それは、ある夏の日の出来事……

あついわ、ジョン……」


 ろくさいとしうえともだち――ジョンのうまりながら、わたしはそうつぶやいた。


「そうおもうなら、かいすいよくなんてしなきゃだろ。リズはぶんみずせるんだし」


 わたしあたまけたままジョンはそうう。


 ――たしかにそうなんだけど……


「いいじゃない。カードうらないでうみに、てきいがるってたんだから」

ようで……」

なによ、しんじてないわね」

「プライベートビーチにてきひとたら、そのひとしんにゅうしゃ


 せいろんわれてしまい、わたしはどうにかはんろんないかあたまひねる。

 しかし、はんろんない。


「ねぇジョン、このうまかぜってはしれないの?」

てそうにくてげたな。……このうまはまだ、それともりなかきみせてはしれるほど、オレまだじょう上手うまくないんだ」


 ジョンのせつめいきながら、わたしみどりにおいのなかしおにおいをかすかにかんじた。


「そうなんだ…… ねぇジョン、しおかおりがしてたわ」

はないな、いぬみたいだ」

「レディにかってしつれいじゃない」


 わたしおこってそうはんろんすると、ジョンはやさしいこえう。


「おまえはレディじゃないからな」

「ひっどぉい」

「フフ。ほらいたぞ」


 ジョンのそのことどうに、わたししきまえはまく。


れい……」

「ではレディ、を」


 そううジョンをして、わたしうまからりた。


 ――いた


 わたしすこあしいたみをかんじていると……


「レディじゃなかったのかリズ?」


 あきれたかおでジョンがそうっていた。


いぬにエスコートはようよ」


 まんめんみでわたしがそうかえすと、ジョンはがおもんう。


「このねっかえり」

すこしぐらいおてんほうが、おんなわいいのよ」

「はいはい。それじゃぁリズ、おれかげにロシナンテつないでるから」

「この、ロシナンテってうんだ? ってらっしゃいジョン」


 わたしはそうってジョンをおくると、うみちかきそのままあしうみれる。


 ――つめたい。


 ほうちからがあれば、ふくれてもみずだけべつところどうる。

 あせかいたしこのままおよぎたいんだけど、流石さすがにジョンにはしたないってわれるかしら?


 わたしはジョンのるであろうほうき、ジョンをつけてりながらおおごえく。


「ジョン、ふくのままおよいでい? れたふくほうでどうにかするから!」


 しかしジョンからのへんがない。


 ――ジョン?

 ――なにったのかしら……


 わたしうみからてジョンのとなりにかう。

 そしてジョンにく。


「どうしたのジョン?」

「リズ、これをてくれ」


 ジョンがそうったのは、かげすてられたおとこようふく


おとこふく?」


 すこおもっているわたしに、ジョンはかおく。


「エリザベートさましんせきかたとしちかかたは」

おとこは、わたしかぎないわね。うちけっかいはいっててるってことは、しんせきか、かあさまじょうりょくるってことだけど……」


 きほんぞくは、とくべつしょにはけっかいってまもってる。

 このしょほんとうは、しおせいせいするためしょだし。

 だからどもかっはいってれるはずい。

 かあさまけっかいやぶれるにんげんなんて、大人おとなでもそうそうないはずだし。


あんぜんためいちもどりましょう。アンジェリカさまほうこくを」


 ジョンのていあんわたしくびよこってかえす。


「それはよジョン。このふくぬしさがほうさき


 ――すくなくとも、あいつうじゃない。

 ――それにふくだけのこしているのはぜんすぎる。


 わたしがおでジョンにう。


まもってくれるわよね?」


 するとジョンはいきいてから、がおでボウ・アンド・スクレープをおこなへんをする。


「イエス、ユア、マジェスティ」

「それじゃまず、何所どこから調しらべましょうか?」

「エリザベートさま、そのまえすこよろしいですか?」

なに?」

ふくなかあかいケープがりますが。コレ、ですよね」

わたしりょくかんにがなのよね。ケープのしつさそうだし、ふくぬしぞくかしら?」

「それならけっかいけてまでないでしょう、いくらどもでももんだいりますよ。なにべつもんだいるのかもれませんが……」


 ジョンのことおもい、わたしかえす。


「どうことかしら?」


 するとジョンはすこかんがえてからせつめいはじめる。


ふくとケープにひんすぎるんです。ふくけてるようものなのに、ケープはぞくものみたいですし」

「つまりふくぬしは、むかし貴方あなたみたいなってこと?」

「もしくは、ぞくどもぶんかくしてかくれているか……」

ぜんしゃだと、貴方あなたれんらくはずよね?」

すべてではりませんが」

「つまりこうしゃかくりつたかいってことか」

ならさかなれますし、ちかくにかわもりります。ほう使つかえれば、どもでもなつればせいかつるでしょうし」

「もしかして、わたしたちいてかくれてる?」

じょうきょうからしてはだかでしょうから、エリザベートさままえにはれないでしょうね」


 ――そうことなら……


 そんなことかんがえているわたしに、ジョンはあきれたかおう。


「エリザベートさまかおわるかおしてますよ」

「あら、そうかしら?」


 わたしうみほうくと、ひとかくれられそう

しょさがす。


 ――あいはだかなら、まだうみなかはず

 ――それなら、かくれているしょがんしょうかげか……


「ジョン、さかなるわよ。あみをおねがい」

「イエス、ユア、マジェスティ」


 ジョンのへんともに、わたしりょううみじゅもんとなえる。


「シィピアズ!」


 するとすいめんからふくすうみずばしらがりはじめる。


  ズバーン

  ズバーン

  ズバーン


 そのみずおとなかから、どもめいわたしみみこえる。


「うぎゃぁぁぁぁ!」


 ――たり!


 そしてみずばしらおさまるとおとこひとそらからちてた。


「エリズン」


 そしてジョンのかぜじゅもんでそのつかまえ、わたしたちまえどうさせた。

 みじかめのサラサラプラチナブロンド。

 おおきなルビーいろひとみ

 としふたしたかしら……


 ――わいい。


ないでずかしい…… げないからせめてふくを……」


 まえおとこあわてふためいてると、ジョンはほうおとこかいほうした。


「ジョン。なにかっほういてんのよ」


 おこわたしに、ジョンはかおう。


「そのはなしはいてやれリズ。おまえぶんわいかくるんだろ」

「だからなによ!」


 わたしがそうもんうと、ジョンはりょうわたし左右さゆうのほっぺをかるつねってた。


 ――いた

 ――いたたたた!


ふぁふぃふるふぉよなにするのよふょんジョン……」


 そうわたしして、ジョンはおとこかってう。


「おいガキ、いまうちにブレイズだけでも穿け」

「?…… ありがとう!」


 おれいったおとこわたしからかくように、ジョンはほっぺをはなすとわたしきしめた。


 ――!


「ちょっとジョン!」

「リズ、としごろじょせいおとこはだかからそむけるものだ。おとこほうこまっているならとくに」


 ジョンのことわたしぶんしっぱいかいした。

 そしてえないおとこに、ずかしさをこらえてあやまる。


「あの…… まえらないおとこ、ゴメンなさい」

にしないで、わるいのボクみたいだし。ふくぜんるまですこってて」


 そのことからしばらくして……


「おたせ、もういよ」


 おとここえわたしはジョンからかいほうされ、それとどうにジョンはわたしおとこあいだから退いた。


「ボクのまえはリックス。ごめんなさい、ゆうはんざいりょうさかなしくてつい……」

べつにそれはかまわないわ。それよりリックス、貴方あなたよくはいれたわね。うちけっかいってはずなんだけど?」

「それはボクにもからない……」


 そうってしたくリックスにジョンがく。


わるいリックス、きみのファミリーネームをおしえてくれ? そのケープをかぎぞくだろきみ


 しかしリックスからのへんい。

 いやしばらいて、かおげてはなはじめた。


じつはボク、りょうしんらないんだ。おにいちゃんはるみたいなんだけど」


 ――どうことかしら?


貴方あなた兄弟きょうだいるのはってるのにりょうしんことらないの?」

「ボクおやからすてられたみたいで…… まえなか大人おとなひとがそんなことはなしてたんだ」


 ――つまりこのぞくかくなにかか……

 ――でもそれは……


「ねぇリックス。それおかしくない?」

たしかにリズのとおりだ。すてにそんなケープをつうあたえない」


 ジョンがわたしつづけてそううと、リックスがこたえる。


いまことはホント?」


 すこうれしそうなリックスにジョンはがおう。


「あぁ、すてどもにそんなケープをつうあたえない」


 するとリックスはうれしそうになみだながす。


かった、そうってれるひとがいて」


 ――なんだろう、こころいたい……

 ――このまもりたい。


「リックス、わたしいっしょにいらっしゃい。わたしたち貴方あなたぞくけてあげる」


 わたしことに、ジョンもリックスもおどろいている。


「リズ?」


 おどろいてそういてたジョンに、わたししんけんかおせつめいはじめた。


「リックスがぞくなのはちがいない、うちけっかいこうされたのよ。そんなほうっとくわけにはかないでしょ」

たしかにそうだが…… おまえ、リックスがったのか?」

「そんなんじゃないわよ」


 わたしすこつよ調ちょうでそうかえすと、ジョンはクスクスわらってリックスにく。


わるいが、うちのひめさまってくれるかリックス?」

「でもめいわくじゃ……」


 そうかえすリックスはわたしからてもあんそうなちがかる。

 だからわたしちからづよう。

 リックスのために!


「リックス! ぞくいたいなら、げんに『ありがとう』といなさい。わたし、うじうじしたおとこきらいなの」


 するとリックスはすこなやんでから、がおわたしう。


「ありがとう。ボクはぞくってみたい、だからぞくさがしをつだってエリザベートさま!」


 そのがおわいくてわたしがリックスをめていると、ジョンががおわたしをからかう。


「ほら、かおあかいぞ!」

「そんなんじゃないわよ!」


 そんなわたしたちをクスクスわらいながら、リックスはわたしたちいてる。


しょうかいしてもいですか、エリザベートさま?」

「リズでいわ、ともだちったんだし」

ほんとうに!」


 そうったリックスはとてもうれしそうで、わたしうれしいちにる。

 そしてリックスといっしょあそびたいとこころからおもった。

 これがうらないのうんめいいなのかしら?


「……ねぇリックス? すこいっしょうみあそばない、わたしほうればふくれてももんだいいし」

「それは……」


 リックスがもうわけなさそうにへんをしたので、わたしこころたりをこたえてみる。


「ごめんなさい。ってぐのおんなみずあそびは、おとこにはずかしかったわね……」

ちがうんだリズ。ボクはゆうしょくじゅんためてて」

「そうえばそんなことってたわね…… それじゃわたしいっしょさかなりしましょう、それならいかしら?」


 わたしすこずかしさをこらえそうていあんした。

 すると、ジョンがことつづける。


「リックス、リズはとしちかどもあそかいすくない。いっしょあそんでくれるか?」

「ちょっとジョン、ずかしいフォローしないでよ!」


 おこわたしをジョンはクスクスわらっている。


 ――なによ、わる……


かった、でもほんとうにそのふくさかなりするき?」


 リックスのこえわたしかれほうく。

 そしてがおのリックスのしつもんこたえる。


ったでしょ、れてもほうでどうにでもるって。それに、シミーズとドロワーズでおとこあそんでるほうずかしいし」

かった。それじゃいっしょさかなろう、かたってる?」


 そうってリックスはわたしやさしくみぎしのべ、わたしはそのひだりつかんでいっしょうみした。



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