【最高知】 〜蒼と碧と青〜

空川陽樹

〈序章〉

「あっつ」

9月某日、明朝。炎のような朝焼けが高知の空を包んでいく。全身から吹き出る汗に嫌悪感を覚えつつもただただ無心で、僕らはママチャリを押しながら小さな山を登っている。後悔の念と共に朝が到来した。


なぜこんな事態に陥っているのか。事の発端は7月中旬に遡る。

と言っても、動機は単純である。ただ単に就活とテスト勉強の板挟みで集中の糸が短絡(ショート)した際に、インスタで高知のオススメ観光地の投稿が流れてきただけである。その後、気づいた時には5時間が経過し、往復の航空券を予約した履歴だけが残っていた。これは、テストの前々日のことであった。

そして何を思ったのか、その旅程の中には『ママチャリをレンタルして四国カルストを登る』という意味不明な項目が挙げられていた。いや、単なる1項目というよりむしろ、それがメインであった。そして付随するように、仁淀川でSUPや柏島でシュノーケリングなどの本来の観光として適した項目が並んでいた。

ちなみに上述のバカげたプランは、距離にして片道83km、獲得標高は1800m超えという驚異的な数字だった。しかし当時の僕には、なぜか完遂できるという謎の自信が漲っていた。

また、当初は周りの友人は就活などで忙しい上、あまりにもキモい旅程なので一人旅の予定だった。しかしダメ元で中学から現在まで親交が続いている友人にいかにワクワクする旅かをプレゼンしたところ、友人2人がまんまと罠にハマっt…、いや、目を輝かせて賛同の意を表してくれた。

そんなこんなで、僕らの高知旅行が幕を開けるのだった。


〜続〜

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