武器はデカければデカいほど良い、美少女が持てばより良い

三重知貴

第0話 プロローグ 誰かの呟き

この世界は、全ての物がデカかった。


 山よりも背丈の大きな怪物、海の底に足を付け歩く幻獣、空の向こう側に刺さるような大樹。

 なぜこの世界の人間はこんな小さな姿で生まれ、文化を作り、国を立ち上げられたのかは、神話と呼ばれる時代の者にしかわからないだろう。


 神がこの世界を作ったのなら、なんて退屈な世界を作ったものだろうか。

 悠久を生き、地上と宇宙の間を彷徨う龍が思う。


 強さという明確な縛りの中で生き物。


 なぜ、強いものは大きい。この世界のものが大きくなり続けた理由を探すなら、きっと答えはそれになるだろう。


 地を見下ろす。


 小さなものばかりだ。弱いが羨ましい種もいる、人間だ。


 昔から弱かったがたまに見どころのあるやつもいた、最近は数だけは多くなってきた。

 昔は全員でかかってくれば命を脅かされるかもしれなかったのに、と落胆をしてしまう。

 だが、眺める分には面白かった。人は大きくならないが、持っている武器だけは大きくなる。


 最上美女に多くの者が縋りついてきた。だがその美女が最も大きな槍ですべてを蹴散らし、誰のものにもならなかった。


 魔物とは違うが、人間も似たような生態だった。

 だが武器というのは作り物だ。強さの象徴を作り上げられるというのは羨ましい。生まれた瞬間ほぼ決まる魔物とは全然違う。


 しかし、それを作る鍛冶師というのは強さには興味がないやつばかりだった。

 それはとても不思議なことだった。強さに興味はないのだろうか。


 人間は強くなりたがるやつとそうじゃないやつがいる。ただ弱いやつなら戦いから逃げるのはわかる。

 だが強くなれ可能性を秘めているのにそれを捨てるのは勿体ないだろう。


「私よりも強くならないのだろうか。」


 魔法を使う者と強さを作れるものがいるのだ。それくらいできるのではないだろうか。

 それは不可能でない願いだ。ただ大きすぎる期待であることは自覚があった。そうじゃなければこんなに暇をすることもなかった。

 

 叶わぬ願望の言葉は、宇宙のどこかへと消えていく。

 だがそれを聞きいれた者がいた。


 その者を言葉にするなら神という以外にないだろう。この世界を動かし続ける神だ。

 それは人のように感情に富んだものなのか、機械のように冷徹に、ただ働き続けるだけのシステムなのかは誰も知らない。

 形がないのかもしれない、物体があるかもしれない。答えがわかることはないだろう。


 


 どこにもいない、どこかにいる神はその叶わぬ言葉を拾い上げた。

 魂を1つ招き入れる。


 その神のものなのか、他の神の物なのか。誰のものでもないかもしれない魂は、この世界を動かし始める鍵となるのだろう。

 

 1人の人間が生を受けた。果たして何が起こるかは、この神も知らないのかもしれない。

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