ハーフアンデッド

ライト

第1話 プロローグ

 物語の序章というのは、読者自身をその物語に慣らすために若干は、少しはマイルドに、あっさりめにするべきだろう。銭湯の湯に入る前に桶でそのお湯をかけるように、プールに足先だけ触れるように、物語だってそうだ。メロスは激怒した、だけでは読者は驚いてしまう。

 しかしだ。しかし、インパクトというものも捨てがたいものだ。サプライズされて嬉しいように、ライブの派手な演出のように、走れメロスとて、その一文が頭に焼き付いている。

 ならば、この物語を書き連ねるのなら、書き出しはこうするとしよう。俺、六月一日羽立は故人となった。高校1年の夏休み。初めての高校生での長期休暇。正直、かなり浮かれていた。ルンルン気分だった。のだが、そんな俺に夏の魔物の毒牙がかかる。いや、俺自身からかかったのだ。いやはや。綺麗な薔薇には棘がある、儚い女子には裏があると言うべきか。やれやれ、慣れないことはしない方がいいのかもしれない。しかししょうがない。しょうがないのだ。あの子猫のような目で見られたら、男なら誰だって助ける。それが落とし穴。蟻地獄である。一度入ったら抜け出せない、無間地獄の始まりだ。そう、これは、俺が数奇な日常を送る、物語である。

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