令和版 新説『むかしばなし』

鳳嘴岳大

第1話 たけから生まれそうになったあいつの話

 むかしむかし、あるところに一人の老人がいました。

 近くの竹藪に勝手に入って竹を取って売るのが彼の仕事でした。

 ある日、彼がいつものように竹藪に勝手に入って適当な竹を探していると、一本だけ光る奇妙な竹を見つけてしまいました。

「むむっ、これは面妖な竹じゃ! きっと妖怪あやかしたぐいに相違あるまい!」

 その瞬間、彼の昔の血が騒ぎ始めました。

 なんと彼は元妖怪ハンターだったのです。

 彼は竹に駆け寄ると、おもむろに腰から抜き放ったなたを光る竹に向かって勢いよくたたき付けました。

「ぐぎゃあああああっっっ!!!」

 絹を裂くような悲鳴と共に竹から血しぶきが上がります。

「やはり、妖怪あやかしであったか! 我が直感に未だ狂い無し!」

 彼は何度も鉈を振るいましたが竹は光る何かに阻まれ最後まで切れません。

 そして、光の中から何かがはみ出ている気付いた彼はすかさず距離を取ります。

 次の瞬間、目映い光が辺り一帯を焼き払いました。

「未開星人どもがぁ! これではわらわの計画が台無しではないか! 手始めに貴様を炭に変えてくれようぞ!」

 竹の中から何かが這い出てくるのを見た彼は鉈を捨てると、ご先祖様が星の検非違使けびいしと名乗る神様より授かった刀身のない不思議な柄を取り出します。

「星の検非違使けびいし様、御身より与えられしお勤め今ここに果たさせていただきます!」

 彼が柄を握り、その柄頭をぽんと叩くと、光が集まって刀身が形作られていきました。

「ま、まさか、それはフォトンブレー……」

 竹より這い出ようとしていた何かが語るより早く振り下ろされた一撃がそれごと竹を光に変えてしまいます。

「邪悪滅ぶべし!」

 彼が大きく息をついて柄を振ると刀身は瞬く間に光に戻って消えました。

 そして、彼は焼け焦げた竹を拾うと、焦げた部分だけ丁寧に鉈でそぎ落としてから持って帰るのでした。

 めでたし、めでたし。

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