死してモブAとして転生したので死亡が確定している勇者が大好きだけど序盤で脱落する推しの子が最後まで生き残れるように裏で画策し絶対に推しの子を死なせるというシステムに対して僕の努力が報われますように
カイト
第1話 〜プロローグ〜
ゴオオオッと全てが燃え尽きて行く音が聞こえてきくる...。
「セリア...お願い...貴方は生きて...」
僕はそう言われたので思わず息を呑んだ。
「なんで...、マフユ...。メルは来ないんだ? 今日はメルの出発の門出を祝う祭りのはずだったはずだ...」
僕はそのことについて真っ赤な血に染まって行くマフユに呟く。
すると彼女は静かに笑って答えた。
「メルは...、先日静かに出て行ったの...。祭りまでやって大袈裟気に皆と別れるのがなんだか怖いからって...。ふふっ...メルらしいよね...」
マフユの綺麗な白色の肌と髪の色が徐々に深紅の色に染められていき、彼女の命の鼓動を感じられなくなって行く...。
その時だった!
ヒヒーンと馬の鳴き声がしたかと思えば、漆黒の鎧を着た騎士がその場に姿を現す!
「勇者メルは何処にいる? 知っているぞ。この村に潜伏しているのだろう? 早く差し出さなければ全員この場で処刑する」
僕は目の前の男を知っている...。
「骸骨騎士デスコーン」
「ほう、俺の名前を知っているのか?」
知っているも何も
「なんで...
僕は思わずそう叫ぶ。
デスコーンは僕にその漆黒の槍を向ける。
「貴様...何を言っている? イベント? はっ! 突然のことすぎて気でも狂ったか? 幼なげな少女を痛ぶる趣味は俺にはない。そこの白髪の少女と一緒に屠ってやろう」
そう呟いた時だった。
マフユの体が光り輝き、氷の精霊術師としての資質をデスコーンに見られてしまったのだ!
「この娘!!! まさか精霊術師なのか!? ククク...これは好都合!」
デスコーンはマフユの体に手を入れて無理やり精霊術師としての能力を奪い去ったのである!
「クハハハ! 凄まじい力だ! これから漆黒の騎士デスコーンではなく、氷漆黒の騎士デスコーンとして名を刻んでやろう!」
マフユの力を奪ったデスコーンの実力はゲームならレベル40〜50の伝説装備を揃えたメルでないと勝てない相手である。
そんな存在を目の前にした僕は全身から嫌な汗が吹き出した。
「クハハ...俺様がそんなに怖いか? 少女よ」
「...そりゃ怖いさ。怖いけど...!」
僕は勇者メルの友達の1人でNPCの1人剣士の少女セリアとして生を得ている。
このゲームは元々主人公メルを操作してある程度他の好きなNPCを仲間にできる事を売りにしている。
僕のキャラは序盤のこのイベントで確実に死ぬキャラだったので短い命ながらも推しのマフユと一緒に生活出来たことを光栄に思いながら剣を取る。
僕が剣を取る姿を見てデスコーンは笑いを止める。
「なるほど...。少女とはいえども剣を取るなら1人の剣士として礼儀を尽くそう」
そう呟き槍を構える。
残念ながら多少のレベルが上がったとはいえどもこの序盤ではロクな武器もスキルもないのでデスコーンには絶対に敵わない。
それでも...! 一太刀くらいは浴びせられる!
僕は【疾風の刃】を放った!
「くっ! 小娘如きが!」
その結果、僕はデスコーンに先制で1のダメージを与える事に成功した。
しかし、所詮はそれまでである。
「【氷結槍】」
奴の放つ槍の一撃により僕の体は一瞬で凍結してしまう...。
「ククク...。どうだ? 貴様の友の技だ。一生その氷の中で眠るが良い。良かったな。友と一緒にずっとずっと暮らせるのだぞ?」
デスコーンはそれだけ呟くと背を向けて他の村人を殺害して回る。
(...マフユ。守れなくてごめん)
僕はそう呟きながらその一生を終えるのだった...。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます