第2話 死にたいくらい
私は今田カナ。どこにでもいるぼっちの高校一年生。
…だったんだけど…。
「カナの家ってマンション?一軒家?自分の部屋とかある?」
幽霊『土野カイ』にだる絡みされている。
『ただいまー』
「おかえりーカナー、夜ご飯もうすぐできるから先お風呂入っちゃいなさい」
何年と聞いた母のセリフが耳を通り、いつものように私は自分の部屋へ荷物を置き、着替えを取りに行く。
「ねぇ、今の声お母さん?」
『そそ、私が大好きな、お母さん』
「へぇ…」
何か納得したようにフフンと鼻を鳴らしながらこっちに寄ってくる。そして彼女は壁をすうっと通り抜けてどこかで消えてしまった。
やはり幽霊は壁抜けできるのだなぁと謎の納得。
『ふぁぁぁ…』
足から肩へバシャンと湯船に入り、やはり日本人はこの気持ちよさをDNAレベルで刻まれているなーとかアホなことを思いながら考える。
そう、
名前を忘れた、と言及するあの幽霊『土野カイ』のことだ。
色々疑問が浮かぶがまず『なぜ呪い殺されなかったか』だ。そもそも呪い殺されるのは噂でありカイはそもそも呪い殺したことがない?ならカイはなぜあそこに?
カイはどうやって死んだ?
『んあー分からない!』
まぁそりゃあそうだろう。科学的根拠ナシの代表である幽霊が目の前にいるのでまともに考えるのもバカバカしい。嘘だと信じたい。夢だと信じたい。
でも、あの時。屋上から落ちるとき、カイに掴まれたら確かに痛みがあった。…じゃ夢じゃないいい!
「何考えてんの、さっきからうるさいよ」
『キャッ』
お風呂場のドアからヌッと透過して出てくる。心臓に悪いし、やっていることは覗き魔と大差がない。
『う…うるさいってどういうこと?』
「あー、んとねー…」
見られたくないところを隠しながら彼女の言ったことについて問いかける。
「カナに私は憑いてるから、思考とか、思ってることが共有されて私の方に来るわけよ。つまりババ抜きとかやってたらあなたの手札作戦すべてわかるってわけ」
『…悪趣味』
「ひどくない?」
正直な感想だが超能力などで人の心が読めるなどそういう話を聞くが、私は微塵も欲しいと思わない。人の考えていることなんて、知りたくないし。
口で言われないだけで、どれだけ私がみんなの心の中で罵倒されてたか。見えないほうが私は幸せだ。
「あのさ」
『あっこれも全部聞こえてるわけか』
「まぁ、そだね。というかなんで屋上に来たの?そういえば」
私は経緯をすべて話した。
…隠したところですべて彼女はお見通しなわけだが…
そしてなぜか「いい湯加減ー」とか言いながらカイがお湯に浸かる。幽霊なのに彼女に湯加減はわかるのか…?
「おばか」
『え!?直球すぎない!?』
「あのさぁ…。そもそもの話だけど、高校は友達が行くからって理由で選んじゃダメランキング第二位だよ」
『え…一位は?』
「親が校長…とか?」
『バリバリ手法が裏口入学じゃん…』
「んでね、高校は友達が全てじゃないし、そんな形だけの友好条約を締結しまくって、『友達できたー?』『オレ10人できた!連絡先も交換したし!』とか、バカみたいじゃんね?本当に気が合う友達を一人でもいいから見つければ、私はいいと思うよ?」
それができないんだよ!!!!!!!
この幽霊思考が陽キャ!
私の精神面わかってないわ、だから腕ないんだ!
「わかったわかった!ごめんって!響くから!頭に響くから!口で言わず心の中で訴えるのやめて!…あと腕ないのは関係ないですよね?」
『ちょっとのぼせちゃったかも…』
頭がクラクラする…早く寝よ。
そして、幽霊の目線は私の体に。
『何ジロジロ見てんの?気持ち悪い…』
「いや、あの…」
『なに、早く言ってよ』
「よく食べたら、胸とかは大きくなるんじゃない?その、さっきから、胸だけは見られたくないとずっと頭にこだましまくってるんだけど…別に大きさは関係な…」
『ぱーんち!あれ?透けた…!』
私の右ストレートが彼女の腹を抜ける。そうか、こいつ幽霊だった。
「はっはー!殴れ殴れ!こいや!」
『こいつ…!』
絶対成仏させよう、と心に決めて私は服を着て、自分の部屋のベットで横たわる。
「もう寝るの?早くない?」
『zzz…』
「ねぇってば…」
『zzz…ど…どら、ごん…』
「レム睡眠早…。ちぇ、ウノとか見つけたのに…」
『『女々しくて 女々しくて 女々しくて 辛いよー!』』
『あーうるさいうるさい…』
「ふぁー…カナのスマホの目覚ましのアラームどうなってるの?」
『いや、起きれると思ってゴールデンボンバーにしてる』
ええ…という初めて見た幽霊の怪訝そうな顔に少し心の中でガッツポーズしながらも朝食を食べる。親は朝早くから家を出るので、私が起きる頃には家に誰もいない。
「家族構成どんななの?」
昨日は夜ご飯の前に寝てしまったが、母が気を利かせてラップで包んでくれたらしく、朝ご飯の主菜として昨日の主菜であっただろう野菜炒めが置かれている。
『お父さんと離婚したみたいで、お母さんと二人で暮らしてるよ』
「へぇ…なんで離婚したの?」
『いや、そういうの聞くのためらわない?』
「聞きたいからね…あ、カナの口から!」
『なんか、私に姉がいたらしいんだけど、事故?か何かで亡くなっちゃって。良くも悪くも、姉の顔がおかあそんとそっくりだったから、お父さんがお母さんの顔を見るたび姉を思い出して辛かったんだって』
「ふぅん…あれ、カナはどうやって産まれたの?」
『なんか聞いたら、『キャベツ畑で拾ってきた』とか。ありえないよね』
「そだね…見苦しい言い訳だな…」
『私をキャベツ畑に置いた人、倫理観的に考えてありえないなぁ、って思う!ひどくね?』
「あ、そっち?」
ごちそうさま!と手を合わせて、リュックを背負って、玄関に行く。
「私が高校の青春について教えてやろう」
でも、前とは違う。
少し頼りない、一人の『友達』がいる。
『「いってきます!」』
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