ママ活始めたら小さい頃に結婚の約束をした両隣に住む美人お姉ちゃん二人(アラサー処●)がなりふり構わず襲い掛かってきた
せせら木
第1話 大学に入ったら自動的に彼女ができると思ってた
大学生になれば自然と彼女ができる。
僕――
だってそうだ。
華やかなキャンパス、人生の夏休みとも言われるほど自由な毎日、バイト、サークル、垢抜けた女の子たち。
どの情報媒体を見ても、そんな感じの謳い文句や写真を貼り付けていたし、『大学生の時は死ぬほど遊んでおけ』みたいな、もういくら遊んでも許されますよ感を各所で出しているから、当然課題やテストに追われていた僕としては、大学生活に夢を見てしまう。
早く大学生になりたい。
大学生になって可愛い彼女を作りたい。
そんなことばかり考えながら、得意でもない勉強をしていたんだ。
……で、それから時間も経って、僕は晴れて今年の四月から大学生になった。
今が十月だから、入学して既に半年ほどが経過した計算になる。
時間の流れとは早いものだ。
一応、努力の甲斐あって第一志望の学校にも入れたし、その点において不満はない。
友達作りに関しても、バドミントンサークルに入って、同級生や先輩との繋がりもそこそこできた。
学業の方も程々にこなして、バイトも漫画喫茶で週三回ほど入ってる。だいたい月五万円ほど稼いでて、実家暮らしだし、お金に困ることも特には無い。
不自由のない生活だ。
たぶん、これ以上を望んだら罰が当たる。
僕は今、すごく恵まれてる。
恵まれてる……恵まれてる……。
うん。恵まれて……、
「――るわけないじゃん!? 何だよ! 何なんだよ!? 大学生になったら誰でも彼女できるんじゃなかったの!? 入学して半年経つのに、僕まだ女の子とデートにすら行ったことないよ!? 嘘つきじゃん! 大嘘つきじゃん! 誰が言ったんだよ、絶対彼女できるとかぁぁぁぁ!」
十月の涼しい夜、自分の部屋にて、僕は同じバドサー友達である
なんで彼女ができないのか、と。
『まあなー、大学生になったら誰でも彼女できるとかは正直幻想だよな。そこは騙された朝来が悪い。誰でもはできん。世の中は残酷だ』
「残酷過ぎるよ……! あんまりだよ……! 同じバドサーの人は何人かもう付き合い出してるのに……こんなの高校生の時と同じじゃん……後ろで指くわえて見てるしかないとか……!」
『前川とか中井とかだよな? そもそもあいつらイケメン高身長じゃん? 一年のバドサー女子、ほとんど皆前川たちと話す時声違ってたわ。俺らの時はふっつーの地声だっつーにな。微妙に声のトーン高くなってんの』
「男余りの法則だね……僕みたいな低身長男に希望なんて残されてないんだよ……もう竹馬に乗りながら生活しようかな……そしたら前川君たちの身長追い抜けるよね……へ……へへへへ……」
『驚異の二メートル超えだな。明日それで登校してみてくれよ。数日後、「変な奴おった」みたいなタイトルでSNSに動画上げられてるかもだけど』
「……地獄じゃん……。モテないどことかキモがられてお先真っ暗だよ……」
『はははっ。間違いないな。あはははっ』
ため息が出る。
彼女を作る、とまではいかなくても、女の子とデートくらいしてみたいもんだ。
『けどよ、朝来。俺は思うんだが、お前さん別に見た目自体はそこまで悪くないぜ?』
「はいはい。ありがと。今はその気遣いも心にグサグサ来るよ。泣ける」
『気遣いじゃねーって。本音本音。確かに身長は低いが、こう、なんつーか、可愛い顔しててショタ王子っぽいっていうか』
「やめてくれよ……同じ男子からそういうこと言われるの喜んでいいのかわかんなくなる……。あと、ちょっと気持ち悪い……」
『同級くらいの女子じゃなくてさ、歳上のお姉様にアタックしてみたらどうよ? お前さんが「きゅるん♡」って感じで上目遣いしたら襲い掛かって来るんじゃねえか? オネショタみたいに』
「もうエロ漫画の読み過ぎだよ……。現実にそんなのあるわけないだろ? 歳上のお姉様も高身長のイケメンが好きだって。人権なんて無いんだよ、僕みたいな男には」
『んなことねーと思うけどなぁ。俺、たまにお前の服引っぺがしたくなることあるから』
「どさくさに紛れてとんでもない告白してくるのやめてくれ。今後、幸喜との付き合い方真剣に考えないといけなくなるから」
『なら、真面目にお姉様系狙うんだな。さもないと俺が朝来の服脱がしに行く』
もはや脅迫だった。
再度ため息をつき、椅子の背もたれにもたれかかって天井を見上げる。
歳上の女の人、か……。
そう言われると、すぐ浮かんでくる二人がいた。
僕の家の両隣に住んでて、小さい頃から優しくしてくれるお姉ちゃんたち。
礼姉――
二人とも本当に美人で、昔から憧れで。
自分があと十年くらい早く生まれてたら、告白もできたのかな、なんて思ったりもしたことがある。
年齢差は十二歳だ。
二人とも三十一歳で、完全に雲の上の存在。大人の女性。
こんなちんちくりんのガキが告白なんてしても玉砕するだけだろうし、そもそもあんなに美人な二人だ。きっと付き合ってる人がいる。結婚もまだなのがびっくりなレベルだしな。
現実は甘くない。とても厳しいのだ。
「……まあ、わかったよ。歳上ね。考えとく」
『ちなみに焦らせるわけじゃないが、俺も先日彼女ができた』
「――!?」
椅子から転げ落ちそうになった。
あまりにもいきなり過ぎる。
「う、ううう、嘘だろ!? は、はぁ!? な、な、なんでぇぇ!?」
『なんで、っていう聞かれ方もよくわからんが、まあ、アレだよ。今流行のマッチングアプリだ。こいつを使って他大の女の子と付き合い出した』
「う、う、裏切り者ォ!」
『んなこと言われてもな。こういうのは動いたモン勝ちだ。先に上がらせてもらったぞ、朝来?』
「なんでだよぉぉぉぉぉぉ!」
『はっはっは。とりあえず、お前も今送った俺の助言を胸に頑張るんだな。一応マッチングアプリもどんなの使ったか教えてやるよ。これだ』
LIMEのチャットルームでアプリを共有してくれる幸喜。
「うぅぅ……なんだこれ……? ラバーズ……?」
『そそ。マッチングアプリ系で利用者数ナンバーワンなんだと。お前もこれ使って彼女ゲットしな』
「ちくしょう……ちくしょう……羨ましいぃぃ……」
『あ、あと一応教えとくと、このアプリには一部ママ活男子みたいな奴らもいるんだよ。なんか自己紹介欄にハッシュタグ付けたりしてな。これすると特に歳上のお姉様方と交流できる機会が増えるらしい。やらなきゃ損だ、朝来』
「やるかよ、そんなの! 普通に同い年くらいの子狙うっての!」
『いやいや~、でもお前の需要は絶対歳上の人たちだって。試しに騙されたと思ってやってみ? 面白いことになるかもわかんねーし』
「やらないって。裏切り者の助言には耳を貸さない」
『やれやれだな。普通にやっても不利だぜ? 身長とか嘘偽りなく表記しないと先無いし、攻め方考えないと身長低い場合マッチングしないし』
「ぅぐ……!」
『まあいいや。とりあえずやれるだけやってみな。なんかまた面白いことになったら教えてくれ。じゃあな、親友』
「ちくしょう……おやすみ、親友……」
『へっへっへ』
ムカつく笑い声を残して、幸喜は通話を切った。
ベッドにダイブして、枕を顔に当ててからひたすら叫ぶ。
「ああああああああああ僕も彼女欲しいよおおおおおおおお!」
その後、幸喜の教えてくれたアプリをダウンロードしたのは言うまでもないことだ。
僕も実際に動いてみることにした。
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