削れる雨傘

黒鯛の刺身♪

第1話……削れる雨傘

 美津子は生まれつき足の不自由な女性だった。

 両足に補装具を装着し、秋雨の中ヨタヨタと歩く。


 「あの傘欲しいなぁ」


 彼女が指さしたのは、ブランド物の桃色の傘だった。


 「大切に使うからさぁ……」


 珍しく強請られ、私はその傘を彼女にプレゼントした。



 彼女は、その日からその傘を愛用した。

 雨が降る日はうきうきとさし、その姿は私の荒んだ心を温めた。


 彼女は体が不自由なので、傘もそれ相応に痛む。

 特に先っぽは日々削れていった。


 手入れしながら使っていたが、日々短くなる傘。

 傘が短くなる分、私は美津子と仲良くなっていくと感じた。


 ある日、傘がポッキリと折れてしまう。

 彼女は不吉だと悲しんだ……。


 それ以来、美津子はあまりものを強請らなくなった。



 それから何年かが経ち、秋雨の季節となった。

 私がショーケースに立ち寄ると、あの日と同じブランドの品が展示されている。

 同じ色ではないが、傘も置いてあった。


 ……買って帰るか。

 私はカードで精算。


 美津子との待ち合わせの場所に急ぐのであった。

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削れる雨傘 黒鯛の刺身♪ @sasimi-kurodai

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