第13話 名前を聞かせて(クライマックス!)
カリッ。
男の歯が、
——来る。
読み通り、腕ほどの太さをした蔦が一本、水平方向に直進——その後を追って、複数の細い
一般的な人間の、光に対する反応速度は〇・二秒から〇・三秒だ。仮に私がそれくらいで動けるとして、法定速度ガン無視の車みたいに突っ込んでくるアレを、この狭い空間の中で
私はそれを、理解している。
ドッ、と重く熱い衝撃が腹の中心を打ち、内臓を太い鉄柱で串刺しにされたような——そんな感覚が、私の体を貫いた。
「がっ……!」
しかし、いかに覚悟しようとダメージは計り知れない——すーっと頭から血の気が引いて視界が明滅し、映らなくなったテレビのようなノイズが耳を
突き出された蔦の
「うっ、ああっ……!」
ぐ、と傷口の上部に力が加わり、つま先が地面から浮き上がる。反射的に蔦を
「ぐっ、ううっ……」
まだ。まだだ。まだ、気を失ってはだめ。アドレナリンが効いているうちは、この痛みもどこか現実味がない。私の肉を
「藍果ちゃんは、俺のことが……好き、なのか」
「……は」
「だから、俺と話してくれたのか。藍果ちゃんなら、俺のことを」
「……あなた、は」
この男の発した言葉が、彼自身の憎んでやまない現実だ。どこで歪んでしまったのだろう。人と人とのつながり、関係性の築き方を、この男はどこかで見失ってしまった。気づかってくれる人がいれば、そういう人になれてさえいれば、踏みとどまれていたかもしれないのに。
何かが彼を、そうさせてくれなかった。
「私の血を吸ったこの実を食べて、
男が、ハッとしたように目を見開く。
「だか、ら……あなたの名前を、聞かせて。おともだち、か、ら……始めましょう」
男の、揺れていた焦点がはっきりと像を結ぶ。顔を上げて私の目を見た。
「俺の名前は、
人と仲良くなる方法。対等な関係を築くための、最初の
「なら、日向さん、と、呼び……ますね」
もう、意識が持たない。とんでもない激痛の足音が、ひたひたと血を
「日向さん。誰が、お前の
男の表情が
「マガツヒメ」
男がその名を告げた瞬間、私の腹からずるりと蔦が抜け落ちた。
岩肌へと身を投げ出す
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます