第5話

「おばあさまはどうして、そんなことを言っていたのかしら?」


ランベルトは夢物語だと思っていた。けれどミリヤムは、母には何かしらの力があったのだと思っている。自分にはその力はないが、娘には受け継がれているようだ。


「エ・ル・ファ・リンドって……」


リランジュの視線を受けて、レヴィアスはいたずらめいた笑顔で言った。


「その名を軽々しく口にしないほうがいい。いたずらな妖精に聞かれたら、悪さをしに来るよ」


妖精が住む森? リランジュは唇だけで問いかけたが、旅人はあいまいに笑ってごまかした。そして、この家の主であるランベルトに向き直る。


「よろしければ、少しの滞在を許可していただけますか?」


「もちろん、かまわない。一週間後にはリラの誕生日パーティーがある。君にも参加してもらいたいよ」


リランジュは父親に抱きついた。ミリヤムが使用人達に部屋を用意するよう指示し、別世界から来た旅人は、ラロ家に世話になることとなった。

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