第38話

「どうして別れたんですか?その元カノさんとは」

 知りたいような知りたくないような気持ちで、咲来は尋ねた。

「まあ、早い話が、俺が研究にのめりこみすぎてたんでしょうね。一緒にいても論文ばっかり読んでましたから」

 その答えを聞いて咲来は、タブレットの画面に集中している後藤の姿を思い出した。咲来が声をかけると、後藤は、咲来が申し訳なく思うくらい、すぐに画面を閉じた。

「私は、後藤さんがタブレットを一生懸命見てる姿も、結構好きですよ」

 元カノに対抗心を燃やした咲来に、

「そんなの、好きにならなくていいですよ」

と、後藤は照れたように手を振った。

「ササラちゃんが近くにいると、俺、論文どころじゃなくなりますし」

「……馬鹿」

「だから、そう言ってるでしょう」

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