消えない温度

現役高校生

プロローグ

作り笑いは相手を容易に騙せる。

どれだけしんどくても、辛くても、「大丈夫」と笑いながら誤魔化せば、ほとんどの人が安心した表情でその場を離れてくれる。


けれど、それが通じない人が一定数いるのだ。


「本当に大丈夫なの?」

「傷ついてるなら言ってくれていいんだよ」


そんなふうに声をかけてくる友達や先生がその代表例だ。

そういう人は、私が望んでもいないのに助けようとするから、偽善者だと心の中で呼んでいる。

偽善者というのは、とてつもなくうるさい。

私に何かあるたびに、すぐ手を差し伸べてくる。

その手が邪魔で、煩わしくて、不快だから、私はその手を振り払ってきた。

自分の辛さを他人がわかったような気になるのが本当に嫌なんだ。


誰にもこの辛さも、しんどさも分からない。


その雰囲気を纏い続けたおかげで、私はまるで空気のように扱われるようになった。


これでいい。これでいい…。……これでいいんだよね……?。

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消えない温度 現役高校生 @hobbykiwami

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