第一章・羽柴秀吉と仕官
第9話
桜の蕾が膨らみ始めているが、まだ夜になればまだ風は冷たい。
佐吉は兄の正澄供に居候している多喜家の屋敷に帰る途中だった。
多喜家は佐吉の母の親戚筋で近江の甲賀の辺りに住んでいる。
そんな佐吉の前を全力で駆け抜けてゆく影があった。
珍しくもない光景で戦で親失った子供達が群れをなし普段は物乞いをしているが、食べる物が無くなると盗みを働くのだ。
人混みのなか子供への罵声と殴りつける音が聞こえる。
周囲の野次はいるが暴力が続いていた。
ー追手は三人だけか
子供は五、六歳ばかりだ。
佐吉は野次馬達をかき分けて進んだ。
「子供になにするのよ!!」
佐吉が輪の中に辿りつくと、紺小袖姿の少女が男の腕にしがみついていた。
「盗られたものを取り戻したならもういいでしょう」
「返せばいいってもんじゃねぇだろうがこの女!」
男は少女の胸ぐらを掴み卑猥な笑みを浮かべる。
佐吉は地面を蹴って掛け出し、男の手首を握った。
「何だお前は?すっこんでろ!」
「手荒なことは好まぬが、その人を離せ」
「何だと!やっちまえ!」
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