【あの祠チャレンジ】お前、あの祠壊したんか…

猫山鈴助

最終作戦:名も無い祠、現地にて。

バゴォォォォン―


お爺さん「なんの音じゃ…む、おぬしか。なにか大きな音がしたが、大丈夫か?」


 僕はなにも言わず、自分が破壊した祠を指さした。


お爺さん「え、なにしてんの」

僕「ごめんなさい」


お爺さん「いや、えぇ…」


お爺さんは困り顔で長い白髪頭をポリポリと掻く。


お爺さん「祠、なに使って壊したの?」


僕「爆弾。正確には硝安油剤爆薬しょうあんゆざいばくやくです」

お爺さん「し、しょうあん…?…とにかく、地面すごいボコボコだもんね。おじちゃんびっくりしちゃたよ。足震えてるよ」


僕「硝安油剤爆薬、ダイナマイトよりも安価で安全性も高いんですよ。コストも低めなんです」


お爺さん「それはもういいよ!警察はちゃんと呼ぶからね。あれ、通じない、電波悪いのか…まさか爆弾のせいか!?」


僕は事前に用意したサイレント仕様にカスタムしたピストル(マカロフPMのコピー品)をお爺さんに向けてこう言った。「この村の回線は事前に切ってます。あと、顔を見られたからには生かしておけないので、死んでください」


 おじいさんの胴体をアイアンサイトで狙い、トリガーを引く―が、弾が出ない。

「●国製は使えないな…」と愚痴をこぼす。が、どうやら銃の問題じゃなさそうだ。


 お爺さんの周囲に真っ黒なオーラが溢れている。これが祠が封印していたモノなのだろうか。このオーラが僕の銃に伸びている。どういう仕組みかこのオーラは銃弾を止めることができるようだ。


お爺さん「このオーラはな、わしがかつて使役していた穢者けがれものの能力によるものだ。お主が祠を壊したことで再び発現したようじゃな。この霧に触れたものは腐り果てるのじゃ。使役者であるわしを除いてな。」


 お爺さんの言う通り銃は朽ちており、僕の手も腐り始めていた。慌てて距離を取る。


お爺さん「平和な生活のために捨てた能力じゃったが、こうしてもう一度使うことになるとはな。して、なぜこの祠を壊した?爆弾や銃の入手といい、やけに計画的な犯行じゃよな」


僕「それは、この村に住む住人の中に紛れ込んだ危険分子である元異能力者、つまりあなたを痕跡ごと抹殺するためですよ。」


排除対象おじいさん「ほう、それは面白い。誰からの依頼じゃ?」


僕「それはちょっと言えませんね。ただ、あなたは知らない人だと思いますよ」


排除対処「そうか。しかし、わしはまだやらなきゃならないことがあるからのう。ブランクはあれど、全力で対抗させてもらおう」


 お爺さんの全身に、広がっていたオーラが集中し、モヤでできたヒーロースーツのような形に変わった。

 

 このままではまずいと思い、僕は祠跡地から村へと走る。後ろからは80代とは思えない速さの足音が迫ってくる。


排除対象「そのまま投降せんか、おぬしはまだ若い、やり直せるぞ」


僕は「来るなぁッ!やだっ来るな!」と叫ぶ。これは相手を油断させて追い込むための罠だ。


 そしてある家に逃げ込む。赤い屋根で壁にあらかじめマークをつけておいた家、排除対象の孫が住んでいる家だ。この時間は学校から帰ってきておりピアノを練習している時間ということは既に調べている。


 情報通り排除対処の孫娘は居た。ピアノの前に座り、見たことのない僕を前に不安そうな顔を浮かべている。後ろからは排除対象であるお爺さん。


お爺さん「お前、それは人質のつもりか!?」ビンゴ、お爺さんの「まだやらねばならないこと」とは孫の成長を見守ることだったようだ。


僕「ここで能力を使えば、あなたのお孫さんも死にますよね。もう抵抗しないでくださいね」


 あらかじめ隠しておいた銃の場所を見ると、銃が無い…気付かれてたのか?


排除対処は「これを探してるのか?」と言い、隠していた銃を見せてくる。


僕「バレちゃってましたか」


排除対処「当たり前じゃろう?自宅の物が動いていたりしたら案外分かるもんじゃよ。マガジンもみつけやすかった。」対象は僕に銃弾を放つ。


 僕にそれを避ける事が出来るはずもなく、腹から血を吹き出した。だが、方法はまだ残っている。この村全体に爆弾を仕掛けておいたのだ。


 起爆スイッチを押す。


ーーーーーーーーーーーー


 そしてわしの目の前で少年は意識を失った。孫の亜美は怯えた顔でこちらを見ている。愛する孫に酷いものを見せしまったことを深く後悔していると、村中から爆発音がする。


 銃までは気づいていたが、まさかこんなものまで仕掛けられていたとは。銃を見つけた時にくまなく見たから、うちの中にはないだろう。


 そう思っていると、屋根のあたりから爆発音がした。


「くっ…甘かったか」


わしは亜美を抱きしめ、どうか亜美に被害が及ばないことを祈った。


「亜美、生きてくれよ」

ーーーーーーーーーーー


 それから10年、村の内外の人からの寄付によりなんとか再建された祠の下には、私のおじいちゃんの骨が埋まっている。私は15歳になった。


 いつか私の命が狙われた時は、あの祠を壊すことになるのだろう、生き延びるために。

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