたすのターン、ドローだっぺ」



翠子 第三ターン

ライフ:13

手札:5 ターンカウンター:5

残りデッキ枚数:25



「【ベニテングタケ】二枚と……【イボテングタケ】二枚の効果の合計で、六枚破棄だ」


「だ、大丈夫だっぺ……!豊穣カウンターを一つ取り除いて……【豊穣の祭神ハーベスティア・フェスゴッドオオモリサマ】をサモンだっぺ!【豊穣の社ハーベスティア・サンクチュアリ】に豊穣カウンターを一つ乗せて、効果で【オニテング】をパクパクして破棄だっぺ!」



持っていたか、全体破棄効果カード……!打点は1、1、5で【シロテングタケ】の効果次第だが【オオモリサマ】を止めるとしたら【サンクチュアリ】の効果を入れて5点ダメージ。次のターンでさらにモンスターを展開しても微妙に打点が足らんな……



「……それで、終わりか?」


「まだだっぺ!スペルカード【豊穣の祈りプレイオブハーベスティア】発動だっぺ!対象は【豊穣の巫女ハーベスティア・メイデン】!!」



豊穣の祈りプレイオブハーベスティア

緑 コスト:4 スペル・繁栄


自分の場の豊穣ハーベスティアモンスター一体を選択する。

そのモンスターのAアタックBバイタルを自分の場の豊穣カウンターの数だけ自分のターン終了時まで上げる。

その後、同じ数字だけ選択したモンスター以外の豊穣ハーベスティアモンスターのAアタックを自分のターン終了時まで上げる。



跳ね上がったな……打点。

これで勝ちの目が糸目の少女にでてきたが……だが、私と同じ教団聖剣士ホーリーエッジである神牙ジンガがこのまま押し切られるわけが無い。



「バトルだっぺ!」


「この瞬間……スペルカード【衰退の呪い】を発動する」



【衰退の呪い】

黒 コスト:2 スペル・衰退


相手の場のモンスター一体のAアタックBバイタルを2下げる



「……【豊穣の呪い師ハーベスティア・ソーサレス】を選択する」


「ぴゃあああ!!?」



その後は、攻撃をするも【シロテングタケ】の効果がチラついて【サンクチュアリ】の効果が使えず、五点を与えるだけで終わる糸目の少女を返しのターンできっちり、デッキを削りきった神牙ジンガがデッキデスで勝利した。



「"神牙ジンガ"お兄さん強かったっぺ〜」


「…………そう、か」



ニコニコしている糸目の少女に大してバツが悪そうに視線を逸らしている神牙ジンガ

駆魔カルマとはまた違うタイプだからな……接し方が分からんのだろう。気持ちは分かる。



「なあなあ、メガネの兄ちゃんの所、もしかして強いサモナー揃ってるん?ゴツイ兄ちゃんの勝ち、疑って無かったみたいやし……メガネの兄ちゃんがデッキ持ってきてへんのが残念やわーほんま残念やなー」



含みを持たせた言葉で関西弁女が話しかけてくるが、鼻を鳴らして返事はしない……この手の類のは1話しかけると10で返ってくるからキリがない。



「なんや、つまらんのう……だからお前は何も上手く行かへんねん」


「何か言ったか?」


「何もー?」



最後に何かをボソッと呟いていたが上手く聞き取れなかった……まあいい、どうせ大したことでは無いだろう。







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