あの頃のふたり~逸香と公斗の物語~

さつき

第1話 出会い

「見つけられないといけないから、早めに着いとこ❗あ、でも、遠くから見られてガッカリされたら…」


地下鉄の階段を昇りながら逸香はお気に入りの腕時計に目を落とす。


「10分前か、どうしよう」


逸香の胸の鼓動が激しくなるのは、階段昇ってるせいじゃない。今日初めて公斗と会うからだ。


迷って決めた白のセットアップ。公斗にはどう映るのだろう。気合い入ってると思われるのかな?


色んな想いが交錯する。会わない方がいいのかな?でも、会ってみたい。


そうこうしているうちに待ち合わせの大学の正門前にたどり着いた。見渡したけど、公斗らしき人はいない。正門横に壁にもたれて談笑しているカップルと反対側の正門横に日傘をさした女の子。どこで待とう?迷っていると後ろから聞き覚えのある声がした。


「逸香ちゃん?」


振り向きながら狼狽える。


「えっ、あっ、えっ、、、公斗くん?」


心の準備もままならない逸香の目の前に、想像とは全く違う公斗が現れた。


「暑かったよね。何か冷たいものでも飲もうよ」


公斗が案内してくれた大学内のカフェ。何だか思考がついていかないまま、逸香はクリームソーダを注文した。


今、目の前にはずっと会ってみたいと思っていた公斗がいる。逸香が想像していた公斗は、面長の顔立ちでメガネをかけていて、細身でちょっとインテリっぽい感じだった。でも、目の前にいる公斗は、どちらかと言うと丸っこくてニコニコと優しい眼差しで逸香を見ている。


「くまさんみたい…」


これが逸香の公斗に対する第一印象だった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る