018 ポメラやらかす 3
「これから、お互いを理解していくということで、どうでしょうか?」
「無理です」
「今度、新しいスイーツをごちそうしますから。マンゴーというとても美味しい果
物を使ったタルトという種類なんです、初めて食べた衝撃は今も忘れられません。
マエラさんにもぜひ味わって貰いたいのです!」
「……無理です」
返答に少し間を要したマエラ。
「そういえば、新しいイチゴの種類が見つかったみたいですよ。とても甘みが強い
みたいです。クリームや生地もそれに合わせて味を調整するみたいですから、全く
別のイチゴのショートケーキになるんですって、一体どんな味になるんでしょう
ね、すごく楽しみです!」
「…考えますから、話を進めてください」
マエラ、甘味に抗えず。
精神的恐怖に甘味が勝った瞬間である。
「はい!今度一緒に行きましょうね!えーと、私も教会をよく思っていないのはお
話ししましたよね?」
「そうですね…反教会同盟があることも」
マエラ、自分の意思の弱さに凹む。
「ええ、反教会同盟の人員だけではなく、この商会の殆どの社員は、少なからず同
じ思いを抱いているでしょう」
マエラはポメラの話を聞いても驚きはなかった。逆に、自分の予想が当たったと
得心がいった。しかし、疑問もある。
「そのような話をここでしても大丈夫なのですか?」
獣人達は何かの制約を受けており、教会に敵意を向けることは出来ないと予想し
ていたのだ。
「ご心配なく、教会に悟られることはありません。私達が知らないだけで把握され
ていて、泳がされているだけなら対処のしようがありませんが」
ポメラ、精神的に傷つけないと言った傍から…”泳がす”とか言う。
「それほど人数はいませんが、現在教会へ反旗を翻そうと計画を立てています。も
ちろん上手く行く保証はありませんし、最悪処分されるかもしれません」
ポメラ、平然とマエラの心を抉る。さっきの誓いはなんだったのか。
「それを私に話してどうするのですか?」
ちょっと不機嫌なマエラ。
そしてそれを察せないポメラ。
「この話は、教会に反抗する決意がある者だけにしか話していません。マエラさん
はその覚悟があると判断して、打ち明けました」
ポメラはマエラの手を取る。
「教会に大きな損害を与えてみませんか?」
~~~~~
マエラはポメラから反教会同盟への勧誘を受けたが、気になる事があった。
「でもこの商会に入ってしまい既に制約を受けている私では、教会に悟られること
なく行動するのは不可能なのでは?」
そう、マエラは既に制約を受け、マエラの情報は教会側に渡っているのだ。
「その点は心配いりません。実は登録に細工をして、マエラさんは制約がかかって
いない状態にあります。そういうスキルを持った者がいて擬装できるのです。です
から、マエラさんの情報、もちろんスキルについても教会側は把握していないので
ご安心下さい」
スキル、なんて便利な言葉。
「そうなんすね、それは助かります。それで、具体的に教会に損害を与えるとは何
をするのですか?」
それを信じる純粋なマエラ。さっき騙されたのに…
「ダンジョンを攻略しませんか?マエラさんのスキルは打って付けのスキルなんで
す!」
「話の意図が見えなのですが?確かにダンジョンは財宝や武器、場所によっては食
料が手に入るとも聞いたことがあります。メッキラ独立国にはダンジョンがないの
で詳細はわかりませんが」
「実はですね、どうやら教会は魔石を集めているみたいなんです。残念ながらその
理由まではわかっていないのですが。さて、ここで問題です。魔石は何から得るこ
とができかすか?」
「それは魔物を倒すこと…!」
マエラは何かに気づく。
「そう、ダンジョンでも魔石は得られるんです」
ポメラは、ニコリと笑った。
「商人であったマエラさんならご存じだと思いますが、ここから山脈を挟んで反対
側、カーネラリアン聖王国のカシンの町にダンジョンがあります。まずは、そこを
潰そうと思っています」
「え?ダンジョンを潰すことが出来るのですか?」
その情報は、マエラにとって初耳であった。
「はい、昔の文献を読み解いたところ、そういう記述を発見しました。ダンジョン
を維持しているダンジョンコアという物があって、それを停止するか壊せばダン
ジョンが無くなるそうです。ですが昔の記録であるため正しいとは言い切れません
が…。でも、やってみる価値はあるはずです!」
ポメラは失点を取り戻したいため、何とかマエラを頷かせたいのだが…
「先程、ある目的があってリビール商会に入ったと言いましたが、私はその目的を
優先したいのです。それは、ある獣人の姉妹を助けることで…」
やはり、獣人の姉妹のことを優先したい気持ちが強い。
「もちろんマエラさんの目的もお手伝いします。ですが、私達にはまだ力がない。
まずは力をつけることが第一、そして教会を内部から弱体化させる。それがなされ
る前に行動を起こしても、結局教会に潰されてしまいます。追手を出されたらどう
しますか?その助けたい姉妹も守り切れないと思いますよ?」
それを聞いて黙るマエラ。
「確かにその通りです。では、あの姉妹が無事かどうかだけでも調べてもらえませ
んか?」
「わかりました。怪しい行動は極力控えたいので、少々時間をもらいますがやって
みましょう。その姉妹の名前と直近で存在が確認出来た場所を教えて下さい」
ポメラは真剣な眼差してマエラを見る。
そしてポメラは、マエラの要望を叶えるために行動を起こすことを決意するので
あった(演技)。
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