TCG販促アニメでどう足掻いても敵役の私が開き直って悪役RPをエンジョイするお話
木津 吉木
シーズン1ー日常編ー
「これが私のいつものプレイスタイル」
──世界は一枚のカードから生まれた
なんて話をしたら笑い飛ばされるか頭の心配をされるのが普通です。
ですが、今世ではそれが世間一般の常識として浸透しているのです。
正確にはカードはカードでも"ドレッドギアス"というTCGのカードから産まれたとの事です。
私は現代日本で真っ当に生きていた人間です。歳を重ね、恐らく寿命でぽっくり死んだと思った次の瞬間には赤子となってこの世界に産まれ落ちていました。
カード……否、"ドレッドギアス"至上主義のこの世界は現代日本とはよく似ていますがそこかしこに"ドレッドギアス"が生活の一部として組み込まれていました。
サブカルチャーには生前親しんでいたのでこれが転生である事、そしてこの世界は"ドレッドギアス"というカードゲームの販促アニメ世界なのだということは何となく分かりました。
そして、自分がどのポジションになっているのかも。
──たった一枚だけ存在していたそのカードは相棒を求めて人間を作り出そうとし、その人間が生きていく土壌として宇宙を……世界を作り上げた。
──初めて誕生した人間とそのカードはやがて世界に秩序をもたらし、世界に命が溢れた頃に姿を消した。
その後、その人たちがどうなったかは誰も知りません……というのが世間に知れ渡っている内容ですが私が教えられた内容は少し違います。
──たった一枚だけ存在していたそのカードは相棒を求めて人間を作り出そうとし、その人間が生きていく土壌として宇宙を……世界を作り上げた。
──初めて誕生した人間とそのカードはやがて世界に秩序をもたらし、世界に命が溢れた頃に
──彼らはやがて目覚めるだろう、世界に繁栄と希望をもたらす為に……彼らが目覚めた時に全ての悪は消え去る、だからこそ我々は正義を成さなければいけない。悪と見なされない為に。
そう、やがて来る救世主伝説として話を変えられたそれはそのまま
・善行を成す為に努力しなさい
・悪を許してはいけません
大まかに言うとこの二つが教義で、ここで言う悪とは元々は犯罪者とかそういう者たちの事でしたが……今は教団外の人間、特に教団の敵対者の事となっています。
……もう勘の良い方はお気づきでしょうが私は教団に所属している人間です。階級としては……
「──様!大司教様!大変です、叛徒が教会内へ……ギャヒン!?」
騒がしい声と共に礼拝堂に入った信徒の一人が悲鳴と共に地面へ叩き伏せられています。
それをしたのは黒髪を足首近くまで伸ばしている目つきの鋭いロングコートの青年です。
「
「……ええ、そういう貴方は一体何者でしょうか?」
「今から10年前に貴様ら教団が引き起こした事件で死んだ
そう言ってキョウマくんが取り出したのはおどろおどろしい黒色の金属球。それを地面に叩きつけると同じ色の煙が吹き出して私と彼ごと、辺り一帯を飲み込みます。
これは"闇のサモナー"がよく使う結界のような物で、内部の人間は"ギアスファイト"を行わないと出ることは出来ずしかも決着が着いたら敗北者に時には死に至る程の苦痛を与えるという呪物です。
これを使うという事はまあ、キョウマくんは"闇のサモナー"なのでしょう……正直、ウチの教団の犠牲者家族という事でかなりやりづらいですし、十中八九主人公ポジションな子がいたらその子のライバルになりそうな感じです。
「構えろ!!俺が貴様らの死神だ!!」
「私の前で神を名乗りますか……その傲慢の報いを知りなさい」
ノリノリな相手に思わず悪役ムーヴで返してしまいます……いやだって、仕方ないでしょう?これで冷めた対応をしては彼が可哀想ですもの……
「「"ギアスファイト"レディセット!」」
キョウマくんは左腕に、私は右腕に取り付けられたディスクが反応して立ち上がり光を放ちます。
それと同時に互いの背後に人影が現れます。
"ギアスモンスター"と言われるデッキに一枚しか入れられず、開始時に互いに公開する言わば切り札的カードです。
キョウマくんの背後に立つのは銀色の髪にひと房の赤い髪が特徴的な剣士のようなモンスター。
私の背後に経つのは全身白づくめでこれまた白い仮面を被ったこれまた白いローブの怪人です……まあ、私の服装も似たようなものですが。
白掟 優義徒【白き使徒】
VS
黒鉄 恐馬 【血濡れの復讐譚】
「「スタートアップ!!」」
その言葉と共にディスクにしまわれていたデッキからカードが五枚飛び出して手札となります。
先行は……キョウマくんですね。
「俺のターン、ドロー!」
恐馬 第一ターン
ライフ:10
手札:6 ターンカウンター:1
「【
【
黒 コスト1 野獣・血
A:1 B:2
このモンスターが場を離れた時、ライフを1支払って相手の手札をランダムに一枚破棄する
血濡れの名に相応しい真っ赤な液体が滴る大きな黒犬が場に現れます。
"ドレッドギアス"は互いのターンカウンターが召喚コストになっていて、モンスターの召喚はそのターンカウンター内のコストでやりくりしないといけません。
因みにモンスター以外のカードはターンカウンター以下の数字であれば何枚でも使用可能です……まあ、同名カードは一枚までですが。
「私のターン……ドローはスキップしてカウンターブーストです」
優義徒 第一ターン
ライフ:10
手札:5 ターンカウンター:2
最初のターンのドロー権利を放棄する事でターンカウンターを一個上乗せする事が出来ます。この場合、私は一コストではなく二コストまでモンスターをサモンする事が出来るようになります。
「強気だな……余程良い手札だったようだな」
「私は一コストの【敬虔な信徒】を二枚サモンしてアーティファクト【大聖堂】を起動します」
【敬虔な信徒】
白 コスト:1 人間・信者
A:0 B:3
このカードが破棄された時、場に信者モンスターが存在するならばデッキからコスト4以下の信者カードを一枚手札に加える。
【大聖堂】
白 コスト:2 アーティファクト・建造物
このアーティファクトが存在する限り、場の白の信者モンスターが受けるダメージは常に-1される
使徒モンスターが場に出た時に手札が0の場合、デッキから信者カードを一枚手札に加えることが出来る。
真っ白なフード付きローブを被った人々の集団が二つ現れ、そして神聖な空気を纏った聖堂がその信徒達を守るように半透明の状態で現れます。
アーティファクトは常に場に存在する事で効果を発揮するカードです。
このカードと壁となる信徒達を置くのが私のデッキの初動ですね。
先行は攻撃を行う事が出来ませんが、私は後攻です。攻撃は解禁されていますが普通なら
「アタックフェイズです【敬虔な信徒】で【
「
【
黒 コスト:1 スペル・血
自分の場の黒のモンスター一体を破壊し、その元々の
「やはり能動的に動かすカードは持っていたようですね……ですが、カウンタースペル【白き制裁】を発動します」
【白き制裁】
白 コスト:1 スペル
相手がスペルカードを発動した時にそのコスト以上の白のモンスターが自分の場に存在する時に発動出来る。
そのスペルカードの発動と効果を無効にして破棄する。その後、自分の場の白のモンスターを破棄したスペルカードのコスト以上になるように破棄しなければならない。
「白お得意のアンチプレイカードか……!!」
「相手に何もさせない事こそが勝つ為の近道ですからね……【
黒犬が放った赤黒い咆哮を信徒の集団の一つが祈りを込める事で消し去りました。
その代償として信徒の集団は一人また一人と姿を消し、最後の一人がこちらに一礼をするともう一つの信徒の集団が嗚咽を漏らす。
その声に惹かれ、デッキが輝くと一枚のカードが私の手札に加わりました。
「このカードは破棄された時、デッキからコスト4以下の信者カードを手札に加えます。私が加えるのは【
信徒達は黒犬に向けて石を投げつけるが、犬はそれを軽々と避けて吠えます。
それにイラついたのか信徒達は再び祈りを捧げます。
「攻撃終了時にスペルカード【封魔の祈り】を発動します」
【封魔の祈り】
白 コスト:2 スペル・信者
このスペルは信者モンスターがバトルを行ったターンにのみ発動出来る。
信者モンスターとバトルした相手モンスター一体を選択して封印する。
黒犬は祈りに苦しみ、やがて色素を失って真っ白の状態となって石のように動かなくなりました。
「【
「封印状態となったモンスターはコントロールするプレイヤーのドローフェイズ前にターンカウンターを一つ消費する事で封印から解放されますが、封印状態のままのモンスターは攻撃も防御も、能力の使用やその対象になる事も出来ません」
これでキョウマくんにこのターン選択肢が生まれました。
【
「私はこれでターン終了です。さあ、貴方はどのような選択を行いますか?」
「愚問だな、俺のターン!!俺は【
恐馬 第二ターン
ライフ:10
手札:4 ターンカウンター:2
黒犬に色素が戻り、遠吠えが響き渡ります……ふむ、そのルートで来ますか。
「俺は【
【
黒 コスト:2 人・血
A:3 B:1
このモンスターが場に出た時、自分の場の血モンスターを一枚破棄してその
赤黒い液体にまみれた男が現れたかと思うと近くにいた黒犬の首を斧ではね、その血を美味そうに飲み干しています。
そしてはねられた首はそのまま私の手札に噛みついてきました。
「【
恐馬 ライフ:10→9
「そうですね……まあ必要経費です」
「減らず口を……!
奇声をあげて血にまみれた男が信徒達を斧で斬り伏せていきます。スプラッター映画のような血飛沫が飛び散り、それを浴びて男は恍惚の笑みを浮かべています……正直、怖いですね。
「まだ終わりではない!スペルカード【血の晩餐】を発動!」
【血の晩餐】
黒 コスト:2 スペル・血
相手モンスターが場から破棄された時に使用出来る。
自分は破棄された相手モンスターの元々の
恐馬ん ライフ:9→12
「黒の汎用札ですか……これで犬さんの効果で消費したライフを回復したという事ですね」
「俺はこれでターン終了だ、手札0の状況からどうする大司教!」
「どうもしませんよ、私は私の動きをするまでですから」
布石は打ってありますし、まあ行けるでしょう。
「私のターン、ドローフェイズをスキップしてカウンターブースト」
優義徒 第二ターン
ライフ:10
手札:0 ターンカウンター:4
「ッ!?貴様、手札が0なのを分かっているのか!!?まさかわざと負けるつもりじゃああるまいな!!?」
「まさか?これが私のいつものプレイスタイルなだけですよ」
私が指を鳴らしますと、ディスクの破棄されたカードが送られる場所が光り輝きます。
そこから一枚のカードが手札に加わり、それを場へと出します。
「墓地の【
「なんだと!?」
【
白 コスト:4 使徒・信者
A:3 B:3
このカードが墓地に存在しており、さらに相手の場に黒のモンスターが存在する場合墓地からサモンする事が出来る。この効果でのサモンはこのカードが墓地に送られたターンには行えない。
このカードは黒のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このカードはターンカウンターが8以上の時に場から破棄する事で【
煤けた白いローブを纏った黒髪の青年が現れると天から巨大な鎌が降ってきます。それを慣れた手つきで掴むと軽く振り回してから血まみれの青年に向けました。
「【大聖堂】の効果を発動します。使徒モンスターが場に現れたのでデッキから信者カードを手札に加えます……【
【
白 コスト:3 スペル・信者
自分の場に使徒モンスターが存在する時に使用出来る。
自分の場の使徒モンスターのコスト以下となるようにデッキから信者モンスターを一体場に出せる。
「さあ、おいでなさい【
【
白 コスト:4 使徒・信者
A:3 B:3
このカードが場に出た時、カードを1枚ドローしてさらに相手の場に青のモンスターがいるならば相手の手札を一枚選んでデッキの一番下に戻すことが出来る。
このカードは青のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このカードはターンカウンターが8以上の時に場から破棄する事で【
水色掛かった白いローブを着た青い髪の女性が手に持った杖を振るうと私のデッキが輝き、その1番上のカードが一枚手札へと加わりました。
そして相手の場を見て困ったような顔をしてから杖を構えます。
「今度は青……まさか、貴様のデッキは!!」
「ええ、私のデッキは
私のデッキは相手の使う色を見てそれに対応した【
使徒達の最低コストは4、故に最速でターンカウンターを4まで上げる必要がありました。
「アタックフェイズ【
血にまみれた男が奇声をあげて煤けたローブの青年へと襲い掛かるがその見に纏っていた血が全て青年の鎌へと吸い取られていきます。
血の熱狂から醒めた男は恐怖し、動きを止めた刹那にローブの青年が振るう鎌がその首を刈り取っていきました。
そして青髪の女性が杖へと魔力を込めて水の塊を作り出すとそれをキョウマくんへぶつけます。
「【
「グッ……!」
恐馬 ライフ:12→9
「これでターン終了です」
「(【カマエイドス】……黒メタのカードだが穴が無いわけじゃあない)俺のターン!ドローフェイズをスキップしてカウンターブースト!!」
恐馬 第三ターン
ライフ:9
手札:2 ターンカウンター:4
「【
【
黒 コスト:3 人・血
A:1 B:1
このカードがサモンされた時、墓地から【
この効果で出されたモンスターはそのターン終了時に破棄される。
赤黒い液体を滴らせた陰気な女性が現れると、腕を組んで何かを呟き始めます。
すると地面が割れてそこから血にまみれた男が這い上がってきてそのまま陰気な女性を切りつけました。
「【
先程女性を切りつけた斧が私へと投げつけられます。ディスクで受け止めますが、かなり怖いですね……
優義徒 ライフ:10→6
「追撃だ!スペルカード【
【
黒 コスト:4 スペル・血・犠牲
自分の場の黒のモンスターを一体破棄する事で発動出来る。
破棄したモンスターの元々の
私のディスクで跳ね返った斧が血にまみれた男の腹部を切り裂きました。
男はそれの何がおかしいのか笑い狂いながら自分の腹部に腕を突っ込んで辺りに自分の血を撒き散らしました。
その血を浴びた煤けたローブの青年と青髪の女性は苦しみ、そのまま消えていきました……なるほど。
優義徒 ライフ:6→3
恐馬 ライフ9→6
「黒のモンスターがいなければ【カマエイドス】は蘇生しない……考えましたね」
「俺はこのままターン終了だ、半端なメタで俺が止められると思うなよ」
「ふふふ……威勢の良い事です。私のターン、ドローフェイズをスキップしてカウンターブースト」
優義徒 第三ターン
ライフ:3
手札:1 ターンカウンター:6
ちらりと背後の白いローブの怪人に視線を送るが彼は鼻を鳴らすだけで他に反応を示してくれません……どうやら、キョウマくん程度では自分が出るまでも無いとの事ですね。
「私は【聖なる導師】をサモンします」
【聖なる導師】
白 コスト:2 人・信者
A:1 B:2
このモンスターが防衛を行う時に場に【大聖堂】が存在する場合、
金髪のシスターが祈りを捧げるように手を組んで跪きます。
手札的に出来ることがこれくらいしか無いのですよね……後ろの人がやる気を出してくれたら良かったのに。
「これでターン終了です」
「面倒なモンスターを出したな……だが、俺のターン!ドロー!」
恐馬 第四ターン
ライフ:6
手札:1 ターンカウンター:5
キョウマくんがドローをした瞬間、紫色のオーラが彼から放たれます……来ますか。
「俺は"ギアスモンスター"【
【
黒 コスト:5 人・血
A:5 B:5
このカードがサモンに成功した時、自分の手札を一枚破棄する事で相手の手札を確認し、一枚選んだ破棄することが出来る。
このカードがバトルを行い、勝利した時にこのモンスターの
このモンスターは破棄されたターンの終了時に墓地から場に出すことが出来る。
キョウマくんの背後に立っていた銀色の髪にひと房の赤い髪が特徴的な死神のようなモンスター──【
"ギアスモンスター"をサモンする事を
こうして呼び出された"ギアスモンスター"
がいる限り、例えダイレクトアタックが可能だとしても"ギアスモンスター"を攻撃しなければいけません。切り札にして最後の盾とも言えるモンスターが"ギアスモンスター"なのです。
【ハムレット】は腰に下げていた細剣を抜き放ち、私に切っ先を向けますが不服げに肩を竦めています。
「貴様の手札が無いからサモン時の効果は無しだ。行くぞ、バトルだ!ダイレクトアタック!!」
私に向かって飛ぶような勢いで走る【ハムレット】
突き出された細剣の前に金髪のシスターが身を差し出します。
「【聖なる導師】で防衛、その効果で彼女の
「無駄だ!!【ハムレット】の貫通攻撃を受けてもらうぞ!」
聖なる光が金髪のシスターに力を与えますが、復讐鬼の刃はそれを容易く貫いて勢いは減じましたがそのままシスターごと私を串刺しにします。
優義徒 ライフ:3→2
「……これでターン終了だ」
「流石に削れてきましたね……ですが、一手遅かったみたいですよ。私のターン、ドローフェイズはスキップしてカウンターブースト」
優義徒 第四ターン
ライフ:2
手札:0 ターンカウンター:8
四度目ともなるとキョウマくんも慣れた様子です。
指を鳴らして墓地から【カマエイドス】をサモンする動きにも微動だにしません。
「そのモンスターの効果では【ハムレット】は突破出来ない……次のターン、俺が追加のモンスターをサモンすればそれで貴様は終わりだ」
「獲物を仕留める前に舌なめずりですか?随分と悠長な事ですね」
【カマエイドス】が鎌を捨て、その場で祈りを捧げます。
すると、漆黒の光が天から降り注いで彼を貫きます。
「ターンカウンターが8以上の時に【カマエイドス】は進化するのです、おいでなさい【
【
白・黒 コスト:8 使徒・天使
A:6 B:6
このカードは【
このカードは相手の場または墓地に黒のカードが存在する場合、墓地からコストを4扱いにしてサモンする事が出来る。
このカードは相手の黒のカードの効果を受け付けず、黒のモンスターとのバトルでダメージを受けない。
このカードが場に出た時、コストが8以下になるように相手の場の黒のカードを封印する事が出来る。
漆黒の光の中から黒い六枚の翼を生やし、金の鎧を纏った【カマエイドス】が姿を表します。
その手に持つ大鎌もより凶悪な形へと変わっていて、一振りするとその衝撃で【ハムレット】から色素が失われて動きを止めます。
「【ハムレット】!!?」
「【カマエル】の効果でコストが8以下になるように相手の場のカードを封印する事が出来ます……因みに、この子は黒のカードのあらゆる効果を受け付けません」
「なん……だと…!?」
くるりと大鎌を回しゆっくりとキョウマくんへ近づく【カマエル】……恐怖を植え付ける為に。
「……【カマエル】やりなさい」
恐馬 ライフ6→0
ギアスファイトが終わった事で私達を覆っていた煙は掻き消えました。
キョウマくんは倒れたままピクリとも動きませんが……脈を確認すれば生きている事が分かりました。
「大司教!ご無事ですか!!?」
「ええ、私は大丈夫ですよ……被害はどうなっていますか?」
司祭の一人が私へと駆け寄ります。
よく見れば周りには心配してくれていたであろう司祭や信者の方たちがいますね。
「は、はい!設備の一部が壊れていますが怪我人はいません!」
「そうですか……」
「それでその……この男はどうしましょうか?」
「……このまま、教会の前に捨てて置いて下さい」
私の言葉に周りの人々が驚き、息を飲みます。
『てぬるいですよ、もっと痛めつけるべきです!』『少なくとも設備の修繕費は出させないと!』『こいつのカード売っぱらいましょう!』
といった声を掛けられますが
「彼一人でここまでの事が起こせると思いません……裏にいる者をあぶりだす為ですよ」
ニッコリと微笑んでそう言えば人々は口々に私への感嘆の言葉を口にしてキョウマくんを抱えて出ていきました。
「……はぁ」
独り残された私は礼拝堂の床に座り込ます……思わず溜め息も漏れてしまいました。
思った以上に馬鹿な信者達に私へのゴマすりばかりの司祭達の相手は疲れます……それこそ、キョウマくんとのファイトよりも。
明らかに私の立ち位置は悪の組織のボス、またはその手の者です。教団も裏ではかなり悪どい事をしているのは知っています。
ですが世襲により今の地位を得た私はお飾りの大司教です。言った所で裏で行われている事は止められません。
だから、私は開き直りました。どうせ、主人公ポジションの人がいつか私ごと教団を終わらせてくれるでしょう。
その日まで私は楽しむ事にしました。
折角の悪の親玉ポジションなんですから、楽しまないなんてもったいないです。
ああ……神様、どうか私に相応しい終わりを下さい……
そうして祈りを捧げる私は傍から見れば熱心な聖職者に見えるのでした。
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