第33話 時の流れ

美空が生まれてから、時間の流れが早く感じた。


慌ただしい育児。美空が生まれて、子供がいる環境を初体験する。色んな事が初めてで、そして感動する。


元気いっぱいに育ってくれている美空。私達を笑顔にしてくれる。



****


美空が生まれて、もうすぐ1年。愁は高校を卒業して大学生になる。

蓮先輩と同じ経済学部に入る事になっていた。結局のところ、長になった為に理事長職も会社も全て愁が治める事になった。

その為に色々と学ぶことが多いらしく…。


理事長の最後の権限で、愁の補佐になるのが蓮先輩となった。若い世代に任せるという事だ。

潮さんは理事長と共に引退する事になるらしい。



蓮先輩は…美空が生まれてから、まるで人が変わったようだった。

見境なかった吸血行為を、控えめにするようになった。何というか…落ち着いた?

そして2日おきぐらいに、美空に会いに来る。驚くことに、美空を本気で伴侶にするつもりらしい。しかも美空もかなり懐いている。


「父親としては複雑だけど…蓮の行動の変化を考えれば…良い傾向なのか…ね…」

「そう…ね」


確かに。美空が蓮先輩のストッパーになっているのだから、一族としては良い傾向なのかもしれない。

蓮先輩も想定外だっただろうなって少し思う。本当は利用するだけのつもりだったと思うのだけど…かなり溺愛してるみたいだ。


「これで、美空が他の男に行ったら…少し怖いな」


愁は苦笑いしていた。必ずしも美空が蓮先輩を選ぶとは限らないのだから。私もつられて苦笑いをする。


私達は手を繋いで空を見上げる。いつまでも2人で空を見上げたい。

この穏やかで優しい時間が永遠に続きますように。


何十年、何百年…変わらないこの空を…2人で見続けたい。










――――― 第一部 完 ―――――

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