第三話 地球ですらない

 天気の良いある日のこと、俺は籠に入れられて外出することになった。


 父親のヘガードは数日前から所用らしく家を空けていた。


「よし、行くか。まずはディックのところだな」


 そう言うと、兄のファーンは俺を抱き上げて籠に入れてくれた。

 小学生の使うランドセルの蓋を取って、三回りほど大型にした感じの、とう製の背負い籠だ。

 これなら座るのは無理でも、籠の中に立って縁を掴んでいる分には全く問題無いだろう。


「アル、しっかりここに手を掛けているのよ」


 姉のミルーもちゃんと俺に注意してくれた。

 俺はまだ家族の前ですら言葉を喋っていないのに話し掛けて来る辺り、お姉ちゃんだな。


「じゃあ行くぞ……。おっと忘れ物だ」


 そう言いながらファーンは腰に剣を差している。

 まず現代ではないだろうと予想はしていたものの、剣って……。しかも微妙に使い込まれているようだし。

 あー、こりゃ完全に現代説は否定されたな。タイムスリップ確定か?


「お兄ちゃん、剣を持ち出してもいいの?」

「ああ、いつでも戦えるようにしてなきゃならんって、父様も言っていたろ」


 ファーンはそう言いながら剣帯を調節しているようだ。使えるのかよ。


「それに、俺だって剣の修行をしてるんだし、武装は貴族として当たり前のことだからな」


 え? 修行してるのかよ。知らなかった。

 それに七歳にして貴族の心構えを語るなんて、凄いな。

 ファーンの事をちょっと見直した。ただの生意気そうな小僧だと思ってたよ。


「修行って……。始めてからまだ一月くらいじゃないの。重くないの?」


 見直して損した。一ヶ月かよ……やっぱ小僧だわ。


「いけるだろ。っとほら、大丈夫だ」


 ふらつく事も無く、しっかりとした足取りで立ち上がり、部屋の中を歩くファーン。

 おお、確かにこの様子なら問題無いだろう。


「お兄ちゃん、そうやって荷物背負って剣も腰にあると冒険者みたいよね。格好良い」


 よく解らんが、ミルーがそう言って少し憧れるような目つきでファーンを見ていた。

 それを籠の中で聞きながら、冒険者って一体何だよ? 未開の地の探検でもするのかよ? と思っていた。


「おう、父様と母様もこんな感じで荷物や食料を背負ってあちこち行ってたらしいぞ」


 はぁ? ヘガードとシャルはどっか探検してたのか? やべー、ちょっと格好良い。


「アルの顔が丸々見えちゃってるわ。見つからないかな?」


 ミルーはちょっと心配そうな顔だ。


「うーん……よし、鎌と布かむしろを持って来い」


 ああ、覆われそうだなぁ。

 やっぱり予想の通り筵で蓋をされた。籠と筵の隙間には鎌を差している。


「アル、鎌の柄を掴んでろよ。じゃあ、行くぞ」


 俺を背負うとファーンは立ち上がった。

 あら、ファーンまで俺に話し掛けて来た。

 しかし、これじゃあ暫く外の景色はお預けか。


 頭が籠の外に出ないようにしゃがみ込むと鎌の柄を掴む。

 その上から筵で蓋をされている。家の外に出たようだ。


 歩き始めて数分すると「もう筵を取ってやれ」とファーンが言ってくれたので、ミルーが筵を取ってくれた。


 籠の中で立ち上がり、縁をしっかりと掴むと周囲を見回した。


 おお、予想通り糞ド田舎の光景だわ。

 思わずきゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐ声が口から漏れ出てしまうのを抑えられなかった。

 二〇〇mほど先に見える建物は我が家だろう(兄に背負われているので進行方向とは逆が視界になる)。

 母屋とその他に小さな建物が三つあり、纏めて一つの木の柵で囲まれている。

 二月という季節柄ちょっと肌寒いが、空は抜けるように青く綺麗だ。


 家からはまっすぐに踏み固められた道が延びており、その両側は何かの畑だろうか? 今は何も植物は生えていないが、畝だけは幾筋も綺麗に並んでおり、きちんと耕されているのが判る。


 きょろきょろしながら暫く経つと、後ろに向かっているためか、結構揺れるからか、ちょっと気持ち悪くなってきた。

 籠の中でどうにか進行方向に向き直るとファーンのその肩に手を掛ける。

 川を渡り、少し進むと左手に家が見えて来た。家の戸は開いている。その家の脇で子供が四人たむろしていた。

 全員ファーンより年下に見える。ミルーと同年代かちょっと下と言った所だろうか。


「おいディック、紹介してやる。アレインだ。可愛いだろ」


 今初めて知った新事実。俺の本当の名前はアレインと言うのか。

 愛称がアルなんだな。だとするとファーンやミルーにも愛称ではなくちゃんとした名前があると思った方が良いだろう。

 ファーンが声をかけ、籠を降ろすと中でも年上の子が駆け寄ってきた。


「えぇ ファーン様、連れてきてくれたの?」


 にこにこしながら駆け寄ってくるディックらしき男の子を良く見て、思わず声を上げて腰を抜かしそうになった。

 俺が目を真ん丸くしてその子を見つめ始めると、他の三人の子供もディックに遅れて駆け寄ってきた。

 何が腰を抜かしそうって、駆け寄ってきた子供たちの髪の色だ。薄い黄緑、水色、ピンク、紺色。

 全員とても綺麗に染められていた。色が色なので遠目では帽子でも被っているのかと思っていた。

 うちの家族は誰も髪を染めてはいないし、この時代(認めたくはないが、タイムスリップしているのなら)は多分五〜一二世紀だろうから、染髪の技術も無いだろうと思っていた。

 実際には見た通り染髪は普通の行いの様だし、コストもそんなに掛からないのだろう。この貧乏そうな村の働き手にもなれないような幼児にも染めさせているくらいだから。


「まだ赤ちゃんだ! かわいいなぁ……って、この子、黒い髪だ! ねぇファーン様、染めてるの?」


 ああ、やっぱり染髪は一般的なんだな。

 俺は抜け毛などで自分の髪が黒いことを知っていたので髪の色の指摘には驚かないが、世間では赤ん坊の髪染めまで一般的に行われているのかよ。


「アルの黒髪は生まれつきよ。アルは目も黒いのよ」


 何故か自慢気にミルーが言う。

 あら、目も黒かったのか。折角なので俺も緑とか青の瞳になってみたかったんだがなぁ。


「本当だ、目も黒いや」

「めずらしー」


 口々に俺の髪と目の色で盛り上がる幼児たち。


「まだ小さいから上手じゃないけどもう歩くことも出来るのよ」


 弟が誇らしいのかまたミルーが自慢気に言った。


「まぁ、今は見ての通り赤ん坊だから外には出せないが、今日だけは特別にお前たちに弟を見せてやったんだ。暫くしてこいつが遊びに出るようになったら宜しくな。じゃあ、俺たちは行くから」


 ファーンはそう言うとまた俺の入った籠を担ぎ上げた。

 少し進んで右手に折れる。その間に何軒も家を通り過ぎた。何人かとすれ違うがファーンとミルーは適当に挨拶をしたり簡単に俺を紹介したりした。

 やはり何人かは髪を染めているようだった。

 大体二〇分程休み無く歩いた先にぽつんと一軒、他の家々と離れて寂しそうに建っている家が見えてきた。その先は暫く行くと森になっているようだ。


 ファーンはその家の前まで歩くと断りもせずに扉を開けて「ケリー、いるかぁ?」と呼びかけた。


 おいおい、勝手に他人の家の戸を開けていいのかよ?


 すぐに返事があり子供が近づいてくる。また吃驚びっくりして声を上げそうになる。

 なんと、その子にはピンと立った犬のような耳がついていたのだ。頭の上に!


「ファーン様、何か御用でしょうか?」


 ケリーが尋ねるとファーンは先程の様に俺を紹介する。

 同じように髪の色の件でのやり取りの後、ファーンは「ケリー、まだ日が高いし、ちょっと剣の稽古でもしないか?」と誘った。


 おお、剣の修行するのか、それは是非見てみたいな。


「はい、ファーン様。うちの稽古場まではちょっと歩きますが大丈夫ですか?」

「すぐそこだろ? いいよ」


 どうやら俺が入ったままの籠を担いで向かうらしい。稽古が見られるようだ。面白そうだし、こりゃいいや。

 家の前の道を更に数分歩くと半径一〇m程のちょっとした広場状に草が刈ってある場所に着いた。

 どうやら稽古場はここらしいな。稽古場の端に俺を降ろすとファーンは早速剣を抜く。


 え? 真剣でやるのかよ? と思ったが、どうやら素振りだけらしい。

 ケリーは木刀だ。


 って、ええっ!?

 尻尾生えてるよ……。

 尻尾まであるのか。

 耳は頭から生えてるから解る。尻尾もまぁ解る。

 いや、本当は解らんけど、無理やりそういう事にして自分を納得させているだけだよ。

 しかし、耳と尻尾以外の体には毛が生えているのだろうか?

 聞いてみたかったが、これから幾らでもそんな機会はあるだろうと思い直し、我慢して聞かなかった。


「ケリーは狼人族ウルフワーだけあって体のバランスがいいな」


 うるふわー? なんだそれ?


「そうですか、ファーン様、ありがとうございます」


 ケリーとやらも疑問ではないらしい。


「まあ、ケリーはうるふわーだからね」


 ミルーは絶対解ってないだろうな。

 しかし、ファーンもミルーもウルフワーの事なんか今まで一言だって言ったことは無かったと思う。

 と言うか、ウルフワーって、人間じゃないんだよな?

 見た目は人間と変わらない。ちょっと離れたら注意して見ないと耳は判りにくいし、尻尾は隠せば認識不能だろう。

 下着やパンツに詰め込むときつい、とか尻尾は自由に外に出ていないと不快、とかなのだろうか?

 そんな事を考えながらファーンとケリーの素振り修行を眺めていたが同じ動作を延々と繰り返しているだけなので、いささか飽きてきた。

 ミルーはなにやら植物の茎で編み物をしている、冠か何かのつもりなのだろう。

 それを俺に被せて笑い掛けてくれた。


 頭のどこかでアホくさいと思いながらも不思議と「嬉しい」という感情が溢れ出す。

 多分俺は今、凄く良い笑顔で笑っていると思う。


「ほら、綺麗な石もあげるわ」


 ミルーが縞模様の入った石を掴ませてくれた。

 当然値打ちものでも何でもない、ごくありふれたものだが、ここでもまた嬉しくなり、きゃっきゃと歓声も出る。

 その時だ。

 素振りをしている稽古場という名の空き地に何かが飛び込んできた。何だと思ったら人影だった。

 ファーンと同じくらいの背丈で……って人じゃない!?


 薄汚い、濃い緑色の皮膚で腰にぼろきれのようなものを巻いている。頭は禿頭、目つきは鋭い。

 耳は少し尖っていて下顎からは牙が生えており唇の両脇からその先が上に少し出ている。

 体つきは人間そっくりだが背丈が低い割には大人っぽい。手には一m程度の槍状の長い棒を持っている。

 杖ではなく普通に槍だろう。先に錆の浮いた穂先が付いていた。


「ゴ、ゴブリンだっ!」


 尻尾を股の間に挟んでケリーが叫ぶ。

 は? 何だって?

 ゴブリン? 嘘だろぉぉぉぉぉ!?


 しかし、ファンタジー映画などで目にする「ゴブリン」と言われたら、なるほどゴブリンだ。

 もうゴブリンにしか見えない。と同時に俺は大混乱だ。


 地球ですらないのか? ここは。


「ケリー、下がれっ! ミルー、鎌でアルを守れっ! こいつはオレが!」


 え? ファーンよ、まさかゴブリンと戦うのか?

 お前、七歳だろ?

 幾ら小さいとは言っても、相手は怪物だぞ?

 そりゃ無理だろう。そもそも素振りしかしたことないんだろ?


「分かった、お兄ちゃん。ケリー、誰か呼んで来て!!」


 は? ミルーよ、お前まで何言ってんだ?

 ここは逃げの一手だろ。常識で考えて。


 子供だけで怪物に対抗とか本当に意味不明なんだが。

 前世も含めて生まれて初めて見るゴブリンに興味津々の目つきで観察を続けながら、あまりの展開についていけず興奮と混乱で意味不明の叫び声を上げる俺。

 いや、普通の人間はこうだろ。


 あまりに混乱し、感情が高ぶり過ぎて逆に冷静になったのか、多少は思考能力も戻ったらしい。

 そうだ、落ち着け俺。赤ん坊の体に流されるな。多大な努力を払い、なんとか俺は冷静な目でゴブリンの観察を続ける事が出来た。

 体格は七歳児のファーンと同レベルなので高さはおよそ一m二〇〜三〇㎝と言ったところだろう。

 腕や足の太さもファーンとそうは違わないように見えるが、腹は多少太り気味な感じがする。


 ミルーは籠に差してあった鎌を抜き取り俺の前に立って構えた。

 そんな物でゴブリンに対抗しようとする位なら石でも投げつけろよ。

 あ、俺が伝えればいいのか。


「うあああっ!」


 叫びながらゴブリン目掛けてさっきミルーに貰ったばかりの石を投げつける。


「え? そうね、分かった。お兄ちゃん、私が石を投げつける。その隙にお願い!」


 そう言うとミルーは足元にしゃがみ込んだ。石を拾っているのだろう。

 ゴブリンは槍を構えるとファーンに突進した。

 ファーンは剣で槍を跳ね上げると返す刀でゴブリンに斬りつける。

 おお、ファーン格好良いな!


「りゃ!」


 ゴイン!

 返す刀で斬りつけたが、ゴブリンは跳ね上げられた槍を縦に持ち替えてファーンの剣を防いだ。

 ファーンにはまだ剣は重いのだろう、剣に振り回されているきらいがある。


 ありゃ、やっぱりまずくないか? これ。


 そもそも七歳児の体に槍が刺さったら一発ジ・エンドな臭いがする。


 ゴブリンは槍を構え直すとファーンに突き出した。

 またファーンは剣で跳ね上げる。

 ファーンは良くやっているが、時間の問題じゃねーか。

 やばい、何とかしないと俺までやられちまう。

 かと言って空き地に飛び込んで来た勢いや最初の突進のスピードを考えると、俺がよたよた逃げたところですぐに追いつかれるのがオチだろう。

 ミルーの投石をうまく使わないと厳しいな。


「やぁっ!」


 ファーンが今度は横薙ぎに剣を振るった。

 ゴブリンは体を引いてやり過ごし、空振りさせてから槍を突こうとする。

 と、ファーンは空振った勢いを利用して回転しつつ再度同じように斬りかかった。


 うわ、まずい。歳の割には俊敏な動作と言えるが、ゴブリンが槍を突き出す方が速そうだ。


「えい!」


 そこにミルーが狙い澄ましたように拾い上げた石を投げつける。

 大した勢いではないが、うまくゴブリンの左肩に命中した。一瞬動作が遅れたゴブリンにファーンの剣が当たったが、右の腿をちょっと傷つけただけのようだ。


「ギャッ!」


 ゴブリンが痛みで声を上げ、醜い顔を更に歪ませる。

 ファーンが崩れた体勢を立て直そうとしている間、ミルーは左手にも掴んでいた石をもう一度ゴブリン目掛けて投げつけた。

 今度はゴブリンに躱されたがその間にファーンは体勢を整える事が出来たようだ。逆に石を躱すことで体勢の崩れたゴブリンに剣を叩き込むことに成功した。


「おりゃ!」


 ザシュッ!


 ゴブリンの左足に剣が当たる。五㎝くらいの深さでゴブリンの左足に斬りつける事に成功した!


「ギョォォ!」


ゴブリンの左足をある程度深く傷つけることが出来たため、多少動きが鈍ったようだ。スゲー!


ファーン、スゲーよ! 流石兄貴!


「おらぁっ!」


 動きの鈍ったゴブリンにここぞとばかりに剣を振りかざすファーン。

 ミルーはまたしゃがみ込んで石を拾っている。


「ギィィィィ!」


  そのまま斬られてくれればいいのに、ゴブリンは咄嗟に槍を突き出した。


「うわぁっ」


 ああっ、ファーンの右足に槍が刺さったようだ!

 ゴブリンは左足が傷ついているためか、腰の入った突きではなく、手だけで突いた感じなので足のど真ん中にでも当たらない限り急に命がどうこうではないとは思うが、槍が刺さったなら重傷を負ってしまったに違いない。


「お兄ちゃんっ!」


 泣きそうな声でミルーが叫ぶ。


「大丈夫、だっ!」


 ファーンはそう気合を入れると右足を刺されながらも再度剣を振り下ろした。


 ドッ!


 ゴブリンの右肩口に深く剣を斬り込むことが出来た!


「ギャァァァ!」


 たまらず槍から手を離してしまい、取り落とすゴブリン。

 右肩口から一五㎝は剣が切り裂いている。もう右手は使えないだろう。

 しかし、ファーンの右足にも槍が刺さっている。


「ミルー、がんがん石投げろっ!」


 ファーンは足に槍が刺さったまま、今度は剣を突き出した。


「ギョェェ!」


 ゴブリンは動かせる左手を盾のように体の前に突き出してファーンの突きを防御する。

 左手に邪魔をされ、胴体に突きを命中させる事は出来なかったが、ファーンの剣はゴブリンの左掌を貫通した。

 ぃよっし! これでゴブリンは槍を掴むことが出来なくなった!


 ファーンは突き刺さった剣を掌の指側へ力任せに斬り上げる。

 ゴブリンの掌を裂いて再び自由になった剣で今度はゴブリンの足を狙って斬りつける。


「ギィィィィ!」


 上手くゴブリンの左足に斬りつけられたようだ。

 左足の半ばまで剣が食い込んでいるのが見える。これならいける!


「やぁっ!」


 ミルーが石を投げるが当たらない。今こそ鎌だろ。


「あああああ!」


 咄嗟に叫んで鎌を持ち上げるが、お、重い。

 一歳だとこんなに筋力が無いのか。


「分かったわ!」


 ミルーが俺から鎌をひったくるとゴブリンまで駆け出した。


「やぁっ!」


 気合いを込めて後ろからミルーが草刈鎌をゴブリンの首筋に叩き込む。

 ズシャッと音を立てて鎌がゴブリンの首に当たったが、五歳児の上、扱い慣れていない道具での攻撃の為か、刃が食い込んでいない。殆ど柄で叩いているようなものだ。

 しかし、満身創痍のゴブリンの体勢を崩すには充分だったようで、ファーンは刺さったままの剣を引き抜くことが出来たようだ。


「らあぁ!」


ファーンが剣をゴブリンの胴目掛けて突き込んだ。


「グブッ」


 剣が胴を突き刺すと目に見えてゴブリンの動きが鈍くなり、くずおれるように倒れた。

 やった! ゴブリンを倒せた!

 七歳児と五歳児でゴブリンを倒せた!!


「ミルー! 止めを刺せっ!」


 ファーンが叫ぶと、ミルーは倒れ込んだゴブリンの頭を草刈鎌で滅茶苦茶に叩き始めた。

 鎌を振り下ろす度にくぐもったような呻き声がする。

 その間にファーンは倒れたゴブリンの胴から剣を引き抜くともう一度上から突き下ろした。


 ゴブリンは一度だけビクンと大きく震えると、それきり動かなくなった。

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