神に触れしは鎖の少女〜子どもの姿をした神様が、歩道橋から飛び降りようとしていました〜
戸浦みなも
第1章 ヤドリ蔦の切望
第1話 つかんだ手首
カツン、カンカンッ。
通学用リュックを背負い、さびた歩道橋の階段を一段飛ばしに上がっていく。いつものように朝ギリギリで出発した私・
「はぁっ、はぁ、はぁ……っ」
私は
夢なんてない。将来なんて知らない。私に、未来を選ぶ資格なんてない。
いつもフラッシュバックする。小学生の頃に、私のクラスメイトが一人死んだ。二時間目の屋上、日食で光が消えたその一瞬に、飛び降りてしまった女の子。私はその子を守れなかった。
先生が、中学までは義務教育なんだよって言っていた。だから私は中学校に
家族が言ってくれた。県内一位の高校に進学してくれたら嬉しいなって。だから私は勉強して、県内一位の高校に入学した。
けれど、これから先は、私の自由なんだって。先生も家族も、あとは自分で選べって言ってくる。叶えたい夢。欲しい将来。そんなもの、今さら手に入れようなんて思えない。
抜ける風は軽やかで、どこまでも空っぽだった。そんな
「え……」
歩道橋の真ん中、手すりの上。水色の和服を着た、七歳くらいの男の子が、そこに腰掛けてふらふらと足を遊ばせている。
「ねぇ、ちょっと。危ないよ」
声をかけてはみたものの、その子は私を振り向かない。そっと歩み寄りながら、彼の変わった装いをもう一度よく見直した。
「あ……」
その子が、ひょい、と手すりの上で立ち上がった。淡い、
歩道橋の手すりに屋上の
その足元に、内履きシューズが重なって見えて。
「だ、だめ……」
「死んじゃだめ!」
ダッ、と
つかむことが、できてしまった。
「はっ、はあ、ハァッ……」
つぅ、と
「な、え、ええぇぇっ……!?」
冷たい。普通の人間の体温ではない。
おそるおそる顔を上げると、その少年は手すりの上に立ったまま、静かに私を見下ろしていた。
「痛い」
「あ、ご、ごめんなさい」
手首を握る力を緩め、改めてその少年を見上げる。
頬の
「何? 君も、僕に願いごとがあるのか」
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